地域おこし協力隊を卒業。外出制限だけど下諏訪で会社を設立

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

 長野県の諏訪湖のほとりの宿場町で、地域おこし協力隊として活動していた小林由香里さんと綿引遥可さん。3年間の任期を終え、4月からは新しい会社を設立してがんばろう!とはりきっていましたが、コロナウィルスの影響で事業を進めることが困難に……。そんな2人が新たに始めたサービスとは?

町への愛とまわりの方への感謝。地域おこし協力隊を卒業しました

花束を持つ著者
協力隊として移住できたからこそ、地域に馴染みやすかったと実感しています

 下諏訪町(しもすわまち)の地域おこし協力隊、略して「ちおこ」の小林由香里と綿引遥可です!……という自己紹介をしてきましたが、この4月をもちまして3年間の任期満了につき、地域おこし協力隊を卒業しました。

 地域おこし協力隊は、さまざまな課題を抱える地方へ、都市圏から移住をして隊員となり、地域協力活動をミッションとして定住を図ることを目的とした、総務省の制度です。地方への移住を考えている人にとっては、お仕事をいただきながら地域の暮らしへと入っていくことができる、ありがたい仕組みでもあります。

地域の人たちと茶飲み話
すべての経験が宝物。ちなみに作業やイベントは、いつも楽しいお茶会や飲み会とセットでした

 下諏訪町の初の地域おこし協力隊として、私たちのミッションは「町への移住定住促進」でした。移住交流スペース mee mee center Sumebaでの移住相談やイベントを企画し、町で新しい暮らしをスタートしたい人向けのお試し住宅をリノベーションもしました。移住者の方と一緒に地域のおじいちゃんやおばあちゃんに混じって、畑や田んぼで作業をしたり、信州らしいみそや野沢菜漬けをつくったり。小中高生の授業で商店街の案内をしたこともありました。取り組んだことは、書ききれないほど多岐に渡ります。

 移住を検討・希望する方と接する機会はありましたが、思い返すと地域の方と一緒に過ごしたり、なにかをつくり上げていったりすることも多かった協力隊活動でした。

これからも地域の活気づくりに関わりたい! 新しい会社を設立

DIYで壁を塗る著者
商店街の一角に事務所を構えます。協力隊時代の経験を生かし、もちろんDIY!

 そんな3年間通して感じたのは「住んでいる人が幸せでいられる町に、人はひかれて集まってくる」ということ。自分の場合も、楽しそうに暮らす地域のみなさんとふれあって、仲間になりたい!と強く思ったことが移住のきっかけでした。

 だから、私たちを受け入れてくれた地域のみなさんに恩返しをして、もっといい町にしたいし、もっと幸せになってもらいたい。それを見て、下諏訪町を好きな人がもっと増えて、結果として下諏訪町に住むことを選んでもらいたい。特技や資格がない フツウな私たちのできることは小さいけれど、それでもその力になりたい。そのように思い至りました。

 そこで、任期を終えた私たちが選んだのは「合同会社 chioko」の設立です! 地域のおもしろさや元気につながることをやります!という心意気の、いわゆる「まちづくり会 社」を設立しました。社名のchioko(ちおこ)には、協力隊時代の想いを継いでいくという決意とともに「小さくことをおこす、地域の黒子」の役割を担いたい、そんな意味も込めています。

 まさか、協力隊になった当時は会社をおこすことになるとは思ってもみませんでした。それでも、活動を経て築いたつながりを生かし、地域に貢献しながらも大好きな下諏訪町に暮らし続ける選択肢として、私たち2人にとって自然なことだったようにも 思えます。

お店の料理を配達!商店街のみなさんと「おかもちプロジェクト」スタート

料理を配達する著者
おかもちプロジェクトは、私たち自身の正にヤッテミレバ!な試みなのです(写真提供:下諏訪市 民新聞社)

 そんな思いと裏腹に、昨今の影響で人を集める企画は軒並み開催が難しく、もともと予定していた事業を当初の予定どおりに進めることが難しくなってしまいました。でも、逆境はチャンスでもあります。こんなときだからこそ、困っていることの力になれないかと頭をひねりました。

 そこで、商店街のみなさんにアイデアをいただき、「おかもちプロジェクト」と称したサービスを考案。電話1本で注文ができ、商店街の飲食店のおいしい料理を買い物代行、ご自宅にお届けするというものです。

 とはいえ、私たちもやったことがあるわけではありません。しかし、そこは「ヤッテミレバ」の精神です! おいしいものを食べて元気を出してほしい、とくに外出が難しいご高齢の方にも利用いただきたいという思いで、仕組みを検討、関係各所と調整してスタートしました。試行錯誤しながらのサービスで、私たちもドキドキしっぱなし。それでも、飲食店の方からは快くご協力いただけたり、利用者の方からも自宅で お店の味が楽しめてうれしいという声もいただいたり、なんとか形になりました。

 合同会社chiokoでは、私たち自身がヤッテミレバ!の見本になりながら、地域のお役に立てるようにチャレンジを重ねていくつもりです! 協力隊時代から企画運営している、好きなことを自分らしい仕事にする講座「小商いヤッテミレバ!キャンプ」の様子や、町をおもしろくする新たな試みなど、これからも引き続き紹介していきたいと思います。

今月のコアキナイビト その5 ●つまみ細工 ゆうさん

つまみ細工の作家のアトリエ
柔らかなゆうさんの雰囲気が表れているアトリエ。目に楽しい色とりどりのつまみ細工が並びます
 
 前回に引き続き、下諏訪町での新しい暮らしや仕事を応援する「しごと創生拠点施設ホシスメバ」を工房としている作家さんのご紹介です。さまざまな手仕事を得意とす るゆうさんは、ちりめんという絹を平織りした素材を使う「つまみ細工」の作家さんとして活躍されています。着物の髪飾りなど和風なイメージが強いつまみ細工ですが、ゆうさんのセンスで洋風にアレンジしたり、日常でも使いやすいアイテムにしたり。つまみ細工の新たな魅力に気づかされます! ぜいたくなオーダーメイドに加え、お気に入りだった洋服をリメイクしてつまみ細工にしてくれるサービスも◎。

 作品ももちろんですが、Insragramに掲載されている、端切れを使ったもったいないアートもかわいらしいものばかり。ものや人の思いを大切に、常に新たなアイデアを形にし続けている作家さんなのです!

[しもすわで小商いヤッテミレバ]

小林由香里さん 綿引遥可さん 
長野県下諏訪町の地域おこし協力隊として、2017年から在住。2020年、合同会社 chiokoを設立し、下諏訪を「小商い=自分らしい暮らし方・働き方の育つ場所にしたい!」と奮闘中。