とにかく猫だらけ。世界中から猫好きが訪れる山口県「雲林寺」

[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第30回:池田モト アナ(山口県)]

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は、NHK山口放送局でキャスター・リポーターを務めていた池田モトアナが山口県の「雲林寺」をレポートします。

猫好きがこぞって訪れる「猫好きの聖地」

山口県萩市にある「栖月山雲林寺(せいげつざんうんりんじ)」

 山口県萩市にある「栖月山雲林寺(せいげつざんうんりんじ)」。市街地から約25kmほど離れた山あいのひっそりした場所にあります。じつはこのお寺、「ネコ寺」という愛称で親しまれ、日本中・世界中から猫好きが集まる、いわば「猫好きの聖地」となっているんです。一見すると普通の小さなお寺のようにも見えますが…入ってみるとその理由が分かります。

猫好きにはたまらにゃい!想像以上に猫だらけ

本堂の縁側にチェンソーアートの猫

 お寺に一歩足を踏み入れれば、猫、ねこ、ネコづくしのにゃんとも不思議な空間。山門や本堂の縁側をはじめ、いたるところにチェンソーアートでつくられた大小さまざまな大きさの猫たちが座っています。どれもチェンソーアートで世界一になった山口県のチェーンソーアーティスト林隆雄さんの作品で、今にも動き出しそうな本物そっくりにつくられているものも。

猫になって写真を撮れる「猫かぶり」

 自らも猫になって写真を撮ることができるチェンソーアート「猫かぶり」も人気です。(※「猫かぶり」は2021年12月現在、コロナ感染対策のため中止しています。)

所狭しと並ぶ猫関連のもの

 それだけではありません。招き猫や人形、ポスター、猫が登場する本も所狭しと並んでいます。角田慈成住職によると、お寺にある猫にまつわる品々は数年前に数えた時点でなんと600点以上もあったそう。今でも増え続けていて、「数えることは断念した」と話していました。

お寺で飼われている猫。左がアウアウ、右がシマ。

 さらにお寺では本物の猫ちゃんも飼われているんです。アウアウ(写真左)、タビ、シマ(写真右)、クロマメの4匹が気ままに暮らしています。運がよければ出会えるかもしれません。

ここでしか買えない!猫モチーフの授与品&グッズ

ここでしか買えない猫グッズ

 お寺でお参りをしたらほしくなる授与品も、もちろん猫だらけ! 定番のおみくじやお守り、御朱印も猫好きなら全部ほ欲しくなりますよね。

自由に顔や模様を書き込める絵馬

 白い猫のベースに、自由に顔や模様を書き込める絵馬も人気で、参拝した皆さんの個性溢れる猫たちが並んでいました。どれも雲林寺でしか手に入らない貴重なものばかりです。ほかにも、お寺とは思えないほどオリジナルグッズも豊富に用意されています。

住職や奥様がデザインしたTシャツなど

 Tシャツやエコバック、缶バッチやステッカーまでありました! すべて角田住職と妻がデザインしています。どこかふてぶてしくもかわいらしい、表情の猫ちゃんたちが描かれた実用的なグッズは、旅の思い出としてお土産にぴったりです。

漫画でわかりやすくネコ寺の由来を解説

猫町伝説を紹介するマンガ

 気になるのが、なぜ雲林寺がネコ寺と呼ばれ、こんなにも猫づくしのお寺になったのか。お寺で無料配布されている「招福堂縁起絵巻」の中に漫画で分かりやすく紹介されていますが、萩市に伝わる「猫町伝説」と関係があるんです。

「その昔、長州藩の藩祖・毛利輝元に仕えていた長井元房という家臣がおりました。元房にはとてもかわいがっていた猫がいましたが、元房は輝元が亡くなると後を追って自ら命を絶ってしまいます。残された猫は元房の死を悲しんで墓のそばから離れようとせず、やがて、猫は元房の墓の前で自ら舌をかんで死んでしまいました。その後、夜になるとあたりに猫の鳴く声がするようになります。猫をあわれんだ天樹院の僧が供養すると、不思議とその声はおさまったのでした」

 この伝説に登場する天樹院は、現在は輝元の墓所が残るのみの廃寺となっており、その傍らで元房も眠っています。雲林寺はその天樹院の末寺であり、長い間、空き寺となっていましたが、1996年に現在の角田慈成住職が受け継ぐことになりました。

 その後、角田住職が、親族の収集していたたくさんの招き猫を譲り受け、雲林寺に展示。すると猫の置物などを持ってこられる参拝者が増えていったため、雲林寺では天樹院の住職にならい、猫の魂を慰めようと発願し、猫好きが集まる「ネコ寺」となったのです。

世界中の猫好きから愛される「雲林寺」

参拝者が自国にシールを貼る世界地図

 今や日本中・世界中の猫好きから人気を集めている雲林寺。その人気ぶりがよく分かるのがこちらの世界地図です。どこから来たかがわかるよう、訪れた人にシールを貼ってもらうための地図なんですが、アジア、ヨーロッパ、さらに地球の裏側ブラジルからも猫好きが訪れているんです。猫好きの皆さんのパワーにびっくり!

外国の文字もある参拝者の自由記載ノート

 参拝者の皆さんが自由に書き込めるノートには、子どもたちが書いたかわいい猫の絵や外国語のメッセージも書かれていました。ピーク時は年間およそ1万1000人が訪れていましたが、新型コロナウイルスの流行により2020年3月には拝観を全面中止に。2021年12月現在、境内の散策は自由にできるようになっていますが、本堂の拝観は未だ中止のまま。全面的な解除には至っていません。

山門で記念撮影に使える「猫プラカード」

「世界中から訪れる猫好きさんから、さまざまな『ネコ観』を聞くことを楽しみにしていたので、そういった話ができないのはさびしい」と角田住職。

 直接的な交流は減ってしまいましたが、授与品の発送対応やSNSでの積極的な発信のほか、猫とアマビエを融合した「猫ビエ」、山門前で記念撮影に使える「猫プラカード」を設置するなど、コロナ禍でも雲林寺に親しんでくれる皆さんが少しでも楽しめるようにと、いろいろな工夫をしてきました。

 角田住職は「また雲林寺が来てくださった皆さんにとって楽しんでいただける場所になればうれしい。その思いだけです」と笑顔で話していました。多くの猫好きが、再び世界中から雲林寺に足を運び、猫に囲まれ、癒され、語らう。そんな日が1日でも早く戻ってくることを願っています。

雲林寺
栖月山雲林寺
電話番号08388-6-0307
住所 萩市大字吉部上2489

<取材・文・撮影/池田モト(地方創生女子アナ47)>

池田モト アナ
山口県出身・在住。大学卒業後、東京で人材系メガベンチャー企業のOLを経て、NHK秋田放送局でキャスターに。主にスポーツキャスターとして、出演だけでなく企画から取材、原稿作成も行う。その後、地元のNHK山口放送局でもリポーターを務め、生中継や生活情報、山口県内各地を訪ねるコーナー、ラジオニュースなど幅広く担当した。現在はフリーアナウンサーとして山口県を中心に活動中。第11代山口県観光フレンズにも就任し、県内外に山口県の魅力をPRしている。一児の母。

[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第30回:池田モト(山口県)]

地方創生女子アナ47
47都道府県の地方局出身女子アナウンサーの団体。現在100名以上が登録し、女子アナの特徴を生かした取材力と、個性あふれるさまざまな角度から地方の魅力を全国にPRしている。地方創生女子アナ47公式サイト