地域おこし協力隊に落選。移住先でリモートワークしつつ職探し

[憧れの田舎暮らしを母子でスタート 第4回]

東京のIT企業でバリバリ働いていた祥子さんは、2年前の秋に当時2歳のお子さんと母子で岡山県和気郡和気町(わけちょう)に移り住み、長年憧れていた田舎暮らしを手に入れました。夫は仕事の都合で都心を離れられず単身赴任です。祥子さんの移住への強い思いをとおし、田舎暮らしのリアルと和気町の魅力をうかがいます。

和気町の観光名所、「種類日本一の藤公園」

昨年の藤祭りの様子
昨年の藤祭りの様子
 
 私が移住した和気町にはGWの時期、「藤まつり」という有名なお祭りがあります。開催場所の「藤公園」は全国の著名な藤や中国・韓国の藤150本が巨大な藤棚に咲き乱れる観光名所。「種類日本一の藤公園」として毎年たくさんの観光客であふれます。今年も楽しみにしていたのですが、残念ながら自粛期間ということで中止になってしまったので、昨年訪れた際の写真を掲載しました。海や山も近いうえ、近所に美しい公園もあり、住環境には本当に恵まれていると思います。

ライトアップされた藤
ライトアップされた藤もきれい!

最低賃金は時給833円。田舎でバイト暮らしは厳しい

 
 今回は移住するうえでもっとも大事な「仕事」についてお話します。和気町で働こうと思った場合、お店がわりとあり、近隣地域含め工場もたくさんあるので、正社員に就けば生活費は十分稼げると思います。

 ただ、枠が限られていたり、いろいろな条件で就職が難しい場合はアルバイトということになりますが、岡山の最低賃金は833円、和気町のアルバイトの時給相場は860円。フルタイムで働いても月14万円~15万円。家賃、光熱費は比較的高く、夏や冬は合わせて10万円近くかかります。残り4万円ほどで食費・雑費となると結構キツいですよね…。

移住者にまずオススメなのは地域おこし協力隊

アスレチック
子どもがお気に入りのアスレチック。晴れていれば遊ぶ場所には困りません。

 地域おこし協力隊という仕事はご存知ですか? その名の通り、人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域を興す、地域活性化のお手伝いをする役割で、応募できるのは移住するときに都市部から住民票を移動するその1回のタイミングのみ。

 都市部で培ってきた経験を活かして活躍できるという非常にやりがいのある仕事なうえに、基本給のほかに地域が住居を負担してくれる、つまり家賃がタダ! というとても大きいメリットがあるので、いろいろな意味でとてもオススメです。じつは私もこれに応募したのですが、お恥ずかしい話、見事に落ちました。まぁ、これも実力不足。適任じゃなかったということですね。

移住者仲間の紹介で仕事を開始

社長飯
ランチに職場のみんなで社長夫婦手づくりのご飯をいただける幸せ!

 移住を決めたときにはそんなわけで仕事は決まっていなかったものの、私のいちばんの目標は田舎で子育て。仕事は出来るものならなんでもする気概でしたので、家族には無謀とも言われましたが、不思議と自信がありました。

 当時、娘はまだ2歳で、さらに9月という中途半端な時期だったこともあり、就職するのは厳しい状況でした。幸いにも移住前から少しリモートで仕事をいただいていたことと、移住者の先輩から町内会社のECサイトの更新のお仕事をいただけたこと。それに移住者友達からパソコン教室でパソコンのインストラクターの仕事を紹介してもらい、すぐに働き始めることが出来ました。

 地元で仕事をいただけるのはとても大きいです。仕事を通して地元の方々と深く交流できますし、仕事以外にお昼のまかないや、野菜や果物のお裾分けなどぜいたくなプレゼントがつくことも。確かに給料は東京での稼ぎに比べたらとても少ないですが、ストレスはないうえ、生活の幸福度が増して、思いきって移住したことは正解だったと強く思っています。

気になる保育園事情

保育園
広い敷地の保育園

 小さい子をもつ親ならとくに気になる保育園事情ですが、和気町の0〜1歳の待機児童は数名と聞いていますので、ほぼ入園できている状況なのだと思います。

 私の娘も3歳から入園しておりますが、広い園庭がいくつもある広々とした保育園でのびのびと過ごしています。園内だけでなく、天気のいい日は町内の自然豊かなところにお散歩に行ったり、農作業体験をしたり、とてもいい経験をさせてもらっていて、ここの保育園に入園できただけでも和気町に移住してきてよかった! と思っています。

 和気町の子育て支援については、高校まで医療費無料、幼稚園保育料無料、預かり保育無料、JR和気駅を起点とする通勤・通学定期券購入費用の1/2(最大7,500円/月)を補助、幼児2人同乗電動自転車を1年間無料でレンタル、無料の公営塾など、手厚い支援がたくさん。2018年の岡山県子育て支援ランキングで2位になったのも、こういったことが理由かなと思います。

やっぱり強いリモートワークとパソコンスキル

保育園も休園中
保育園も休園中

 今回の新型コロナウィルス騒動で世界は一瞬のうちに様変わりし、未だ収束が見えず不安が募るばかりではあるものの、みんなが命の尊さを新たに感じ、自分の生活や仕事を見つめ直す機会が訪れているともいえるのではないでしょうか。

 医療はオンライン診療を積極的に進めており、教育もオンラインに切り替わり、学校に通わずともみんな平等に質のいい教育が受けられる体制が整い始めています。震災のときにも思いましたが、仕事についても、職場に縛られず自由に動ける職をもっていることはとても心強いと思います。私の夫は仕事で東京を離れられずにいる一方で、私が移住に踏み切れたのは、パソコンスキルとリモートワークがあったことも大きい。実際、仕事も紹介してもらいやすかったように思います。

 ただしフリーランスは自由とは言え、安定した収入は望めません。じつは私も今回のウィルス騒動により、リモートワークのクライアントが旅行会社だったことで、そのお仕事は失ってしまいました。けれども、今は生きていられるだけで十分、見通しが立てられるようになったら自分で仕事をつくりだそうと思っています。
  
<写真・文/祥子>

[憧れの田舎暮らしを母子でスタート 第4回]

祥子さん
40代のワーキングマザー。もうすぐ4歳の娘と2年前に東京から岡山県和気郡和気町に移住し、Webディレクターとして東京の仕事をリモートワークをしながら、地元でパソコンインストラクター、月1回パン教室も開催。趣味はフルート、フラダンス。