地方にはさまざまな民芸品がありますが、広島の「宮島張り子」はビビッドな色使いとモダンな配色のかわいい郷土玩具。その魅力を広島在住のパーティスタイリスト・浦岡裕子さんが紹介します。
ポップな色づかいがかわいい宮島張り子
その地に暮らすことがなかったら出会わなかった人やモノとの出会い、体験があります。転勤族のわが家では、各地での暮らしを象徴するような逸品を集めるようになりました。
今住んでいる広島で見つけたのは民芸品の「宮島張り子」。張り子は、竹や木などで組んだ枠や粘土でつくった型に紙などを張りつけ、成形する造形技法のひとつで、平安時代に中国から技法が伝わって以来、日本各地の郷土玩具として親しまれています。独特の質感や絵具の色合いが魅力で、なかでも宮島張り子はポップな彩色が独特。初めて見たときはインテリアショップのおしゃれな海外のディスプレイ小物かと思ったほど。
世界遺産の宮島でつくられる張り子
オレンジや朱、青、緑などのビビッドカラーの絶妙な組みわせとモダンな模様の宮島張り子に心引かれ、早速宮島へ足を運びました。サクッと世界遺産へ行けてしまうこの距離感は広島に住んでいるからこそ。十数分フェリーに揺られた後、宮島の砂道を歩きます。
宮島張り子は、宮島のすべてのお土産屋さんにもあるのかというとそうではなく、限られたお店に、少しずつさまざまな種類の張り子が並んでいます。
とくに品ぞろえがいいのは「博多屋」さん。知名度も高い宮島杓子、銘菓もみじ饅頭の製造をはじめとして、宮島文化が未来につながるようなデザインプロダクトの開発も行い、宮島の文化の担い手としても有名なお店です。
ひとつずつ手づくりされている宮島張り子
一般的な張り子は、木型などの外側に紙を貼り重ねてつくられますが、宮島張り子はその逆で内側に紙を貼り重ねてつくられる独特な技法。そしてじつはこの張り子たちはすべて、宮島張り子唯一の職人である田中司朗さんの手によってつくられています。とても手間のかかる民芸品なので、店頭にもどの種類が並ぶかはそのとき次第、お目当てのものに出会えたらラッキーとのこと。来店者のなかには、まとめて数種類購入されていく人もいるのだとか。
宮島張り子のモチーフで多いのは鳥
宮島張り子のモチーフとしてとくに多いのは、なんといっても鳥です。瀬戸内の温暖な気候を好んで宮島に住みつくさまざまな種類の鳥と人との距離の近さが、鳥モチーフの多さに関係しているのだそう。
私も鳥を、と思いましたが、せっかくなので自分の干支でもありデザインの気に入ったネズミを選びました。額には厳島神社のシンボル「大鳥居」のモチーフが描かれており縁起のよさも感じられます。
家に飾ればポップな色合いがインテリアのアクセントにもなり、福を呼び込みそうな宮島張り子。広島を訪れた際にはぜひ、一期一会の宮島張り子との出会いを楽しんでくださいね。
<写真:文/浦岡裕子>
【浦岡裕子さん】
広島在住。パーテイスタイリスト/バースデープランナー、harenohi_factory主宰。季節の行事やパーティイベント、子どものお祝いなど生活の中にあるハレの日を、キオクとキロクに彩りスタイリングすることをテーマに、イベント装飾のアイテム製作やWEBへのコラム掲載、パーティスタイリングやアイテム製作の誌面協力、子どもと親向け店舗での季節の装飾を担当するなどの活動を行う。