富山の南西端にある山深い豪雪地帯・五箇山(ごかやま)にある合掌造りの集落。今回は、世界文化遺産に登録されている相倉集落と菅沼集落を巡る旅をご紹介。合掌造りの家屋に泊まれば、日本の古きよき時代にタイムスリップできそう。
2つの合掌造り集落には見どころが満載
1995(平成7)年に、岐阜県の白川郷とともに、世界文化遺産に登録された、五箇山の相倉集落と菅沼集落。今もそこで人々の生活が営まれ、合掌造り家屋群を中心に、昔からの「日本の原風景」を守り続けていることが評価されたそう。
標高約400mの細長い大地に広がるのが相倉合掌造りの集落。現存する20棟の合掌造り家屋の中でもっとも古いものは17世紀にまでさかのぼると考えられています。集落を一望できる展望エリアや、合掌造り家屋を利用した資料館、飲食店、お土産屋さんを散策するのも楽しいものです。
そして、庄川沿いにたたずむ菅沼合掌造り集落には9棟が現存。江戸時代末期から大正時代に造られたものまで、時代の変遷がうかがえます。江戸時代の主産業を伝える「塩硝の館」や「五箇山民俗館」などで、五箇山の歴史と伝統を学べる施設に立ち寄っても。
お昼ご飯は滋味豊かな山里の味をいただく
清流に育まれた川魚、季節ごとに実る山菜や野菜など、自然豊かな五箇山はグルメも楽しみにひとつ。「五箇山豆腐・手打ちそば 拾遍舎(じっぺんしゃ)」では、毎朝石臼で挽いたそば粉を手打ちした細くてコシのあるそばと、硬さが特徴的な地元伝統の五箇山豆腐、旬な山菜や野菜の天ぷらを。
「道の駅上平ささら館」の一角で営む「五箇山旬菜工房 いわな」は、全国でも珍しい、イワナ料理を提供する食事処。店内の水槽から水揚げしたばかりのイワナをすしや塩焼きして提供。とくに、ピンク色に透き通るイワナのにぎりは必食です。
懐かしく力強い佇まいが特徴的な「村上家」は必見
五箇山の中心に位置する国指定重要文化財「村上家住宅」にも立ち寄りたいもの。約350年前の建築当時の様式を伝える貴重な合掌造りの家屋で、多くの古風、古式の遺構が残る全国でも希少な建造物です。合掌造り家屋は五箇山・白川郷で見られる独特の建築様式。「合掌」は、左右の掌を合わせた腕の形に由来するとも。最大の特徴は三角形の茅葺屋根。雪を落としやすくするため、60度もの急勾配になっていて、釘は一切使わず組み立てられています。
オリジナルの和紙づくりで、五箇山伝統に触れる
五箇山の特産品のひとつが、400年以上の歴史をもつ五箇山和紙。「合掌造りの大家屋の家々では多くの使用人を雇って、夏は和紙の原料・楮(こうぞ)の栽培、冬は紙漉きと、和紙を製造していました。集落には和紙漉き体験ができる施設が3か所あるので、ぜひ挑戦してみてください」と五箇山総合案内所の藤井さん。「道の駅 たいら 五箇山和紙の里」では、職人さんにコツを教えてもらいながら、オリジナルのハガキづくりができます。所要時間は約20分、3枚で700円。
1日1組限定、世界文遺産の宿に宿泊
五箇山の最大の魅力は、世界遺産の合掌造りの家屋に泊まれること。それが、相倉にある合掌造りの「民宿・展示館 勇助」。池端ご夫婦が温かく迎えてくれる宿では、囲炉裏の火を見ながら、相倉での暮らしや合掌造りについて話を聞いたり、五箇山の郷土料理や地酒を味わうことができます。1日1組限定なので、ほかのお客さんに気兼ねすることなく、のんびり過ごせるのもうれしいポイント。2階の展示室には養蚕業を営んでいた当時の様子などを再現した展示もあります。
集落までは、高岡駅から相倉・菅沼・白川郷を結ぶ「世界遺産バス」が運行中。昔は秘境の豪雪地帯といわれた山深い里山がぐっと身近になりました。豊かな自然に囲まれた素朴でのどかな景観に癒されてみませんか。
■南砺市観光協会 五箇山総合案内所
富山県南砺市下梨754
TEL: 0763-66-2468
■五箇山 和紙の里
富山県南砺市東中江215
TEL: 0763-66-2223
■民宿・展示館 勇助
富山県南砺市相倉591
TEL: 0763-66-2555
取材協力/南砺市観光協会 五箇山総合案内所
<取材・文>寺川尚美