WEBライターを経たのち、現在は富山県滑川市の地域おこし協力隊として活動する田中啓悟さん。今回は、毎年夏に行われる光の祭典「なめりかわランタンまつり」をレポートします。
宿場町のまち並みとベトナムの文化が融合したランタンまつり
8月10日、11日の2日間にわたり、2024年も「なめりかわランタンまつり」が開催されました。会場となるのは、かつて宿場町として栄えていた滑川市の瀬羽町(せわまち)。現在は多くの人が昔のまち並みを好み、飲食店や雑貨店を出店するなどして人気のあるエリアです。
ベトナムの文化と、瀬羽町が栄えていた頃から残る古いまち並みが混じり合うこの祭りの起源は2010年。当時、瀬羽町のまち並みがランタン祭りで有名なベトナムの港町、ホイアンに似ていることがきっかけで始まりました。世界遺産として多くの観光客が訪れるホイアンをお手本に工夫を重ね、今や日本だけでなくベトナムの人も多く訪れるほどのにぎわいを見せています。
2023年は、国登録有形文化財で映画のロケにも使用されたことがある旧宮崎酒造周辺で、500個もの色鮮やかなベトナムランタンを目にすることができましたが、2024年はさらに増えたようです。
会場には色合いやテーマが違うさまざまなランタンが並びます。形が多様である点も、ベトナムランタンがインテリアや照明としておしゃれに使われる理由のひとつです。
幻想的な明かりに包まれながら、ベトナムの民族衣装「アオザイ」の試着や民族コンサート、ベトナム料理を楽しむことができます。
ベトナムのスポーツ「ダーカウ」やアオザイショーも登場
ランタンのひとつひとつには、製作者の想いが詰まった意匠が凝らされています。元来、家の前などに飾って、邪気を払う風習として根づいたベトナムのランタン文化ですが、結果的に多くのランタンでまちが彩られ、光の河のような美しさを表現するようになりました。本場ホイアンにも、ランタンをひと目見ようと多くの観光客が訪れているそうです。私もいずれは行ってみたいですね。
なめりかわランタンまつり開催に伴い、本場ホーチミンから「ベトナム住みます芸人」として活躍するお笑いコンビ、ダブルウィッシュの中川新介さん(吉本興業)が駆けつけてくれました。普段は日本食やJPOPなどを紹介するベトナムのテレビ番組にレギュラー出演するなど、ご本人いわく日本にいるのは非常に珍しいとのこと。皆ここぞとばかりにカメラのシャッターを切っていました。
当日はイベントの司会進行で祭りを盛り上げたり、開催を祝した点灯式で音頭を取ってくれました。現地のファンも駆けつけてくれたようで、大いににぎわっていました。
会場ではベトナムの国民的スポーツ「ダーカウ」の羽根を使ったダーカウ蹴り選手権も開催。現地ではバドミントンのシャトルのような小さな羽根を蹴り上げ、ラリーを続けて遊ばれているそう。この日は羽根を蹴ってどこまで飛ばせるかを競いました。
今年の優勝者は18mほど蹴り飛ばしてかなりの盛り上がりを見せていましたが、年によっては25mを超えるような大きな一発が生まれることもあるそうです。
羽根を蹴り上げると同時に靴が空を舞うこともあり、出場する際はスニーカーなど、ひもを締めることができる靴がおすすめです。サンダルで参加しようとした方は脱いで裸足で蹴っており、かなり痛そうでした。
ダーカウ蹴りのあとは「アオザイファッションショー」が行われました。参加者は個性豊かなアオザイを身にまとい、ベトナム全土で用いられている伝統的な円錐形の帽子「ノンラー」を被って登場。とても華やかなショーになりました。
今年は男性の参加者がベトナム住みます芸人の中川さんひとりだったのですが、来年は皆さん奮って参加いただきたいです。そういう私も来年は、もしかしたら出演者側に回っている…かもしれません。
瀬羽町を彩るランタンは、200mの通りを等間隔に照らしています。訪れた人の多くがこうしたランタンの前で写真を撮り、祭りの様子をSNSで上げてくれることによって、年々参加者も増加。国際交流の場としてもにぎわいを見せる行事のひとつです。
年を追うごとにランタンの数も来場者も増え続け、この勢いをさらに加速させていきたい。そんな実行委員会の思いとともに15年の間歩んできた「なめりかわランタンまつり」。ぜひ現地で楽しんでみてはいかがでしょうか。私もいつかホイアンに行って、「滑川から来ました!」と言ってみたいです。現地の人も意外と知ってくれているかもしれませんね。
<取材・文・撮影/田中啓悟>
【田中啓悟さん】
大阪府大阪市出身。大阪の専門学校を卒業後、WEBライターとしてデジタルゲーム関連の記事を執筆。その後、「訪れたことがない」という理由で富山県に移住し、地域おこし協力隊として、空き家バンクの運用・空き家の利活用をメインに、地域の魅力発信やイベントの企画に携わっている。