水と緑に恵まれた三重県の秘境、大杉谷。「吉野熊野国立公園」や「ユネスコエコパーク」に認定されている、日本三大峡谷のひとつです。今回は、渓谷を満喫したい人向けの1泊2日のトレッキングコースをご案内します。
豊かな自然が織りなす秘境・大杉谷
三重県多気郡大台町の宮川上流、吉野熊野国立公園内にある大杉谷。屋久島と比べられる雨の多い地域で、清流・宮川の豊かな水が深いV字渓谷や個性豊かな滝、嵓(くら)と呼ばれる巨大な岩壁、美しい原生林や苔を生み出しています。
「大杉谷に初めて入る方や登山初心者の方は、Verde大台ツーリズムで登山ガイドを頼んでいいただくことをおすすめします。夏はヒル対策が必須です」(大台町観光協会 西口茉実さん)
1泊2日のトレッキングコースは健脚向け
今回は、渓谷を満喫する1泊2日の登山コースをご紹介。行程の所要時間は9~10時間、総距離は約12kmで、アップダウンが多いため健脚向け。渓谷をちょこっと楽しむ日帰りコース、秘境深部を堪能する2泊3日コースなどもあるので、経験やスキルに合わせてチョイスを。
登山の拠点となる大杉谷登山口までは、「道の駅 奥伊勢おおだい」から大杉峡谷登山バスで移動を「大杉谷登山センター」で登山届けをお忘れなく。
登山口を入ると、壁をくり抜いた道・大日嵓(だいにちぐら)が現れます。眼下には大杉谷宮川が。エメラルドグリーンの水と新緑のグラデーションに、しばしうっとり。
しばらく歩くと清流宮川の河原に降りることができる京良谷に到着。手ですくってみたくなるほど澄んだ水は、時季より天然のアマゴを見ることができます。
神秘的な絶景スポットで記念に残る1枚を
千尋滝や日浦杉吊橋を超え、アップダウンのある険しい道の先にあるのがシン淵。滝をバッグに写真撮影ができる絶好のポイント。せり出した2つの岩壁とその間から望む滝、鮮やかなブルーの川のコントラストは、自然がつくり上げたアートです。
キラキラと輝く水面、ダイナミックな滝を眺めながら、しばしブレイクタイムを。
吊り橋から眺める岩壁は大迫力!
シン淵から40分ほど歩くと、平等嵓(びょうどうくら)の吊り橋が見えてきます。「嵓」とは、険しく切り立った大きな岩のこと。吊り橋から見上げる平等嵓は、まさに絶景。迫りくり岩壁を眺めながらの歩行はスリリングです。
夕方早めの山小屋到着を目指して
木々の間から山小屋が見えてきたら、1日目が無事に終了。山の日暮れは早いので、早目の到着を心がけて。清流を見下ろす佳境の立地で、周辺には大杉谷を代表する植物のひとつ、シャクナゲの花も。5月中旬から6月くらいまで、華やかなピンクの花を咲かせます。
水の音や星空に癒されながらぜいたくな時間を
秘境にありながら定員250名の山小屋。ヒノキの風呂と、ボリューム満点の夕食が用意されていて、山小屋初心者にも安心です。営業は4月下旬から11月下旬まで、1泊2食10000円、翌昼のお弁当1000円(要事前予約)。大部屋のほか、個室(別途料金)のに利用も。どちらも予約は必須。運がよければ流れ星も見られます。
翌朝は早起きして、小屋の下に流れる川沿いを散策。出発準備を整えたら、同じ道を戻り、登山口へ。また、早起きして往復約90分の七ツ釜滝に足を伸ばしても。段瀑150mの名瀑として知られるスポットです。さらに健脚向けコースとしては、奈良県側の大台ヶ原に抜ける大杉谷踏破コースも可能。個人の体力と天候を考慮し、帰りのバスに間に合うよう早足で進むことがマストです。
地元ならではのお土産を購入できる
旅のお土産は、大杉峡谷登山バス利用で立ち寄ることができる「道の駅 奥伊勢おおだい」か、森の中のホテル「奥伊勢フォレストピア」がおすすめ。清流宮川のおいしい水と里山が育てたユズでつくった「ゆずっこ」は、ユズのアロマと優しい甘味に癒されるユズネード。ユズを使ったカステラやパウンドケーキも登山で疲れた身体をほぐしてくれます。「奥伊勢フォレストピア」は日帰り入浴も可能なので要チェック。
取材協力/大台町観光協会
写真/撮影/田里弐裸衣
<取材・文>寺川尚美