日本のほぼ中央に位置し、清流長良川や緑深い山々など豊かな自然に恵まれた岐阜県美濃市。約1300年続く「美濃和紙」や、江戸時代に築かれた建物が色濃く残る、伝統文化が息づく町です。今回は、「うだつの上がる町並み」を歩きながら、美濃の文化やアートに触れる旅をご案内。
うだつの上がるレトロな町並みを散策
旅の拠点となる美濃市駅までは、岐阜駅からバスを利用すると約1時間、電車の場合は、美濃太田駅で長良川鉄道に乗り換えて約30分で到着します。早速、情緒あふれる町並みをぶらりと。徒歩または、駅などにあるレンタサイクルを利用するのも手です。
かつて美濃和紙を中心に商家の町として栄えた中心部、美濃地区。東西2筋の町路と南北4筋の横丁からなる「目の字通り」の町並みと、「うだつ」の上がる家々が特徴的で、重要伝統的建築物郡保存地区に選定されています。「うだつ」は、本来隣家に火事が移らないために設けた防火壁のこと。後に装飾が施され、その家の裕福さを物語る象徴に。「うだつが上がらない」の語源はここからきているそう。
周辺には、江戸時代に建てられた建物が点在し、タイムスリップした気分に。美濃市内最大規模を誇るかつての商家である「旧今井家住宅・美濃史料館」では、暗い室内に自然光をもたらす「明かり取り」や、涼やかな音を奏でる中庭の「水琴窟」などに出会えます。ほかにも、元町医者の住居をギャラリーに活用している「町並みギャラリー山田家住宅」や現役の「小坂酒造場」など、かつての暮らしぶりが垣間見れます。
世界に誇る「美濃和紙」の魅力を体験できる
良質な原料と長良川の支流・板取川の清流に恵まれ、1300年以上の伝統を受け継いできた美濃和紙。なかで、「本美濃紙」の製作技術は、2014年にユネスコ無形文化遺産にも登録されています。美濃和紙は、薄くムラがないため柔らかく繊細な風合いで、耐久性も兼ね備えているのが魅力。現在でも多くの工程を手作業による伝統製法で生み出されます。
貴重な伝統工芸品でもある美濃和紙を身近に感じられるのが「美濃和紙の里会館」。和紙にまつわる常設展やユニークな企画展の展示のほか、「紙すき体験」もできる参加体験型施設です。「紙すき体験」では、原料は楮(こうぞ)100%で職人と同じ道具を使用。子どもや初心者でも楽しく和紙づくりに挑戦できます。体験は1回500円。
美濃和紙でつくるアート作品も必見
伝統的な美濃和紙を使って、毎年10月にうだつの上がる町並みで行われるのが「美濃和紙あかりアート展」。優美な灯りの数々が浮かび上がる一大イベントを、「美濃和紙あかりアート館」の2階で再現。入賞作品を中心に、独創的な作品を通年みることができるミュージアムです。1階は美濃和紙のあかりアート作品の販売を行うミュージアムショップ。クリーム色のモダンな外観は、国登録有形文化財のひとつ。
地元食材使ったグルメを存分に味わう
おなかが空いたら、国道157号線沿いにある「道の駅 美濃にわか茶屋」へ。レンタサイクルのステーションでもあるので便利。昼、夜提供の「美濃にわか茶屋」で、地元食材を使用した「美濃どまんなか御膳」や「鮎のひつまぶし」などをオープンデッキで。地元酪農の新鮮な牛乳を使った濃厚は「みのじ牛乳 ソフトクリーム」もおすすめです。
館内には、採れたての野菜や果物、特産品も並び、お土産探しにもぴったり。
シンプルかつ快適にこだわったホテルに宿泊
宿泊は、「道の駅 美濃にわか茶屋」から徒歩2分、2020年10月オープンした「フェアフィールド・バイマリオット・岐阜美濃」へ。シンプルと快適さを追求したスタイリッシュな空間には、トースターや電子レンジも完備。道の駅で調達した食材や惣菜で気ままな食事を楽しんでも。
木のぬくもり溢れるロビーラウンジにはソファやベンチが備わり、ライブラリーも併設。客室は、ツインルームとキングルームを用意。心地よい空間と温かなサービスが好評です。
フォトジェニックな花畑にも立ち寄って
美濃に来たらぜひ訪れたいのが、「洲原ひまわりの里(すはらひまわりのさと)」。美濃市駅から長良川鉄道で17分、洲原駅から徒歩6分ほどにある花畑です。
「4月下旬まではネモフィラ、6月中旬から8月下旬まではひまわり、秋はコスモス、冬は寒咲花菜と、四季折々花畑を楽しむことができるスポットです。花畑にはレトロなポストや幸せ行き電車など数々のオブジェも設置されていて、フォトジェニックな写真を撮影することができます」(美濃市産業振興部 美濃和紙推進課 村瀬菜摘さん)
取材協力/美濃市産業振興部美濃和紙推進課
写真提供/美濃和紙の里会館、岐阜県観光連盟運営サイト「岐阜の旅ガイド」
<取材・文>寺川尚美