高級茶の代名詞・宇治茶の産地として知られる京都府宇治市にオープンした「お茶と宇治のまち歴史公園」。史跡の再現や宇治茶ミュージアム、体験プログラムなど宇治の歴史と文化を発信する新ランドマークをご紹介します。
宇治のまち・ひと・歴史・文化をつなぐプラットフォーム
京都府南部に位置する宇治市は、『古事記』や『日本書紀』の時代にさかのぼる歴史と文化が今なお息づくまち。平安時代には貴族の別荘地として栄え、その栄華は世界遺産・平等院でたどることができます。『源氏物語 宇治十帖』の舞台として親しんでいる人も多いはず。市の中心部を流れる宇治川に、豊臣秀吉が京都・伏見に陸路と水路を集約するため堤防(史跡・宇治川太閤堤跡)を築いた交通の要所としても歴史に名前を残しています。
現在にいたるまで宇治の名前を広く知らしめているのが、玉露や抹茶をはじめとした高級茶の宇治茶です。12世紀末に中国から伝来したお茶が13世紀初めに宇治で栽培が始まったことで、全国にお茶の生産が広まり、茶の湯の文化が隆盛することになりました。
2021年10月にオープンした「お茶と宇治のまち歴史公園」では、「宇治のまち・ひと・歴史・文化をつなぐプラットフォーム」をテーマに、宇治茶を中心に歴史の各時代をいろどってきた宇治の歴史と文化に触れることができます。
スケールのある史跡の復元や本物の茶園が見どころ
JR・京阪宇治駅からほど近い、宇治川のほとりに位置する「お茶と宇治のまち歴史公園」は宇治川太閤堤跡を整備したという、まさに宇治の歴史の中心地。公園や広場、史跡からなる屋外ゾーンの最大の見どころが太閤堤を復元したエリアです。
「人の手によって整えたとされる太閤堤の石積み護岸を高度な技術で復元し、迫力のある光景を楽しんでいただけます」(お茶と宇治のまち交流館「茶づな」・中畑伶威さん)
さらに、護岸が築造されてから埋没し、砂州が形成させていく様子を各エリアにわたって再現し、中世から近代にいたる宇治川の景観を令和の時代に体感することができます。
また、宇治川の中州(なかす)で営まれた茶園の景観を再現した「修景茶園」では、宇治に伝わる茶畑に覆いをかける「覆下栽培(おおいしたさいばい)」を間近に見ることができます。茶摘みの季節には、衣装を身に付けて茶摘みを体験できるプログラムも用意しています。
宇治茶の歴史と真髄に触れられる豊富な体験プログラムも用意
宇治観光の交流施設として設けられているのが「お茶と宇治のまち交流館・茶づな」。宇治の風土にぴったりの「茶づな」という名称は、公募で採用された宇治市内の高校生のアイディアによるもので、「宇治のお茶が1本のつなのように、たくさんの人と歴史をつなぐ」という願いが込められているそう。
無料ゾーンと有料ゾーンからなり、無料ゾーンでは観光案内や周辺の店舗情報コーナーなどまちめぐりの拠点として利用できます。宇治川や宇治の山々を一望できる展望テラスでくつろぐのもおすすめです。
有料ゾーンのミュージアムは2つのテーマからなり、宇治のお茶づくりをさまざまな角度から取り上げた「宇治茶の間」では、「宇治茶800年の歴史を映像や展示でわかりやすくご紹介します」(お茶と宇治のまち交流館「茶づな」・中畑伶威さん)。機械化が広まった現在も伝統のお茶づくりを行っている宇治茶の特徴や、お茶の味や香りへの科学的なアプローチ、お茶にまつわる文化について触れることができます。
宇治の歴史をくわしく知りたい人は「歴史の間」へ。記紀時代、平安京、戦国時代、近世と日本史を彩ってきた宇治について知識を深めましょう。
ぜひ参加したいのが、宇治茶やお茶をめぐる「もの」や「こと」を体験できるプログラム。日本茶インストラクターに学ぶ本場宇治の玉露の淹れ方教室や、茶道の先生による抹茶の体験教室、オリジナルの茶筒づくりや茶臼をひいての抹茶づくり、宇治の窯元による京焼絵付け体験など多彩なメニューを用意しています。
目の前に広がる茶畑や宇治の風景を見ながらお茶の文化をさまざまに楽しんでみてはいかかでしょうか。
体験プログラムのスケジュールと料金、申し込みは専用サイトから。
取材・写真協力/「お茶と宇治のまち歴史公園」 取材・文/土倉朋子