グランプリは長野県原村の75歳の園長先生「ニッポン移住者アワード2024」

移住先で理想的な暮らしを実現した人たちを表彰するコンテスト「ニッポン移住者アワード」の選考会・表彰式が2024年12月17日開催され、グランプリと各部門が決定しました。ここでは、今回エントリーしてくれた個性的な受賞者を紹介します。

グランプリは長野県原村75歳の保育園の園長先生に

グランプリのパネルを持つ原村の橘田美千代さん

 このアワードは、移住ですてきな暮らしを実現し、地域にもよい影響を及ぼしている移住者とそれを支援する自治体を表彰するもので、フジサンケイグループの産経新聞社、ニッポン放送、BSフジ、扶桑社、ポニーキャニオンが主催。全国からエントリーのあった12自治体18組の候補のうち、書類選考を経て7組が最終選考会に進出。

 最終選考会では、それぞれ資料を投影しながら8分間のプレゼンを実施。写真や動画を使って紹介される、多彩な暮らしぶりやユニークな取り組みには、審査にあたる選考委員からも驚きの声が。なかでも、目を引いたのが長野県原村からエントリーした橘田美千代さんでした。

保育園んで子どもたちと並ぶ橘田さん

 橘田さんは、東京で乳幼児保育に45年かかわったのち、「庭で花を育てながら、のんびり暮らしたい」と長野県の静かな山村、原村に5年前移住しました。そこで余生を過ごす予定でしたが、村で子どもの預け先がなく困っている若いお母さんたちのことを知り、一念発起。同世代の元保育士たちや地元の人たちの協力を得て、寄付やクラウドファンディングを活用して保育園を開園したのです。

「2025年には、0歳から5歳児までの40名定員の保育園をつくる」という目標を掲げる橘田さん。選考委員からは「花を育てるはずが、子どもを育て始めた行動力がすごい!」と驚きの声が。年齢をものともせず、地域を巻き込み社会課題を解決しようとする姿勢が評価され、グランプリ受賞者となりました。

 ニッポン移住者アワード選考会では、以下5つの部門賞が発表されました。

「ウェルビーイング賞」は茨城県ひたちなか市の鈴木梨紗さんと北川千晴さん

イモ畑に立つ鈴木さんと北川さん

 移住先で地域の人たちと関わりながら、自分らしい暮らしを実現した人を表彰する「ウェルビーイング賞」は茨城県ひたちなか市の鈴木梨紗さんと北川千晴さんが受賞。さまざまな職業を経て女性2人で農業を営む彼女たちの、地域の人たちの協力を得ながら楽しくたくましく生きる姿に選考委員も共感していました。

「地域産業賞」は愛媛県伊予市の上田沙耶さん

店先に立つ上田さん

 地元の産業を活性化し、地域の魅力を発信する人を選考する「地域産業賞」は愛媛県伊予市の上田沙耶さんが受賞。祖父母が暮らすまちに大学在学中に地域おこし協力隊として飛び込み、ECサイトを立ち上げたり、泊まれる喫茶店を開業するなど、地域商社をつくって、さまざまな事業を展開するスピード感と実行力に選考委員も驚いた様子でした。

「地域創生賞」は佐賀県有田町の上野菜穂子さん

茶わん最中の看板の横に建つ上野さん

 新たな雇用を生み出し、地域の活性化に貢献した人に贈られる「地域創生賞」は佐賀県有田町の上野菜穂子さんが受賞。400年以上の伝統ある焼き物のまちで、名物だったお菓子「ちゃわん最中」を復活させ、まち全体を百貨店に見立ていろんなお店を観光客が訪ねるようにする取り組み「うちやま百貨店」などが評価されました。

「子ども未来賞」は三重県桑名市のスペイト・ ダニエルさん

子どもたちに英語を教えるダニエルさん

 次世代を担う子どもたちの成長を後押しする人を選ぶ「子ども未来賞」は三重県桑名市のスペイト・ ダニエルさん。オーストラリア出身のダニエルさんは、日本への留学を経て訪日。名古屋から桑名に移り住み、自身の3人の子どもを育てながら、未就学児向けの英語教育を行うプレスクールを運営しています。

「選考委員特別賞」は宮崎県宮崎市の鈴木幸菜さんと千葉県長生村の橋澤義憲さん

海岸に立つ鈴木さん
 
 選考委員特別賞は2人が受賞。

 宮崎県宮崎市の鈴木幸菜さんは、女性向けの吸水ショーツを考案するなどフェムテック事業を推進。移住によって生活の質を大幅にを向上させるとともに、地域の人たちの協力を得ながら、女性の社会課題の解決に貢献しています。

ミツバチの巣箱を手入れする橋澤さん

 千葉県長生村で養蜂業を営む橋澤義憲さんは、海外を飛び回る忙しい仕事を見直し、家族過ごす時間と子育て環境を充実させながら、地域の自然環境を生かして、養蜂に取り組んでいます。

表彰式でステージに並ぶ受賞者と選考委員

「ニッポン移住者アワード」
移住で理想的な暮らしを実現した人たちを表彰するコンテスト。選考は、地域創生や地方移住に知見のある識者で構成する選考委員会が担当。自己実現・家族の幸せ・地域貢献・コミュニティ活性化・事業立ち上げ・伝統継承・次世代育成など、さまざまな視点で審査を行い、グランプリほか各部門賞を選考します。同時に各自治体の取り組みも審査し、移住者や地域の方々にとって魅力的な移住促進施策を行っている自治体を表彰。移住者とその暮らしを支援する自治体双方を審査対象とします。フジサンケイグループの産経新聞社、ニッポン放送、BSフジ、扶桑社、ポニーキャニオンが主催。

●選考委員長 
林﨑 理 地域活性化センター理事長、内閣官房参与(地方創生担当)
●選考委員
及川 卓也 マガジンハウス「こここ」統括プロデューサー/starnet代表
風間 欣人 JTB総合研究所代表取締役社長執行役員、立教大学観光学部特任教授
中川 淳一郎 編集者
山本 ふみこ 随筆家

<撮影/産経新聞社 文/カラふる編集部>