アートなゴミ処理施設。広島市環境局中工場はコスプレイヤーにも人気

近年アートの発信地として注目が集まっている瀬戸内エリア。そんな瀬戸内エリアにある、ゴミ処理施設とアートが融合したスポットを、広島在住のパーティスタイリスト浦岡裕子さんが紹介します

建築家谷口吉生さん設計の広島市環境局中工場

広島市環境局中工場

 瀬戸内海と大小合わせ1000余りの島々でつくり出す風景が多島美と称賛され、瀬戸内の大きな魅力の1つに。3年ごとに開催される瀬戸内国際芸術祭をきっかけに、現代アートが根付いたエリアでもあります。

 そんな瀬戸内エリアにある広島のゴミ処理施設を訪れてみました。施設の名前は「広島市環境局中工場」。河口の埋め立て地につくられ、被爆100周年となる2045年に向けて、優れたデザインの社会資本を街並みに加えていこうとするプロジェクトの1つとして2004年に完成。設計は建築家の谷口吉生さんで、ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館やGINZA SIXなど国内外の様々な建築を多数設計されています。立地は広島市内にある約4kmにわたる吉島通りという通りの終点。
 
 じつは、この吉島通りの起点は世界に知られた広島平和記念公園であり、その設計は谷口吉生さんも学んだ丹下健三さんです。師弟2人の作品が1筋の通りの起点と終点でつながった壮大な建築物のように感じます。

たくさんの人々が思い思いにくつろぐ場所に

広島市環境局中工場

 早速訪れてみると、ゴミ処理施設に隣接された公園へ釣竿やピクニックセット、簡易テントを持って歩いている人たちがたくさん! その先には瀬戸内海に面した明るい緑のじゅうたんで帽子を顔に乗せ芝生に寝転がっている男性、釣りやフリスビーにいそしむ親子、犬と散歩をする人、そして光る海と平和な光景が続いています。これが広島平和記念公園(原爆ドーム)を起点とした通りの最終地だと思うと感慨深いものがあります。

広島市環境局中工場

「ゴミ処理施設の横でくつろぐ人々」とは、少し違和感のある言葉ですが、その施設が一般に抱きがちなイメージとかけ離れているため、実際に行ってみるとじつに心地よい空間に。大きな処理施設をつらぬくシンボル空間となるエコリアムという名のガラス張りの通路は2階にあり、公園から階段を昇って進んでいきます。ここは誰でも予約なしで入ることのできる場所。

 美術館にでも行くような気持ちで階段を昇ります。

サイバーな雰囲気でコスプレーヤーの聖地に

広島市環境局中工場
現代アート美術館につながるかのようなシンプルモダンな階段を昇る

 エコリアムにあるのは「ガス吸収棟」。ゴミを燃やした際に出る有毒ガスをきれいな空気に換える装置です。ガラス張りの装置には植栽もしてあるためにまるで現代アートのようですが、365日、広島の人々の暮らしを支えて稼働している重要な装置。ですが建築美のためにどこかサイバーチックで、ゴミ処理装置に魅せられる人が続出。

広島市環境局中工場

 実際そんな空間が撮影に最適だということでコスプレーヤーたちの撮影の聖地にもなっているのだとか。この日も撮影をする人たちを発見!

 通路を南に抜けた先には、広島湾が望める展望デッキが登場。ここから見られる光景はデッキのフレームと空と瀬戸内海でひとつの作品になっているかのような清々しさで、瀬戸内を訪れる際のアート観光の穴場にもなるのではと思うほど。

広島市環境局中工場
ゴミ収集車の断面を魅せる展示に

NIMBY施設への問いかけ

広島市環境局中工場

 NIMBY施設というものをご存じでしょうか。NotInMyBackYardのそれぞれの単語の頭文字を集めたもので「わが家の裏にはやめて!」と訳すことができます。環境負荷の発生や地価の下落、気持ち的な嫌悪感や不安感につながるといわれ、いわゆる迷惑施設とカテゴライズされる施設。代表格には産業廃棄物処理施設やゴミ処理施設などがあげられますが、どれも人間が地球で生きていくには不可欠の施設で、どこかには置かずにおけないもの。
 
 そこで、その不安感を払拭する工夫として外観を工夫して、一見その施設には見えないようにしますが、設計者の谷口さんは都市に必要なものとしてしっかりアピールするべきと考え、あえて金属感を前面に出した工場らしい外観に。ただ工場としたのではなく、装置や空間の魅せ方で「ゴミのこと」「環境のこと」を自然に考えていくようなものにしたところがすばらしい! 
 
 現代アートは、その斬新な表現方法に加え、現代社会が抱える問題をひも解きアートを通して歴史や社会、人の生き方や世界のあり方を考えさせられるもの。まさにこのゴミ処理施設そのものが現代アートだと思わずにいられないのです。
 現代アートが根付いた瀬戸内に相応しい施設で、多くの人に誇れる広島の芸術だなと感じています。広島駅からバスで1本のアクセスなので、ぜひ瀬戸内海を臨みに、ゴミ処理施設へ訪れてはいかがですか。

<写真:文/浦岡裕子>

浦岡裕子さん
広島在住。パーテイスタイリスト/バースデープランナー、harenohi_factory主宰。季節の行事やパーティイベント、子どものお祝いなど生活の中にあるハレの日を、キオクとキロクに彩りスタイリングすることをテーマに、イベント装飾のアイテム製作やWEBへのコラム掲載、パーティスタイリングやアイテム製作の誌面協力、子どもと親向け店舗での季節の装飾を担当するなどの活動を行う。