幸せを呼ぶ白馬や古民家ホテルも。ハマグリだけじゃない秋の桑名の旅

名古屋駅から電車で約25分。木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)の恵みから、東海道の宿場町、城下町として発展した、三重県桑名市。歴史、文化、自然が感じられる観光スポットや焼きハマグリをはじめとするご当地グルメ、重要文化財の古民家をリノベした宿など、桑名の魅力が満喫できる大人旅をご案内します。

自然豊かな桑名は歴史的スポットが満載

桑名の町並み
左上・明治時代に建てられた「煉瓦蔵」(三重県文化財)、左下・多度の古い町並み、右上・東海道を行き交う人のシンボルだった「七里の渡しと櫓」、右下・揖斐川・長良川がまちに寄り添うように流れる

 木曽三川の河口、三重県の北部に位置する桑名市。伊勢国の玄関口として知られ、東海道五十三次の宿場町・城下町として栄えた歴史をもっています。

「桑名はナガシマスパーランドをはじめ、多度大社や六華苑などの人気スポットが狭いエリアにギュッと詰まっています。かつては東海道の宿場町だったことから、老舗料理店や和菓子店を食べ歩きするのも楽しいですよ」(桑名市観光協会・渡辺さやかさん)

 早速、JR東海・近鉄・養老鉄道の3つの鉄道が乗り入れている「桑名駅」を拠点に、徒歩またはバスで市街地散策に出発。駅前からは、100円で乗車できる「K-バス」や、アンパンマンバスも利用できるのでチェックしてみましょう。

幸せを呼ぶ白馬が迎えてくれる多度大社

多度大社
北伊勢大神宮とも呼ばれる「多度大社」

 旅の最初に訪れたいのは、古来、多度山を神体山と仰ぐ「多度大社(たどたいしゃ)」。社殿の創建は5世紀後半、第21代天皇の雄略天皇の御代と伝えれています。正面階段を上り鳥居をくぐると、「神馬舎(じんめしゃ)」で白い神馬「錦山(きんざん)号」が参拝者をお出迎え。神様のお使いとしてご奉仕しており、生きた神馬がいる神社は全国的にも希少です。白馬が幸せを運んでくるという「白馬伝説」も。伊勢参宮の折には参拝に訪れる習わしが現在でも残っているため、全国から参拝者が訪れます。

イギリス人建築家が手がけた華麗な洋館

六華苑
「六華苑」ではステンドグラスなどの装飾にも注目

 二代諸戸清六の邸宅として大正2(1913)年に完成し、現在は一般公開されている「六華苑」。本苑には、「鹿鳴館」の設計で有名なイギリス人建築家、ジョサイア・コンドル設計による木造2階建て天然スレートぶきの洋館や、和館や蔵、池泉回遊式庭園などがあり、洋館と和館は国の重要文化財に指定されています。苑内のカフェには、「自分で点てられるお抹茶セット」などのメニューも。和洋の様式が調和した歴史的空間でのんびりと過ごすのはいかが?

商店街の朝市でパワーをもらおう

寺町通り商店街
「寺町通り商店街」の朝市もおすすめ

 地元の生活を知るなら、約500mのアーケードに新旧の店舗が軒を連ねる「寺町通り商店街」へ。毎月3と8がつく日(3日、8日、13日、18日、23日、28日)に開催される朝市「三八市(通称・さんぱち)」は、多くの出店者が集まり、よりにぎやかに。フレッシュな生鮮品や地元の加工産品や工芸品、焼きたてのパン、淹れたてのコーヒーなどバラエティ豊か。地元の人との触れ合いも楽しみのひとつです。

焼きハマグリやしぐれ肉巻きなどを堪能

くわなめし
左上・桑名コロッケ、左下・しぐれ肉巻きおにぎり、右上・バンブー焼きそば、右下・焼きハマグリ

 ハマグリの産地として知られる桑名は、料亭から漁港近くの食堂まで、ハマグリ料理の名店揃い。焼き、しゃぶしゃぶ、天ぷら、雑炊など、様々な料理が楽しめます。また、桑名市が認定するご当地グルメ「くわなめし」にも注目。ハマグリ、菜花、トマト、タケノコなど地元食材を使った「桑名コロッケ」、アサリやシジミなどのしぐれ煮を混ぜたしぐれご飯で豚肉を巻いた「しぐれ肉巻きおにぎり」、タケノコのシャキシャキ食感がクセになる「バンブー焼きそば」も必食です。

見た目も美しい「箱ずし」をお土産に

箱寿司
「すし工房 なばな」の箱寿司

 長島町に伝わる郷土料理を現代風にアレンジした「箱ずし」は、長島産のコシヒカリやしぐれなど地元食材を取り入れた、見た目も華やかな故郷の味。長島町の農家のお母さんたちが営む「すし工房 なばな」の箱寿司は、桑名市寺町通り商店街の三八市などで購入できます。

趣ある癒し空間でかわいくておいしいスイーツを

THE FUNATSUYA
デザートの一例、左上・「デコポンのタルト エスプーマ」と、右・「いちごと抹茶のパフェ」。左下・「THE FUNATSUYA」の外観

「七里の渡跡」のすぐそばにある「THE FUNATSUYA(ザ フナツヤ)」では、とびきりのデザートに出会えます。こちらは、明治8(1875)年創業の「料亭旅館 船津屋」の伝統を受け継ぎながら、2011年にモダンな結婚式場&イタリアンレストランへと生まれ変わったスポットです。

 なかでもSNSで話題なのが、レストランでいただける、3種類のランチデザート。定番の「フナツヤロール」のほか、月替わりで素材が変わるパフェ、タルトまたはマチェドニア(季節により)。毎月5名の女性パティシエがアイデアを持ち寄り考案しているそう。地元農家直送の素材を使ったメニューが好評です。

諸戸家ゆかりの上質な宿に泊まる

CASA WATARI KUWANA
左上・宿「CASA WATARI KUWANA」の外観、右上・古民家の趣とモダンな北欧家具が融合したパブリックスペース、左下・平屋の「離れ」、右下・「蔵」の寝室

 桑名で1泊するなら、諸戸家ゆかりの古民家を再生した心づくしの宿「CASA WATARI KUWANA」がおすすめ。明治から続く実業家として知られる諸戸家ゆかりの建物を、2019年にリノベーションし、洗練されたスモールラグジュアリーな空間に。

 客室は、平屋の「離れ」と、2階建ての「蔵」があり、それぞれ1組ずつの貸切で使用が可能。「離れ」には木の香漂う檜葉風呂が備わり、「蔵」は1階がリビング、2階が寝室という構造。どちらも、小鳥のさえずりを聞きながら心地よい時間が過ごせるため、リピーターが多いのも納得です。

取材協力/桑名市観光協会

<取材・文>寺川尚美