「さんさ踊り」は、東北各地で行われる夏祭りのなかでもっとも早く開催される、岩手県を代表するお祭りです。2022年は3年ぶりに開催が決定。東北のみならず世界でも注目されているさんさ祭りを、盛岡出身の俳優、藤原絵里さんが紹介してくれました。
さんさ踊りは鬼退治を喜ぶ舞い
さんさ踊りは毎年8月1日から4日にかけて行われ、4日間でおよそ250団体、3万6000人が参加します。江戸時代から盛岡市の各地域でさまざまな「さんさ踊り」が行われてており、1978年からは観光イベントとして「盛岡さんさ踊り」が開催されるようになりました。
さんさ踊りの「さんさ」とは、喜びの声をあらわしています。昔、南部盛岡城下で悪さをして暴れていた鬼に困り果てた里人たちが、盛岡市那須川町の三ツ石神社の神様に鬼退治をお祈りし、その願いを聞き入れた神様が鬼を捕獲。二度と悪さをしないよう、誓いの証として境内の大きな三ツ石に鬼の手形を押させました。鬼がいなくなって喜んだ里人たちが神社の三ツ石のまわりを「さんさ、さんさ」と踊ったのが、さんさ踊りの始まりといわれています。
そしてこの話は、岩に手形=岩手、という県名の由来ともいわれています。さんさ踊りの最後「さっこら ちょいわやっせ」というかけ声の「さっこら」は漢字で書くと「幸呼来」で、幸せを呼ぶという意味。さんさは幸せを願っている踊りです。
世界一の太鼓パレード
さんさ踊りで見どころになっているのが、太鼓のパレードです。退散した鬼が二度と里に来ないよう、太鼓の音を山に響かせたのが始まりと伝えられています。
2014年には、3437人が同時に和太鼓を演奏したとして、Largest Japanese Drum Ensembleでギネスの世界記録に認定されました。毎年お祭りの最終日には、太鼓の叩き手のみが参加する太鼓大パレードが開催され、圧巻です。
パレードは毎日18時から、盛岡市役所をスタートしておよそ1km続きます。「ミスさんさ」の華麗な踊り、幼稚園児のかわいらしい踊り、学生の力強い踊りなど、団体ごとに魅力あふれる踊りが見られます。
地域密着型のさんさ踊り
筆者が学生の頃は、お祭りの本番が近づくと、同級生は太鼓や笛、踊りの練習のため学校を休んだり早退するのも許されていました。筆者はどの団体にも参加していなかったので、うらやましく思ったのを覚えています。
お祭り期間は毎年、家族と、友人と、恋人と、毎日お祭りに行っていました。体育祭や文化祭でもさんさ踊りを踊るので、盛岡市民はだれでも子どもの頃からさんさ踊りが踊れます。
さんさ踊りに参加したい人は、毎日のパレード終了後にだれでも参加できる「和踊り」が開催されるので、ぜひ参加してみてください。それぞれの和踊りに師匠と呼ばれる人がいるので、踊りが分からなくても大丈夫。もちろん、浴衣でなくてもOKですよ。
岩手県民が心待ちにしていた3年ぶりの開催、きっと最高の盛り上がりになるはずです。お時間があればぜひ、見るだけじゃなく、参加してくださいね。
<取材・文/藤原絵里>
<取材・写真協力/岩手県観光協会>
藤原絵里さん
俳優。岩手県盛岡市出身。23年間、岩手県で生まれ育つ。短大を卒業し、地元の温泉旅館の仲居に。着つけや日本文化に興味をもつ。その後、カタール航空のキャビンアテンダントへ転職。約4年、国際線に乗務し世界44か国を訪れる。海外での経験を通して、日本のよさ、岩手のよさを再認識する。現在は、女優として、映画やミュージカルに出演。代表作は速水萌巴監督『クシナ』、榊英雄監督『生きる街』など、多数。日本や東北の魅力を伝えられる作品にかかわっていきたいと思っている。