たまたまイベントで訪れた町を気に入り、地域おこし協力隊として移住した門馬由佳さん。でも、活動を始めた当初は地域の人との関わり方に苦労したそう。そんな彼女に転機となった出来事を振り返ってもらいました。
地域の人との関り方に悩んだ1年目。自然な会話が状況を変えた
岩手県西和賀町(にしわがまち)で、地域おこし協力隊として活動中の門馬由佳です。現在、協力隊3年目。「地域のPR」というテーマで、ふるさと納税の企画や、販売のお手伝い、情報発信などをとおして、お菓子屋さんや農家さんや養蜂家さんなど町内事業者のみなさんと関わる活動をしてきました。最近は、動画制作にはまっていて、現場に行って撮影したり、1日ずーっとパソコンとにらめっこしたり…そんな日々を送っています。
いちばん好きなのは、事業者さんとお話している時間。他愛ない会話のなかには、「協力隊の活動として関わりたい!」と思うこともあり、大切にしている時間です。
移住して1年目のこと。「ふるさと納税担当よろしくね」と、まずはふるさと納税返礼品を出品していただいている事業者さんへ挨拶回り。挨拶は行ったものの、さてどうしよう!? 自分自身もまったくのふるさと納税初心者だし…。正直どうしていいかわかりませんでした。
「地域の人とどう関わっていけばいいの!? なにしたらいいんだろう?」
一時期、ひたすら机の上だけで、調べものや事務仕事をする日々があり、そんな時間を過ごしていると「なんのために協力隊になったんだっけ?」と、もやもやすることもありました。
転機は、「ふるさと納税の発送のお手伝いに来てよ」と言われて、とある事業者さんのところに通うようになったこと。梱包しながら、ふるさと納税のこと、町への思い、「こうしたい・ああしたい」という要望を聞くようになりました。そして、少しずつ思うようになったのです。「なにかできることありますか?」って聞くのではなく、会話のなかから自分にできることが見つけられるんじゃないか、と。
それから、用事があってもなくてもお店に行ってみたり、なにかイベントがあるときはお手伝いに行ってみたり、とにかく会いにいくこと、なにかを一緒に過ごす時間を増やしたいと思うようになりました。
かしこまって質問すると誘導尋問みたいになってしまうけれど、自然の会話を通して、自分が知らないことを知ることができたり、「●●してみたいですね!」「●●できたらいいですね!」という話ができたり。
それが、すべて今の活動につながっている気がします。
協力隊仲間に刺激を受けたり、励ましてもらったりの3年目
岩手県では28自治体で201名、全国では5万349名の協力隊が活動しているそうです(令和2年3月27日 総務省の資料より)。同じ「地域おこし協力隊」と言っても、受け入れ先の自治体によって運用がさまざま。活動の内容、時間の使い方、活動費の使い方、サポートなどなど…。雇用形態も、自治体の役場に籍を置く場合もあれば、業務委託として仕事を受ける場合もあります。中間支援組織が、役場と協力隊の間に入りサポートしているところもあるそうです。活動内容も、農業や、カフェなどの起業、地域支援、情報発信などなど多種多様。協力隊の時間の過ごし方は、人それぞれです。
「隣の芝生は青く見える」ではないですが、ほかの協力隊がよく見えるときも正直あります。「あそこは受け入れ体制しっかりしてる」「いい活動してるな」って。とくに1年目は、そう思うこともありました。
でも、3年目を迎えて思うことは、できることを、ひとつずつ積み重ねていくことの大切さ。できることを、ひとつひとつ大切にしていくことの尊さなどです。
総務省の制度で『地域おこし協力隊』として活動できるのは最長3年なので、今年が協力隊ラストイヤーになります。協力隊仲間と「ラストイヤーだね、なにしてる?」と近況報告をしながら、お互い刺激を受けたり励まし合ったりしています。この間は、協力隊仲間の家のリノベーションのお手伝いに行きました。
なにより、仲間がいると楽しいし、お互い同じ移住者なので本当に心強いなぁ、とあらためて感じます。
<文/門馬由佳>
岩手県西和賀町の地域おこし協力隊で活動中。東京都出身。イベントで西和賀町を訪れ、豊かな自然と温かな人に魅力を感じて、同町の協力隊に参加している。