被災地を「ラプラス」が応援。「ポケふた」を巡る宮城県の旅へ

宮城県には全自治体にポケモン・ラプラスのマンホール「ポケふた」があります。東日本大震災で津波の被害を受けた15自治体からスタートしたこの取り組みと、周辺のおすすめ観光スポットをご案内します。

津波被害の15自治体からポケふたスタート

とみやど
宮城県富谷市の新観光スポット「とみやど」。ポケふたを起点に歴史ある宿場町巡りへ

 ご当地名物や観光名所、アニメやゲームのキャラクターなどのデザインマンホールが人気です。なかでも、子どもにも大人にも親しまれているのがポケモン(ポケットモンスター)の「ポケふた」。ポケふたは全国各地にありますが、宮城県は県内すべての自治体に設置し、その数35は全国トップです。

 ポケモンがマンホールのデザインになったのは、ポケモンをプロデュースする株式会社ポケモンが地方自治体と連携する「ポケモンローカルActs」の取り組みから。「推しポケモン」が任命された1道7県では、コラボグッズやイベント、寄贈されたマンホールのふた(ポケふた)などで、推しポケモンが地域の魅力を発信しています。

「宮城県では、2019年にラプラスが応援ポケモンに任命され、東日本大震災で被害を受けた沿岸15市町にマンホールを観光振興・地域振興のために寄贈いただきました。2020年12月に残り20市町にもマンホールを寄贈いただき、2021年春に全35市町村への設置が完了しています」(宮城県経済商工観光部観光プロモーション推進室の多田和己さん)

 ラプラスは、水上を進むのりものポケモン。「ラプラスを推しポケモンとすることで、被災が大きかった沿岸部を中心にラプラスに乗って多くの人に旅してもらいたい」という思いを込めて選ばれたそう。やさしい心の持ち主で、ごきげんになると美しい声で歌うというラプラス。その背中に乗り、宮城の名所をたどってみましょう。

ポケふたと郷土の歴史・文化を巡る旅

仙台市
日本三大七夕まつり・仙台の七夕をデザイン。夜空には星とともにねがいごとポケモンのジラーチが

 まずは、県庁所在地で杜の都・仙台市のポケふた。七夕祭りの吹き流しとラプラスがデザインされたポケふたは、仙台の中心地にあるサンモール一番町商店街近くに設置されています。ショップをのぞいたり、ランチのお店を探したり。そぞろ歩きも楽しいこのまちで外せないのは「ずんだシェイク」。

「ずんだシェイクは、厳選した牛乳を使ったバニラテイストのシェイクに、特製ずんだをブレンドしています。一度飲むとやみつきになる味わいで、マンホール巡りで疲れたからだにぴったりです!」(宮城県観光プロモーション推進室・多田さん)

 仙台市に隣接し、奥州街道の宿場町として栄えた富谷市のポケふたは、ようせいポケモンのブルーが前面に。怖い顔が逆にキュートと人気の高いブルーとラプラスが歴史のまち・富谷をご案内。

 ポケふたが設置されているのは、宿場町の面影が残る「しんまち地区」にある文化交流施設「とみやど」。2021年に誕生した観光スポットです。

「富谷市出身の偉人・内ヶ崎作三郎(うちがさきさくさぶろう)の功績を伝える記念館や、地元で事業を行う店主たちによる飲食店やショップが軒を連ねます。宮城県制150周年を迎える今年、地域の歴史を学びながら、敷地内の古民家・蔵などで食事や地場産品の買い物を楽しむのがおすすめです」(宮城県観光プロモーション推進室・多田さん)

 周辺には、宮城県最古の造り蔵や脇本陣跡など貴重な建造物が。とみやどをベースに宿場町の歴史をたどってみましょう。

富谷市
富谷市の特産品ブルーベリーとブルーが共演。青のグラデーションが印象的なポケふた

 桜の季節にぜひとも足を運びたいのが大河原町と柴田町にまたがる「白石川堤一目千本桜」。樹齢80年を超えるソメイヨシノなど全長約8kmにわたって桜が咲き誇る東北でも有数の花見スポットです。

「例年4月頃、蔵王連峰を背景とする白石川沿いに1000本以上の桜が満開となる宮城県を代表する桜の名所です。お花見屋形船や夜桜ライトアップなど一味違う桜並木も見ることができます」(宮城県観光プロモーション推進室・多田さん)

 白石川堤一目千本桜へ向かう2つのルートにポケふたが。JR東北本線の大河原駅からすぐの白石川公園入口に大河原町のポケふた、船岡駅南口ロータリーに柴田町のポケふたが設置され、どちらもラプラスと花をモチーフにしたようなポケモンが描かれています。お花見の気分を高めてくれること間違いなしです。

大河原町
満開の桜×サクラポケモン・チェリム。シルエットのラプラスは県内35市町村で2つだけ(もうひとつは松島町)なのも貴重
柴田町
あざやかな花びらが印象的。いちりんポケモン・フラベベがキュートな柴田町のポケふた

地元の景観にとけこむラプラスが魅力

東松島市
ジェット機を追い越すスピードで飛ぶこともできるむげんポケモン・ラティオスと見つめ合うラプラス、力強さを感じるデザイン

 東松島市のポケふたは、2015年に高台に移設されたJR野蒜駅の前に設置。広い海へと力強く泳ぎ出していくようなラプラスが印象的です。
  ポケふたを見たあとは、野蒜駅にほど近い「KIBOTCHA(キボッチャ)」へ。東日本大震災によって被災した旧野蒜小学校を全面改装し、遊びと教育と防災を融合させた防災体験型宿泊施設です。

「宿泊しながら防災を学べるだけでなく、レストランや日帰り入浴できる浴場、グランピングやBBQ施設があり、また、様々なアートの展示や復興イベントも開催されます」(宮城県観光プロモーション推進室・多田さん)
 先行して設置された沿岸部15市町のポケふたは、多くが駅の近くにあります。東松島市で1泊し、沿岸部のポケふたを巡りながらおいしい海の幸をいただいたり、名所を訪れたり、復興したまちをさらに応援する旅もおすすめです。

 大崎市のポケふたはJR古川駅から徒歩15分、「食の蔵 醸室(かむろ)」前に設置されています。江戸時代の酒蔵を改修した商業施設で、大小の蔵を利用して飲食店や雑貨店が立ち並びます。土蔵や木造など蔵の雰囲気の中でさまざまな滞在が楽しめます。
 大崎市のポケふた巡りのルートにぜひ加えたいのが鳴子温泉郷。古川駅からJRで約40分の距離です。

「鳴子・東鳴子・川渡・中山平・鬼首からなる鳴子温泉郷は1000年以上の歴史を誇り、日本にある10種の泉質のうち8種を楽しめます。寒いこの時期、ポケふた巡りで冷えてしまったからだを温泉に浸かって温めてはいかがでしょうか」(宮城県観光プロモーション推進室・多田さん)

大崎市
米の産地・大崎市のポケふたは、水田とラプラスをデザイン。もぐらポケモン・ダグトリオ、ことりポケモン・オニスズメとともに
鳴子温泉郷
こけしでも知られる鳴子温泉をはじめ5つの温泉からなる鳴子温泉郷。温泉の数はなんと370以上!

 ポケふたはどれも世界で1枚。同じデザインのものはひとつとしてありません。宮城県内35カ所、ここだけで見られるポケふたを探しながら旅を楽しんでみませんか。

ポケモンクレジット

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<取材・写真協力/宮城県観光プロモーション推進室>
<取材・文/土倉朋子>