コロナで加速!? 地方移住を選択する若者たちの本音をリサーチ

 新型コロナウィルスによるテレワークの普及で、地方移住を検討する人が増えているようです。カラふる編集部が「地方移住に興味がある」という20~30代500人にアンケート調査を行ったところ、現在の仕事を続けながら、移住を模索する様子が見られました。

「新しい働き方」が広まるなかで若者たちの意識変化を探る

地方移住

 新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない東京。富士通がオフィスを半減し、テレワークを常態化させる取り組みを進めると発表したり、カルビーも7月から原則「テレワーク」に変更、単身赴任を廃止するなど新しい働き方に注目が集まっています。

 そんなニューノーマルな生き方を模索する現代において、最近、選択肢の1つとしてあげられるのが「コロナ移住」。オフィスがなくなり、通勤という概念がなくなるのであれば、無理に東京などの都市部で暮らさずに、地方部に住めばいいという考え方です。

 地方移住への相談は若者を中心に、ここ10年で10倍に増えたといわれ、なかには「会社が在宅ワークOKになったから」という人もいたとか。しかし「地方移住」と言っても、仕事や子育て、人間関係などさまざまなハードルがあります。

 そこで今回、カラふる編集部では、1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)在住で「地方移住に興味がある」20〜30代男女500人にインターネットを通じて、地方移住に関するアンケートを実施(調査期間は5月7~9日)。これから地方移住を考えている都市部の若者世代の声を拾ってみました。

20~30代が抱く都市への不満、地方移住への期待は?

 まずは彼らに都市部に住むことについて尋ねたところ、デメリットを以下のように感じているようです。

Q.都市部での生活に不満な点は?(複数回答)
生活費が高い 56.6%
通勤・通学が不便(混む) 38.4%
家が狭い 34.2%
自然環境が悪い 31.8%
人間関係が面倒くさい 23.0%
騒音などがうるさい 19.6%
給料が安い 8.0%
仕事がつまらない 4.2%
その他 0.8%

 ダントツで多かったのが「生活費が高い」(56.6%)。とくに住居費は東京23区内の場合、ワンルームタイプのマンションで平均6万〜7万円が相場で、地方都市の3万〜4万円と比較しても高いことがわかります。

 また「通勤・通学が不便(混む)」(38.4%)が第2位に。総務省統計局の発表するデータによれば、東京都内の平均通勤時間は1時間30分(往復)で、電車の平均混雑率は徐々に緩和されているとはいえ、今でも160%と言われています。

 今後テレワークやオフィス廃止の流れが加速していけば、わざわざ生きづらい都市部に住んで、高い生活費を住む必要はなくなるでしょう。「地方移住」が選択肢の1つとして浮上してくるのもうなづけます。

 では「地方移住」が選択肢としてあがってきたとき、彼らはなにを「地方移住」に求めるのでしょうか。

Q.「地方移住」先に求めるものは?(複数回答可)
病院など生活環境が充実 33.0%
仕事・求人がある 30.6%
住環境が整っている 30.2%
自然が豊か 29.0%
子育てのしやすさ 20.6%
生活費が安い 17.2%
地域住民の人柄 9.6%
移住支援制度の充実 7.2%
通勤・通学に便利 5.6%
その他 0.4%

 地方移住で多く相談があるのが「仕事」「子育て」「住居」についてです。もっとも多かった「病院など生活環境が充実」(33.0%)は、家族のことを考えて生活のしやすさを重視しているからです。そして、次に多かったのが、やはり「仕事・求人がある」(30.6%)。「仕事」は生活していくうえで必要不可欠。自然が豊かを謳う地方自治体は多くありますが、なかなか「仕事・求人」までサポートしてくれることは少ないのが現状で、多くの移住希望者が不安に感じているところでもあります。

 しかし、ここ数か月でこれらは大きく変わろうとしています。それは冒頭でも話したとおり「ニューノーマルな働き方」がコロナによって生み出されているからです。

「僕はシステム開発のアウトソーシングをしている会社に勤めているんですが、緊急事態宣言下で会社に出社したのは1か月のうちたった2回だけ。もともと会社はオフィス規模の縮小を目指していたので、緊急事態宣言が開けた後も、テレワークを推奨しています。実家の岩手には今は帰ることができませんが、高齢の両親も心配ですし、会社もテレワークを推奨しているので、このまま実家にUターンすることも視野に入れています」(32歳男性)

 テレワークが可能な職種はIT関連などに限られている…。その固定観念も打ち砕いたのがコロナでした。仕事を辞めずに「地方移住」することができるのであれば、給料はそのままに、豊かな生活環境を手に入れられるというわけです。

 さらに、こんな質問もしてみました。

Q.理想とする「地方移住」のスタイルは?
家族みんなで定住 58.4%
都市部と地方の2拠点生活 34.6%
週末だけ移住 17.6%
家族だけ移住 7.8%
その他 0.8%

Q.「地方移住」する前にしておきたいこと
1人旅・旅行で訪れる 41.0%
2拠点生活 38.8%
テレワーク 33.8%
期間限定のプチ移住 30.6%
週末のみスローライフ 24.4%
農業体験などに参加 12.0%
ボランティア・地域協力隊への参加 10.4%
その他 0.4%

平日は都市で働き週末は地方に住む、2拠点生活が増える?

 これらのアンケート結果で注目すべきは2拠点生活への興味の高さ。都市部と地方部の双方に生活の基盤をつくり、平日は都市部で働き、週末は地方部に住む、デュアルライフという発想は、若者を中心に浸透しつつあります。

「いきなり移住するのは不安なので、静岡県で副業がてら起業することを目指しています。今の会社とも良好な関係を築き、コンサル的な立場で仕事をもらうよう交渉。今秋からは同じ給料で契約社員として雇ってもらい、月に4回だけ出社。あとは静岡で家族と過ごしながら、別の仕事をしようと思っています」(29歳男性)

 こうした2拠点生活という柔軟な考え方を後押ししているのが今回のコロナです。上記の男性の会社では、正社員を減らす方向に進んでいると言います。「なら、自分も会社にしがみつく必要はないかな」と本人は話していました。

 東京に住むメリットはこれまで「地方よりも賃金が高い」「文化的施設が多い」という点でした。しかし、本社機能の移転(そもそも廃止)や在宅ワークの推奨によって、どこにいても同じ仕事ができるようになりつつあります。

 また、文化的な部分においても、オンラインイベントが広まれば、わざわざ東京にいる必要はないでしょう。今すぐに「東京一極集中」が解消され、地方移住が加速するとは思えませんが、これらのアンケートからもわかるように「2拠点生活」を経て、地方で暮らすという生き方を1つの選択肢としてあげている若者が増えつつあることは、今後も注視すべきなのかもしれません。

<取材・文/カラふる編集部>