洋風建物探訪からグルメまで。春の伊賀上野を満喫する旅

忍者の伝説が息づき、松尾芭蕉のふるさととしても知られる城下町、三重県伊賀上野。歴史ある町に溶け込む、レトロモダンな洋風建物探訪や伝統の組紐体験など、感性を刺激する伊賀の旅を紹介します。

伊賀上野城の天守閣は眺望も抜群

伊賀上野城
春は桜も楽しめる伊賀上野城

 伊賀の観光は伊賀鉄道忍者市駅(上野市駅)を起点に、徒歩圏内で主要な可能スポットを巡れるのが利点。まずは、駅より徒歩約10分の高台にある伊賀上野城へ。3層の最上階にある天守閣からは、城下町の家並みや自然豊かな伊賀市の田園風景を見渡すことができます。景色を堪能したら、国指定史跡名勝記念物の城跡を散策。

 白い3層の美しい城郭が目を引く上野城。鳳凰が翼を休める姿に見立てられ「白鳳城」とも呼ばれています。伊賀上野城をはじめ、芭蕉翁記念館や俳聖殿など歴史的建築物が点在する上野公園内は桜の名所としても知られ、例年3月下旬から4月中旬頃までが見頃に。

伊賀上野城の石垣
日本有数の高さを誇る伊賀上野城の石垣

 1583年の築城当時の姿のままの形で残るのが、築城の名手・藤堂高虎(とうどう たかとら)が築いた石垣。高さ約30mあり、大阪城と並んで日本屈指の高さを誇ります。誇黒沢明監督の映画『影武者』のロケ地としても有名です。

フォトジェニックな建築を散策

旧小田小学校本館
三重県指定文化財の「旧小田小学校本館」

 伊賀上野城の南西エリアには、明治・大正時代の洋風建築の建物が多数現存し、タイムスリップしたような気分に。明治時代に建てられた「旧小田小学校本館」の舎内には、実際使われていた教科書や、試し弾きOKのピアノの展示も。カラフルなギヤマンガラスの窓から差し込む光が美しい夕方の訪問がおすすめ。

北泉家住宅
国登録文化財の「北泉家住宅」

 明治時代に建てられた旧上野警察庁舎で、三重県内各地の警察庁舎のモデルにもなったのが「北泉家住宅」。大正時代の建物を活かした「上野文化センター」はカフェ・ショップとして営業中です。ちなみに、旅の起点となる忍者市駅も大正時代に建てられた駅舎。天井高のマンサード屋根を見上げてみるのも楽しみ。

カラフルでかわいい、伝統の組ひもづくり体験を

伊賀組紐体験
気軽に伊賀組紐体験ができる

 江戸時代に残っていた組ひもの技術を、明治35年に江戸から伊賀に持ち帰り広まったのが伊賀くみひも。帯締などの和装小物として親しまれてきました。「廣澤徳三郎工房」と、「伊賀伝統伝承館 伊賀くみひも 組匠の里」では、所要時間20分程度、1人1000円からで、組ひもづくりが体験できます(要予約)。

 丸台でひもを順番に移動させてつくる組ひもは、絹糸の手触りや糸玉のコトンと鳴る音が心地よい。レクチャーを受けながら、世界でひとつの組紐が完成! キーホルダーやブレスレットがつくれる体験教室もあるのでチェックしてみて。

伊賀地域でしか味わえない伊賀肉をほおばる

ステーキハウス グラツィエ
「ステーキハウス グラツィエ」のディナーメニュー

 城下町でぜひ味わいたいのが、地域限定生産の伊賀牛。「郷土の豊かな自然のなかでのびのびと飼育されたブランド牛は、芳醇な香りとコク、柔らかさが実感できます。町内の店舗は、希少な伊賀牛を、すき焼き、焼肉ハッシュドビーフなどの洋食などが楽しめます」(伊賀市産業振興部 西口温子さん)。

 おすすめは、伊賀唯一の自家牧場による全頭飼育生産直売を行う「ステーキハウス グラツィエ」のステーキ。特選シャトーブリアンをはじめ、サーロインや牛刺しなど、極上肉を提供。口の中でとろけるように広がる上品な風味を堪能できます。

昔ながらの趣とモダンが融合したホテルに泊まる

NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町の外観
「NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町」のKANMURI棟(フロント棟)

 宿泊は、城下町のほぼ中央に2020年にオープンした「NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町」へ。文化財の旧栄楽館をはじめ、城下町に点在する歴史ある邸宅を3棟10室の宿泊棟にリノベーション。江戸時代から続いた旧生薬問屋を再生したフロント棟や、明治初期に建てられた元材木店の趣きを活かした客室があるMITAKE棟など、城下町ならではの佇まいが魅力です。

NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町の客室
モダンなかつ快適なインテリアを有する客室

 わずか10室のスモールラグジュアリーホテル。力強い梁、格子などの美しい建築意匠、あたたかみのある往時の木札など、ディテールの一つひとつに豊かな歴史が感じられ、茶室のある客室や、別棟には地産地消をテーマにしたレストランもあり、のんびり&優雅な時間を過ごせます。

■三重県 伊賀市の公式観光サイト「伊賀ぶらり旅
<取材協力/伊賀市観光戦略課>
<取材・文>寺川尚美