山形県小国町に地域おこし協力隊として移住した岩手県出身の欠端彩乃さんが、町での体験などを発信します。今回は町民参加のウィンタースポーツ大会をレポート。
記録的な大雪のなかで行われた町内スポーツ大会
冬本番の2月。山形県小国町で「白い森ウィンタースポーツ大会」が横根スキー場を会場に開催されました。町民が選手となり11の地区ごとで競う町民スポーツ大会。コロナ渦などの影響で、6年ぶりの開催となりました。
前年は、雪不足のため大会中止となりましたが、2025年は雪国に住む町民も驚くほどの大雪。身長164cmの私がすっぽり覆われるほどの高さに積もりました。ウィンタースポーツを楽しむには絶好の条件です。
雪を高く積み上げるスノー・タワー競争から競技開始
大会のスタートをきったのは、レクレーション競技のスノー・タワー競争。別名、雪積み競争です。チームから5名選抜し、2分間でどれだけ高く雪を積み上げられるかを競います。スコップ、バケツ、2m以内の脚立は使用してもよいというルール。
この雪でできるの? あちこちから開始前に聞こえてきた声。それもそのはず、雨の日が続き、降り積もっていた雪は溶けたり固まったりを繰り返し、雪面はガリっとした固い雪に。スコップを入れようとしても、なかなか掘れません。
開始前には、地面を掘る練習をする参加者が多く見られました。たった2分間の1本勝負。各地区、本気で挑んでいることが伝わってきます。
いよいよスタート! 雪を掘る人、バケツに雪を入れる人、バケツをひっくり返して積み上げる人。自然と役割を持ち挑んでいました。
バケツは、一度に高さの出せる大きいのがいいのか、はたまた雪を盛る回数を減らせる小さなものがいいのか、スコップはどれがいいのか…使用する道具を選ぶ作戦も重要なようです。
タイムアップまでもうすぐ。「もっと早く積んで~!」と、外野からも熱狂的な声がわき上がります。急いで積んでもバランスが悪いと崩れ、スピード勝負なのでハラハラドキドキ、あっという間の2分間。優勝チームのスノー・タワーは、男性の背丈ほどに立派にそびえ立っていました。
いちばんの盛り上がりは足元ツルツルの雪上綱引き
いちばん盛り上がりを見せたのは、レクレーション競技の雪上綱引き。大会最後の競技のため、足元は踏み固められた雪で、踏ん張ろうにも踏ん張りにくい状態です。見ている側も思わず体に力を入れてしまうような雰囲気でした。
トーナメント戦で行われ、決勝戦が始まる頃にはグチャグチャな足元。さらに踏ん張りにくい状態に。不安定な足元で、転ぶ人が続出します。
相手方はそのうちに引っ張り、転んだ人は引きずられ…その様子に会場の視線と笑いが集まります。これが、雪上綱引きのおもしろさ! 参加者はもちろん観客も一緒に楽しめる競技でした。
小学生も参加するスキー・スノーボード競技
レクレーション競技のほかに、各地区から選抜された選手によるスキーとスノーボード競技も。年代、性別、コース別に小学校低学年から50歳以上まで出場できます。
驚いたのは、小学生たちの見事なすべり。横根スキー場は初心者が挑戦すると怖気づいてしまうような急な斜面からはじまるスキー場です。小学生のコースは、斜面の途中から始まるとはいえ、その軽快なすべりに会場の皆が見とれるほどでした。
小国町では小学生からスキー授業を開始。学年やひとりひとりのレベルに合わせ、生徒の保護者など町民のなかから指導者を選び、指導を受けられます。幼いうちから雪に親しみ、身近にウィンタースポーツを楽しめる環境が整っているからこそ、自然と技術を身につけられるのです。
スノーボード競技に出場した緑のふるさと協力隊の佐々木佑真さんは、「今年になってスノボを始めたばかり。始めたての競技で出場するのは不安でしたが、地区のみなさんの応援もあってがんばれました。満足な結果ではないものの、ベストをつくすことができたのでよかったです!」と話してくれました。
金メダリストも練習したハーフパイプもある
横根スキー場の特徴は、ハーフパイプが設置してあること。全国で最初にスノーボード専用のハーフパイプを取り入れたスキー場でもあります。2025年は、ハーフパイプの営業はしておらず、残念ながら雪に埋もれた状態でした。
ここはオリンピックスノーボード金メダリストの平野歩夢選手が、幼少期練習に訪れていたスキー場でもあります。道の駅内に併設されているレストランあいあいの入り口には、平野選手の大きなポスターを見ることができます。
スポーツを通じて地域を越えた町民交流
小国町では、白い森ウィンタースポーツ大会に加え、7月開催の白い森ニュースポーツ大会、10月開催の白い森スポーツフェスティバルと合わせて、3大スポーツ大会と呼ばれる町民スポーツ大会が1年を通して行われています。どれも町を11地区に分けて、地区ごとで競われるユニークなスポーツ大会。子どもから大人までさまざまな年代の町民が一斉に集まります。
大会を通じて、普段顔を合わせることのない人と出会うきっかけにもなっています。会場のあちこちで地区を越えて会話を楽しむ姿や、子どもたちが一緒に遊ぶ姿を見かけました。
前出の佐々木さんは「どこの地区も若い人たちが減ってきているとよく耳にします。そんななか、大会を通じて20代の協力隊という存在は、地区にとって力を与える存在となっているのだと感じることができました」と若者が地域のイベントに参加する意味についてもふりかえってくれました。
ともに身体を動かし、一緒に汗を流して親交を深める。スポーツは人と人をつなぎ、地域の絆を強めるきっかけになるのだと実感する1日となりました。
<取材・文/欠端彩乃>
【欠端彩乃さん】
岩手県盛岡市出身。山形県の大学で民俗学を専攻し、同県小国町地域おこし協力隊となり、町の歴史民俗資料館の立ち上げに取り組む。地域に息づく文化やそれらの人びとの思いに関心をもち、地域を超え次の世代へ受け継げたらと、発信している。