北海道札幌市で生まれ石狩市で育ち、東京や中国・天津市でもさまざまなキャリアを積んだ後、2021年の暮れに北海道天塩町へ移住。現在は地域おこし協力隊として活動する三國秀美さんが、日々の暮らしを発信します。今回は町有林からトドマツを切り出し、子どもたちとクリスマスツリーをつくったイベントをレポート。
クリスマスツリーづくりはトドマツ伐採からスタート
11月から12月にかけ、天塩町で子ども向けにクリスマスツリーの飾りつけイベントが開催されました。通常、ツリーに使われるのはモミの木ですが、今回はモミ属に分類されるトドマツを町有林から切り出します。
北海道留萌(るもい)振興局森林室天塩事務所が主催し、天塩町役場農林水産課が協力したこのイベント。未就学児向けでありながら、木の伐採から行うという本気度を全面に出すところに、天塩町らしさを感じました。主役であるトドマツには樹齢16年の元気な木が選ばれ、伐採作業は雪が降る直前に行われました。
11月最後の週。小雨が降るなか、トドマツの伐採に出かけました。チームを組んでヒグマを警戒します。冬眠前でかなり体が大きくなったヒグマと薮の中でばったり出くわすことだけは、避けなければいけません。
先導車両、運搬車両、ノコギリやナタなどの道具を搭載した車両と、何台かで町有林まで遠征します。静かな森から物音が聞こえてこないか、ササ薮は揺れていないか、地面には深い用水路が通っていないか、足元を確認しながら進みます。クマイザサの枝はしなりながら前後に勢いよく揺れ、目に当たってしまうこともあるため、全身に緊張が走ります。足元はぬかるんでおり、前に進むだけでもかなり大変でした。
伐採後のトドマツを運ぶのは、下り勾配でもありそれほどの負荷はありませんでしたが、足元が見えづらく、じゃまにならないように手伝うのが大変でした。作業が終わったあとは、松ヤニでジャケットの周りがベタベタに。木のもつ生命力に驚きました。
松ぼっくりや木の塗り絵。地元のものでクリスマスをお祝い
伐採され、高さを整えられたトドマツは、役場庁舎1階の正面ロビーに置かれました。次に天塩事務所が用意したのは、持ち帰り用の松ぼっくりツリーと、トドマツに飾る塗り絵です。北海道産トドマツの板にプリントされた「てしお仮面」は、天塩町の特産品であるシジミをキャラクター化したもので、とても人気があります。
2日間にわたるこのイベントの1日目は「認定こども園おひさま」で行われました。自分の好きな塗り絵とペンを手に取る子どもたち。今回、お手伝いで初めてこちらを訪れ、子どもたちの元気な日常に触れることができました。
塗り絵を完成させた翌日は、場所を庁舎に移しての飾りつけイベント。自然に触れることのできる貴重な機会です。子どもたちそれまできっと、クリスマスツリーは箱に入って自宅に届くもので、本物の木を屋内に飾るのはドラマや映画のなかだけだと思っていたことでしょう。
会場には、てしお仮面も登場して華を添えます。抱きついたり引っ張ったり、ピョンピョンはねながら、てしお仮面との時間を楽しみました。塗り絵をしたキャラクターを目の前に、楽しそうな子どもたち。これからも自分らしく、感性を育んでいってほしいです。
トドマツを伐採したときには、まだ雪に覆われていなかった天塩町。一夜にしてガラリと雪風景に変わりました。雪が降り、吹雪で自動車移動がままならない日もあるなか、防寒着を身につけて外を歩く子どもたちの姿は、とても頼もしく目に映りました。
<取材・文・写真/三國秀美>
【三國秀美(みくにひでみ)さん】
北海道札幌市生まれ。北海道大学卒。ITプランナー、書籍編集者、市場リサーチャーを経てデザイン・ジャーナリスト活動を行うかたわら、東洋医学に出会う。鍼灸等の国家資格を取得後、東京都内にて開業。のちに渡中し天津市内のホテル内SPAに在籍するも、コロナ感染症拡大にともない帰国。心機一転、地域おこし協力隊として夕日の町、北海道天塩町に移住。