盛岡市民の台所。年間300日営業する日本最大級の「神子田の朝市」

ご当地食材を生産者から直接買える直売所は全国各所で見られますが、盛岡市には大規模な「朝市」があり市民の台所として親しまれています。岩手県出身で元CAの女優、藤原絵里さんが紹介してくれました。

立ち退きのピンチから生まれた日本最大規模の朝市

朝市で花を買う筆者

 盛岡の台所として親しまれている、盛岡市神子田(みこだ)にある朝市。毎日早朝から開催され、年間300日以上も営業している、全国でも珍しい朝市なんです。

 敷地内114の区画に、地元、盛岡で採れた新鮮な野菜や果物、色鮮やかな花、心を込めてつくられた総菜や郷土料理のお店の数々がところ狭しと並んで、活気にあふれています。

朝市で売られるりんどう

 1977年から開催されている朝市は、元は生産農家の直売所で、当時から市民や生産者の暮らしを支える大切な存在でした。それが、近くに「盛岡市中央卸市場」ができたことによって立ち退きを迫られます。盛岡市内に直売所がなくなってしまうという大ピンチを救うため、有志で組合を結成し、新たな場所で直売を始めたのが、神子田の朝市の始まり。その後は規模も拡大し「盛岡市民の台所」と呼ばれるまでになりました。組合形式での朝市としては、日本最大規模だそうです。

産直野菜

 生産者から直接お安く買えるのはもちろん、地元の人たちと触れ合えるのも魅力のひとつ。盛岡市民だけでなく、観光客も多く訪れる盛岡の風物詩となっています。

 じつは、ここは筆者の地元で、中学生の時は朝市を経由して学校へ通うのが近道でした。おじいちゃんやおばあちゃんたちが、あたたかく挨拶をしてくれた思い出の場所なのですが、こんなに珍しく貴重な朝市だったとは知りませんでした。

お惣菜

 筆者はコロナが始まる前に取材で行ったのが最後になりますが、出店者さんとお客さんの交流の場であるのはもちろん、出店者さん同士の憩いの場でもあるように感じました。

絶対に食べてほしい朝市の地元フード

ひっつみのお店

ひっつみ
 郷土料理のひっつみ。関東ではすいとんと呼びますが、すいとんより薄く大きく、モチモチつるっとしているのが特徴です。家でも簡単につくって食べられるように、セットを買って行かれる人も多いのですよ。

ひっつみをゆでる様子

ラーメン
「朝からラーメン?!」と驚かれる人も多いのですが、朝早く、特に冬の寒い日に朝市に行くと、香りと湯気に誘われて絶対に食べたくなってしまうのです。昔ながらのしょうゆラーメンで、意外とさっぱりしていてハマりますよ。プラス100円でワンタン麺にするのもオススメ。

きりせんしょ
おもちの中に黒蜜とクルミが入っている盛岡の郷土菓子です。お茶にはもちろん、コーヒーにも合うんですよ。イートインコーナー(屋外)もあるので、その場で食べても良いですし、3時のおやつに持ち帰るのもOK。

旅行中に現地の方と触れ合えるのは貴重な機会ですし、ぜひ、足を運んでみてくださいね。

<取材・文/藤原絵里>

藤原絵里さん
俳優。岩手県盛岡市出身。23年間、岩手県で生まれ育つ。短大を卒業し、地元の温泉旅館の仲居に。着つけや日本文化に興味をもつ。その後、カタール航空のキャビンアテンダントへ転職。約4年、国際線に乗務し世界44か国を訪れる。海外での経験を通して、日本のよさ、岩手のよさを再認識する。現在は、女優として、映画やミュージカルに出演。代表作は速水萌巴監督『クシナ』、榊英雄監督『生きる街』など、多数。日本や東北の魅力を伝えられる作品にかかわっていきたいと思っている。