「臭突」が壊れて強烈なにおいが。尾道の古民家移住でトラブル発生

[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 4回]

普段は航海士として、1年の半分ほどを船に乗って日本中を回り、休暇中はWeb系のフリーランスとして働くナオ船長さん。育ちは埼玉ですが、移住したい場所を求めてたどりついたのは尾道でした。空き家を再生させて、新たな生活をスタートさせようとしているナオ船長さんの毎日をお届けします。

借家の古民家の掃除を終え、ついに母屋へ移り住む

和室

 掃除の日々を乗り越え、ついに母屋に住み始めました!

「空き家再生の一歩目は掃除から」ということで、前回は離れの掃除から始めてそこを拠点に暮らし始めたことをお話ししました。その後も毎日のように掃除に明け暮れくれる日々。長年放置されていた母屋は、とにかくほこりとクモの巣がすごい……! なので保護メガネ、マスク、ゴム手袋の3つは必須アイテムでした。

 先輩移住者からは、「まずは押入れを全部開けてみて、掃除道具はなにがあるのかを確認してから買いにいくといいよ。それでも思わぬところから出てくるんだけどね」とのアドバイスをいただきました。一通り家の中を見てみると、ホウキや掃除機などの道具は揃っていました。しかしあまりにも汚れていたため、まずは掃除道具を掃除することに(笑)。

 助言のとおり本当に思わぬところから掃除機の紙パックや洗剤などが見つかり、必要最低限のものだけの購入ですみました。毎日掃除に明け暮れたおかげで10日ほどで母屋の掃除は終わり、室内は見違えるようにキレイに。

緑が多い山手の古民家には、虫や蛇が出没しやすい

庭
伸びすぎてしまった庭の雑草

 僕が住んでいる古民家は山手の坂の途中にあり、まわりには緑が多く自然をしっかりと感じることができます。だからこそ、虫との戦いは避けられません。

 古民家暮らし始めて感じたことは、やはり虫がよく出るということ。家のまわりは管理されていなかったため雑草が伸び放題です。長い間、虫の住みかとなっていたわけですから、虫たちも「はいどうぞ」と簡単にはゆずってくれません。
 
 虫が入ってきてしまう原因はすぐに分かりました。今の家に出会うまでに数十件もの空き家を見て回りましたが、山手にある古民家には共通する特徴がありました。それは壁と柱の間には外が見えてしまうくらいの隙間があるということ。湿気がこもらずに建物が長くもったのはこの隙間のおかげかもしれませんが、虫からしたら入り放題です。
 
 まわりの移住者からも「古民家暮らしは虫との戦いになるよ」と聞いていたので、掃除のあとには強力なバルサンをすべての部屋で炊きました。それでも出るときは出ます。

 とくに気をつけなければならないのは、ムカデなどの害虫や蛇です。寝ている間にかまれることもあるので、蚊帳を張ったり直接床に布団を敷くのではなくベッドで寝るといった対策が必要となります。

古民家ならではのトラブルにびっくり。初めて聞いた「臭突」という言葉

古い臭突

 生活の拠点を離れから母屋に移して2週間ほど経ったころ、すこし室内が臭いなと感じていました。

 わが家のトイレは排泄物をそのまま地下槽にためるトイレで、いわゆる「ボットン便所」です。2か月に一度の回収日には、国道に停めた回収車のホースが山手に伸びている光景を見ることができます。料金はホースの長さで決まるというのが、またおもしろいところ。

 洋式の水洗トイレが主流の現代ではあまり見かけませんが、尾道の山手ではまだまだ古い空き家が残っており、このタイプが多いのです。排泄物がたまれば少しにおいが出てくるのも当然かと思い、そのまま1週間が過ぎました。

 ………いや、さすがににおいがキツすぎる!

 これはおかしいと思い、尾道に移住してから知り合った友人に相談してみました。すると「臭突が壊れているんじゃない?」と言われました。

 臭突……? 人生で初めて聞く言葉です。臭突とは地下槽から外気に臭いを排出する煙突のことだと教えてくれました。煙突の上には電動のファンがついており、常ににおいを排出しています。

 さっそく家の裏に周って探してみると、臭突を見つけました!

臭突2
下の電源にコンセントが刺さっている

 見たところコンセントにはささっているものの、稼働していないのでやはり壊れていたようです。すぐに取りつけられるものをインターネットで調べ、その日のうちに新しい臭突ファンを購入。とにかく消臭効果が高いものを選びました。ついでにトイレの消臭剤と地下槽に、投げ入れるタイプの消臭剤も購入。

 臭突ファンが届くまでの間は離れに避難することに。そして2日後、待ちに待った臭突ファンが届きました。
 すぐに取り付けて1時間後、室内に漂う嫌なにおいが、すっかりなくなりました!

臭突1

 トイレがにおわないということがこれほど幸せなものかと本当に感じました。「当たり前」だと思っていることを見つめ直す機会が、まさか今回の臭突の1件でくるとは思いもしませんでした。

 こういった普段の生活では気づけないことに気づけるのも、地方移住のおもしろさかもしれませんね。

 次回もトラブル続きの古民家暮らしの様子や修繕の日々について書いていきたいと思います。

尾道の桜
季節外れですが、4月の尾道の桜はきれいでした

[世界を旅した若き航海士が尾道の空き家でDIY生活 第4回目]

ナオマツモト

ナオ船長さん
コーヒーをこよなく愛する航海士兼Web系フリーランス。世界30か国を旅したのち、尾道に拠点を置く。空き家歴10年以上の古民家を自身で再生し「好きを追求する大人の遊び場」づくりを行うなど、さまざまな活動に挑戦中