WEBライターを経たのち、現在は富山県滑川市の地域おこし協力隊として活動する田中啓悟さん。今回は、市内の空き家解体にチャレンジしたイベントの様子をレポートします。
大型店舗の解体作業に参加
空き家バンク(空き家の有効活用を目的とするデータベース)の運用や、空き家の利活用をおもなミッションとしている私ですが、活動をとおして、全国の自治体が抱える問題や課題をよく耳にします。都会・田舎関係なく、悩みの根源は皆さん同じなのです。
なかでも、もっとも重要視されているのが「空き家の利活用」。空き家は取り壊す、放置するがなんとなくまかりとおっている今日、さまざまな地域で空き家を活用した新たな事業を行う人が増えています。今回はそんな空き家リノベーションの入り口である、解体作業の現場に立ち会いました。
今回手をかけていくのは、もともと地域でいちばん大きいお店だった物件。空き家というより空き店舗と表現したほうがいいかもしれません。今後の利活用が決まっており、内装をある程度解体したあと、当時のデザインも懐かしめるよう、こだわって改装する予定です。
天井など難しい位置にあるものは建築士さんが取り壊し、出た廃棄物をほかの人が袋に詰めて運びます。足場を確保するためにも、この運び出し作業はとても重要です。
1時間ほどでこのとおり。優に数百kgはありそうながれきが、ブルーシートの上に敷き詰められていきます。これを何往復もして運び出し、その度にふくれ上がっていく山を前に「やった感」が芽ばえます。
石こうボードの壁を破壊していくと、基礎部分が丸見えに。こう見ると、建物ってすごくしっかりつくられているんだな、とあらためて実感できます。足元にクギやネジが散乱しているので、気をつけながら作業を進めます。
私もバールを使って石こうボードを破壊しました。切り込みを入れ、穴がこぶし大くらいになったら、手を使ってはがしていきます。湿気を含んでいるとポロポロとこぼれ落ちてくるのですが、乾いている箇所は木枠とガッチリ固定されていて、はがすのに苦労しました。
普段はなかなか目にすることがない、断熱材も確認できました。こうして壁が何層にもなり、私たちの生活が快適になっているのだと実感します。
空き家の解体をやってみて痛感したのは、規模が大きくなるほど、運び出すものの量も増えるということ。さらに、大きいものは切り分ける必要があり、処分に思いのほか手間がかかります。
この部分をすべて業者に任せると費用が高額になることもあり、空き家利活用のうえで、ひとつの大きなハードルだと思いました。
内装を取り払うと広い空間が出現
壁や装飾物を取り除くと、驚くほど広い空間が現れます。とくに天井の辺りが広く感じられ、改装後のレイアウトによっては開放感を堪能できる空間がつくれそうです。
空き家事業の関係者で行われた今回のイベント。企画し、声をかけてくれた皆さまとパシャリ。普段は市内で建築関係の仕事をしている人や、わざわざ東京から参加してくれた人もいて、滑川の空き家再生に力が入ります。
「空き家問題」というと大ごとに聞こえますが、まずは目の前の建物と向き合うことだと思います。自分たちがこの建物をとおして、どういうまちにしていきたいか。それを常に頭に置きつつ、「楽しむ」「楽しいを広める」ことを目標に、地域おこし協力隊のミッションを通じてまちに貢献していきたいです。
<取材・文・撮影/田中啓悟>
【田中啓悟さん】
大阪府大阪市出身。大阪の専門学校を卒業後、WEBライターとしてデジタルゲーム関連の記事を執筆。その後、「訪れたことがない」という理由で富山県に移住し、地域おこし協力隊として、空き家バンクの運用・空き家の利活用をメインに、地域の魅力発信やイベントの企画に携わっている。