尾道水道を一望する空き家を発見!役立ったのは地元の口コミ情報

[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 第2回目]

普段は航海士として、1年の半分ほどを船に乗って日本中を回り、休暇中はWeb系のフリーランスとして働くナオ船長さん。育ちは埼玉ですが、移住したい場所を求めて辿りついたのは尾道でした。空き家を再生させて、新たな生活をスタートさせようとしているナオ船長さんの毎日をお届けします。

空き家探しの旅を始める

尾道
尾道の景色

「尾道に住む!」と決めてから、まず始めたのはやはり家探し。以前から尾道に何度も足を運んでいた僕は「尾道の風情ある景観を大切にしたい!」との思いから、空き家を再生して住むことを決めていました。

 空き家を探す間は、ゲストハウスやシェアハウスを拠点にしていました。初めての空き家探しはわからないことばかり。賃貸であれば不動産にいけばいいのですが、斜面地にある空き家は不動産でも扱われておらず、情報を得ることが難しいのです。

「空き家はどうやって探せばいいんだろう?」と悩んでいると、滞在していたゲストハウスのオーナーさんが「NPO法人の尾道空き家再生プロジェクト」をオススメしてくれました。

 空き家再生プロジェクトは、空き家を再生し新たな活用を模索したり、空き家の所有者と移住希望者とのマッチング、移住者のサポートなどを行っています。移住希望者は登録を行うことで「空き家バンク」という非公開の空き家データにアクセスでき、自身の条件に合う空き家を探すことができます。

 僕の希望する条件はたくさんありましたが、そのなかでも一番のこだわりは「家から尾道水道が見渡せる家」。尾道水道とは、尾道の中心市街地がある本州と向島を隔てる瀬戸内海の水道のこと。航海士として、自分が乗っていた船が尾道水道を航海している姿を眺めるのが夢だったからです。

尾道水道
尾道水道

 その後、早速空き家バンクで物件を調べ、気になる空き家があれば片っ端から足を運ぶという、空き家探しの旅が始まりました。

移住者のアドバイスを聞いて、再び空き家探し 

 空き家を探し始めて2週間。迷路のような尾道の斜面地を毎日歩いたことにより、だんだんと土地勘をつかんでいきました。もともと散歩が趣味の僕にとって、空き家探しで坂道を歩くことはまったく苦ではありませんでした。

階段
階段を上り続ける日々

「こんなところにカフェがあったんだ!」というような発見もあり、むしろ楽しみながら探すことができました。これも、歩くだけで楽しいという尾道の魅力だと思います。

 空き家バンクに記載されていた気になる物件は全て見て回りましたが、やはりお気に入りの物件はそれほど簡単には見つかりません。立地や空き家の状態など、自分の希望する条件になかなか合わないため、いくつか妥協しなければならないと思い始めました。

 そんななか、たまたま休憩がてらに入ったカフェの店主に空き家を探していることを伝えると「そういえば知り合いが空き家を持っていて、借りてくれる人をちょうど探していたよ」との情報を得ることができました。

 ほかにも「あそこでお店をやっている人も1年前に移住してきた人だから話を聞いてみるといいよ」といったアドバイスもいただきました。

 空き家バンクに載っていない情報、つまり現地の人の口コミが空き家を探す重要な手がかりになると気づいた僕は、ここでインターネットではなく現地への聞き込みへと舵を切ることにしました。

 それからは聞き込みの日々。

 実際に移住してきた人たちの声を聞いてまわりました。「空き家に関する情報があれば、ぜひ連絡をいただきたい」と思い、出会った人たちには手作りの名刺を渡しました。

 移住者の中には半年近くかけて見つけた人もいました。移住者のみなさんが口を揃えて言うことがあります。それは「妥協しないほうがいい」ということ。好きな街で暮らす上で、やはり家というものは重要な役割を果たします。あまりにもいい物件が見つからずに妥協しかけていた僕に、この言葉が響きました。

探すこと1か月半、ついに海の見える古民家を発見!

 家探しから1か月半が経ち、気がつけば見た空き家は30軒以上。その時点では、僕の条件をすべてクリアする空き家にはまだ出会えていませんでした。それまで見てきた空き家の中でいくつか気に入ったものはありましたが、「ここに住みたい!」と心から思う空き家はありませんでした。

 そんなある日、尾道で知り合った友人からの紹介で坂の途中にある空き家を見に行きました。僕の好きな尾道ならではの坂道を登り、小道を通り、辿り着いた一軒の空き家。

空き家

 ……ひと目ぼれでした。

 僕の一番の条件である「尾道水道が見渡せる家」。さらに尾道らしい木造の家で周囲には竹林があり、見た瞬間に不思議と自分がここに住んでいるイメージが湧きました。

尾道
尾道水道が見渡せる景色

 中に入って見ると、10年以上空き家だったということもあり畳や壁、その他もろもろが傷んでいました。ですが、空き家を再生するということも僕の目的です。修繕しながらこの家に住むというワクワク感が僕の背中を押し、最終的にその家に決めました。

見つけた空家のリビング
見つけた空き家の2階広間
 
 人との出会いと一緒で、空き家との出会いも「縁」であると強く感じました。今回の空き家探しで尾道の人の温かみをより感じることができました。また、聞き込みで知り合った人たちとは友人になり、それが尾道での生活をより豊かにする出会いとなりました。

カレンダー
空き家にかけてあった歴史を感じるカレンダー

 この日から、空き家を清掃、修繕していく格闘の日々が始まるのですが、それはまた次回に。空き家を借りてから起こるトラブルなどについても書いていきたいと思います。

<文・写真/ナオ船長>

[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 第2回目]

ナオマツモト
ナオ船長さん
コーヒーをこよなく愛する航海士兼Web系フリーランス。世界30か国を旅したのち、尾道に拠点を置く。空き家歴10年以上の古民家を自身で再生し「好きを追求する大人の遊び場」づくりを行うなど、さまざまな活動に挑戦中