石窯で焼くピザが絶品。摘みたての野草が食べられる沖縄のカフェ

なかなか出口の見えないご時世。こんなときこそ、昔ながらの知恵に目を向けて、自然の力を味方につけてみませんか。今回は、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスターなど食に関する資格をもつ津波真澄さんが、自然の力をチャージできる沖縄の野草カフェをご紹介します。

摘みたての野草が食べられるカフェ

野草カフェ

 沖縄に自生する野草たちには、体の調子を整えてくれるもの、なにかあったときの治癒に役立つものなど、先人たちが見つけてくれたパワーをもつものがたくさんあります。

 そんな野草を食べたくて、「ヤソウカフェYAMACHA」に行ってきました。沖縄の野草を知ってほしいという思いから、10年前にオープンしたカフェです。

 野草をたくさん食べたいと相談したところ、オススメされたのは「自家製紅豚ベーコンと旬の野菜のピザ」とのことでしたので、注文しました。

野草ピザ

 トッピングにする野草は、注文を受けてから庭に出て摘んで来てくれるので、新鮮そのもの。この日のトッピングは、ヒユナ(アマランサスの一種)、長命草(ボタンボウフウ)、センダングサ、オオタニワタリの新芽。生地にはあらかじめクミスクチン、シマグワ、カンダバー(サツマイモの葉)、センダングサ、長命草が練り込まれているそうですが、言われないとわからないほどクセのない味で、おいしく野草パワーをとり入れることができます。

 クセを感じさせないのは、お客さんと真摯に向き合う店主のアイデアから生まれたものです。開店当初は、あらゆるメニューで注文を受けてから庭に出向き、新芽を摘んで出していたのに、残されてしまうことがしばしばあったそうです。

「せっかく野草カフェに来たのに、それは悲しすぎる。もっと気軽に野草に親しんでもらえる方法はないだろうか」と考え、生地に練り込んだり、発酵と組み合わせたりすることで、見た目にわからないようにしたのだとか。その結果、完食してもらえるようになり、食べて体の調子がよくなった気がする、便秘が解消した、などうれしい声が届くようになったそうです。知らないうちに元気をもらえるのは、ありがたい限りです。

おすすめしたい沖縄の野草ヒユナとクミスクチン

野草ヒユナ

 今回の料理でいただいた野草のうち、沖縄に来たらぜひ試してほしい野草を2種類ご紹介します。まずはヒユナ。

 アマランサスの1種で、最近店頭でもよく見かけるようになりました。その豊富な栄養素から、「奇跡の野菜」とうたって販売しているところもあるほどです。沖縄では、一時期スーパーフードとして注目を浴びた種子ではなく、葉っぱの部分が栽培され、流通しています。免疫力を高めたり、骨を強化したりする効果が期待できるといわれています。

 次に、紹介するのは興味深い形状の可憐な花を咲かせる「クミスクチン」。

野草クミスクチン
写真提供:山川健二さん

 マレー語やインドネシア語で「猫のひげ」を意味する言葉です。何本も伸びる雄しべの形状が、まさしく猫のひげのよう。和名はそのまま「ネコノヒゲ」。お茶にして飲むことが多い野草ですが、料理に応用することもでき、今や沖縄ではうっちん(ウコン)、グアバと並ぶ、3大野草の1つと考えられています。

 もともとは沖縄には自生していなかった野草で、その昔導入されたあと、見た目に似つかわしくない強靭な雑草魂で野生化したようです。カリウムが多く、体内の余分な熱や水分を排出してくれることから、腎臓病や関節炎、リウマチなどへの効果があるとされています。

薪をくべた石窯で焼いたピザは格別なおいしさ

ピザの石窯

 さて、こちらのカフェでは、ピザの準備ができたら焼くのは庭先にある石窯です。熱源はまき。ご飯も毎日、まきをくべたかまどで炊いているとか。ガスや電気を使わない「火」のおいしさは格別なものです。自然に囲まれたスローライフ。昔ながらの知恵がたくさん詰まったメニューの数々。とかく時間に追われがちな日常ですが、たまにはのんびりと、自然の力をいただきに行ってみませんか。

<取材・文>津波真澄

津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。10年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催し、企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第4位(2nd Runner-up)を受賞