旅行先で見慣れない青果物を発見するのも、楽しみのひとつ。今回は、野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級など食に関する資格を持つ津波真澄さんが、沖縄のファーマーズマーケットで県外からの旅行者が足を止める、ちょっと珍しい果物と野菜を紹介します。
別名「森のアイスクリーム」と呼ばれる「アテモヤ」
緑色のブツブツとした、一見恐竜の卵のように見える南国の果物「アテモヤ」。見た目とは裏腹に、クリーム色のとても甘い果肉がつまっています。完熟時の糖度は20〜25度にもなり、「森のアイスクリーム」と呼ばれています。追熟させて食べ頃になると柔らかくなるため、半分に切って、アイスクリームさながらスプーンで食べるのがおすすめです。
よく似た果実に、釈迦頭(シャカトウ)やチェリモヤがありますが、じつはアテモヤは、これら2つをかけ合わせてできた果物です。釈迦頭も沖縄で栽培されているので、運よく2種類同時に見つけたら、食べ比べてみてはいかがでしょうか。
無味無臭で淡泊な味。赤茶色の瓜「モーウイ」
ずんぐりとした外観。長さ約30cm、直径10cmほどの、ずっしりと重たいキュウリの仲間「モーウイ」。漢字では「毛瓜」と書きます。果皮が赤茶色なことから、地域によっては赤毛瓜とも赤瓜とも呼ばれます。
表面に細かい網目状の模様があり、果肉は白く、無味無臭の淡白な味。そのままサラダにして食べるほか、ツナと一緒に炒めたり、豚肉と煮込んで濃いめの味つけで食べたりします。手頃な価格で買えるので、家計の強い味方です。
デザートやお刺身に。巨大なアロエベラ
ヨーグルトに入っていたり、シロップ漬けがレトルトパックで売られていたり、アジア料理のレストランでデザートに出てきたりするアロエベラ。なじみはあるものの、「カットされる前」の状態を見たことがある方は少ないのではないでしょうか。私も沖縄で初めて見たときは、その巨大な姿に驚愕しました。長さ70~80cm、幅10~12cm、厚さ3cmくらいあるのです!
民間療法で、火傷をしたときなどに使われるキダチアロエは食べると苦いのですが、アロエベラは苦味が少ないため、皮を剥き、果肉を厚めにスライスして、お刺身のように食べることもできます。もちろん、ヨーグルトやフルーツと一緒に食べるのもおすすめです。
近年は美肌効果も研究されており、美容のためにも積極的に食べたい野菜の一つです。
ひときわ目立つ、こちらも巨大な鮑茸
キノコ売り場でひときわ目立っているのが、こちらの鮑茸(アワビダケ)。大きさは通常の椎茸の2~3倍(女性の手のひらより大きいものも)あり、肉厚で、コリコリとした食感がアワビのようであることから、この名前がついたと言われています。
もともと亜熱帯地方で採れるキノコで、沖縄県が日本でいち早く栽培を始めました。しかし生産量はまだまだ少なく、売り場に陳列されていると、沖縄県在住者でもふと立ち止まってしまうほど目をひきます。
食感を楽しむには、分厚く切って焼きキノコに。また、うま味が非常に強いので、汁物に入れるといいだしが出ます。
沖縄の在来種、煮込むと甘い島かぼちゃ
最後に紹介するのは島かぼちゃです。沖縄の在来種で、日本かぼちゃに属します。ひょうたん形、楕円形、だるま形など形はさまざまで、売り場で品定めしていると、どのように食べるのか尋ねられることが多い野菜の代表格です。
流通量の多い西洋カボチャと比べると水分が多く、味はあっさりしているのですが、ポタージュにすると絶品で、バターもコンソメも不要! 柔らかく煮た後、豆乳や牛乳と合わせるだけでとても甘くなり、味つけも塩とコショウだけで十分です。「シンプル・イズ・ベスト」を実感できる食材と言えるでしょう。
以上、ご紹介したもの以外にも、普段あまり見かけることのない農産物が多くある沖縄県。次回の沖縄旅行の際は、いろいろ見つけてみてはいかがでしょうか。
<取材・文>津波真澄
津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。15年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催。企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第3位(2nd Runner-up)を受賞