東京都内でおいしいキノコがとれる。旬の味覚ツアーに参加してみた

最近、市販のものより断然おいしい天然のキノコを求めて、キノコ狩りに出かける人が増えています。今回は山登り歴10数年のライター寺川尚美さんが、都内・奥多摩周辺で天然のキノコ狩りができるちょっとハードなツアーに参加。自然と触れ合いながら、キノコの魅力を再発見してきた様子をご紹介します。

キノコに精通するガイドの案内で道なき道へ

奥多摩湖
東京都の奥多摩周辺にはキノコ狩りスポットが点在

 東京でキノコ狩りができるという情報のもと、参加したのは、東京都福生市でネイチャーガイドと居酒屋などを運営する「山吉擬似餌店(やまよしぎじえてん)」の秋限定「天然キノコ狩りツアー」です。奥多摩周辺の山々を歩きキノコ狩りスポットを発見した、店主の山岸 努さんが案内してくれるので安心。

 店舗や奥多摩駅、奥多摩湖付近で集合し、車(ガイドの車に同乗も可)で数か所巡ります。ちなみにその日、家を出たのはまだ暗い朝の5時。通常の日帰り登山と同様、電車の始発に近い時間でした。

キノコ狩り
ガイドの案内で山の斜面を散策

 早速、天然キノコを求めて山を散策。キノコが生えているポイントは、登山道から少し外れた斜面がメインのため、滑りづらいトレッキングシューズを着用。道なき道を進み、気を抜くと転んでしまうような場所です。

天然キノコの見分け方や採取方法も的確にアドバイス

ガイド
肉厚で弾力性のある「ヒラタケ」を発見

 日当たりや風とおしがよく、適度な水分があるところを好むキノコ、倒木など朽ち木を好むキノコ、生きた樹木の根と共生するキノコ、ある特定の樹種を好むキノコなど種類によって発生する環境が異なるのがおもしろいところ。倒木や切り株などに生えるものと、生きた樹木とともに共生するキノコがあるそう。

 自然に生えるキノコのうち名前が付けられているものは約半分、食べられるものは全体の1割と言われています。素人が食用かどうかを判断するのは難しいため、キノコを発見したらガイドに確認してからの収穫が必須。

シャカシメジ
見事なシャカシメジを収穫

 お釈迦さまのような姿をしていることから名づけられた「シャカシメジ」を発見。肉質がもろくて壊れやすいため、傘が壊れないようそっと採取するようガイドからアドバイスが。傷みやすいため市場には出回りにくいキノコのひとつで、風味や歯応えがよく、汁物や炒め物にぴったりです。

希少なキノコの発見に気持ちも高まる

コウタケ
希少な「コウタケ」を発見

 ミズナラ原生林でのマイタケをはじめ、赤松混成林でのホンシメジ、シャカシメジ、シモフリシメジ、コウタケ。カラマツ林でのハナイグチなど、独自開拓でキノコが顔を出すポイントを探索。

「初秋から晩秋にかけ、気候に左右されながら発生するキノコ達を追い求めて、ときには極秘ルートにご案内することもあります」と山岸さん。

 そんな山岸さんのナビゲートで、コウタケ、クロカワ、ヤマブシタケなど希少なキノコの採取にも成功。傘の直径が20cm以上になることもある「コクタケ」は、一部の山にしか生えない貴重な天然キノコ。しょうゆの香ばしさに似た強い香りを放ち、歯切れもよく、濃厚なだしが出るのが特徴です。

ヤマブシタケ
幻のキノコと呼ばれる「ヤマブシタケ」も

 細く柔らかい針で覆われたフワフワした変わったキノコ「ヤマブシタケ」。山中で修行をする修験道の道者・山伏(やまぶし)が、胸につける飾りの梵天に似ていること似ていることから名づけられたそう。食べると、柔らかい食感で、汁物にすると隙間に入り込んだ汁がジュワーっと染み出てくる味わいが人気。どちらも料亭などで使用されるぜいたくキノコです。

採れたての天然キノコの滋味を堪能する

キノコのアヒージョ
コウタケのアヒージョ

 収穫したキノコは、山岸さんが営む「居酒屋山吉」で味わうこともできます。天然キノコは賞味期限が短く、下処理も欠かせないため、料理店におまかせするのがおすすめ。コウタケのアヒージョ、シャカシメジと鮭のホイル焼き、ハナイグチと厚揚げ煮付けなど、収穫したキノコをおいしく味わる料理に仕立ててくれます。

キノコ鍋
キノコたっぷり贅沢鍋

 香り、歯応え、うま味が堪能できる天然キノコ。自ら山道を歩いて収穫したキノコは味わいも別格です。キノコが主役の鍋は、ろばた焼きでお酒とともに楽しんでも。収穫したキノコを持ち帰る場合は、掃除や下処理、料理の方法を教えてくれます。

 今回のキノコ狩り、山にいた時間はお昼休憩を含めて約6時間。斜面を上がったり下がったりしつつトレッキングも楽しめました。森林の中でマイナスイオンに癒されながらのキノコ狩りを満喫した後は、日帰り温泉に立ち寄るのもいいですね。

 来季の「天然キノコ狩りツアー」は2022年9月末~10月末を予定。また、春にはタラの芽や山ウドなど「春山の山菜採りツアー」も開催予定しているそうです。

*食べられるキノコと毒キノコを見分けるのは、とても難しい作業です。キノコを採取する際には必ず専門家の指導に従ってください。また、私有地などでのキノコ狩りは禁止されています。この記事で紹介したキノコ狩りは、山の持ち主の許可を得て行っています。

■ 山吉擬似餌店(やまよしぎじえてん)
TEL 042-513-3165

<取材・文>寺川尚美