2024年の北陸新幹線金沢~敦賀間の開通に向け、注目度が高まる福井県は、古くから「発酵の古都」としても有名。街を歩くと、日本酒やみそ、しょうゆや麹などさまざまな発酵食品の蔵やお店が点在し、創業数百年の老舗も多数。今回は、発酵視点で歩く「ふくい発酵ツーリズム」をご案内します。
「発酵の古都」巡りで500年の歴史を体感する
コシヒカリの発祥の地であり、中世から醸造業が根づく福井県。「発酵の古都」と言われるようになったのは、戦国時代にこの地を治めていた朝倉氏が、織田信長に滅ぼされたのを機に福井市内に移り住み、麹やしょうゆの製造を行ったのが始まりだそう。
また、稲作が盛んで、白山水系の伏流水が土壌に豊富に流れているため、酒蔵も多く存在していました。冬は雪に閉ざされるため、昔から保存文化が定着したと言われています。
「福井市の発酵を代表するお店『青木蘭麝堂(あおきらんじゃどう)』は、ぜひ訪れていただきたい老舗です。名物は、戦国大名朝倉氏の時代からつくり続けている、一子相伝400年余り門外不出の滋養酒『蘭麝酒(らんじゃしゅ)』。美しい紅葉も楽しめる庭園は見学(要予約)も可能で、樹木は市指定文化財でもあります。もう1店舗が、創業約500年のみそ・麹屋『国嶋清平商店』。県産の大豆・米・塩・水などでつくる冬の風物詩『はまな味噌』を味わってみてください」(公益財団法人 福井市観光協会・スタッフ談)
新スポット「一乗谷朝倉氏遺跡博物館 」も必見!
発酵ツーリズムを楽しむ前に立ち寄りたいのが、「青木蘭麝堂」のほど近くに2022年10月1日にオープンした「一乗谷朝倉氏遺跡博物館」。国の特別史跡・特別名勝の指定を受けた貴重な都市遺跡で、出土品は重要文化財に指定されています。栄華を誇った戦国城下町の暮らしぶりを、巨大ジオラマなどを通して学べるスポットです。
福井駅を中心に街歩きをすると、「発酵の古都」であることを実感できます。「国嶋清平商店」と「青木蘭麝堂」以外の魅力的なスポットをご紹介します。
大本山永平寺ゆかりの老舗「米五」へ
福井の発酵文化が発展した理由のひとつが、大本山永平寺などの精進料理が身近にあったこと。そんな大本山永平寺の御用達の老舗が、創業200年弱の醸造メーカー「米五(こめご)」。甘味の強い米麹と大豆を合わせ、やや浅めの熟成で仕上げたみそは、うま味がありつつさっぱりとした味わい。工場に併設された店舗には、みその量り売りコーナーやカフェも。工場見学や手前みそづくりができるワークショップ(冬場のみ)も事前予約で体験できます。
センスのよいお土産が見つかる「三七味噌」
センスのよいパッケージの麹やみそ、甘酒を使ったスイーツなどが話題の米麹屋「三七味噌(さんななみそ)」。鹿児島から移住してきた店主が、小さなビルを住居兼工場兼お店に改装し、2017年にオープンした新進系ショップです。店名の「三七」は、みそ仕込み用の麹に適したコウジカビの育成温度37℃にちなんだもの。定期的にみそづくり、甘酒づくりワークショッフも行っているのでインスタグラムでチェックを。
優しい味わいが広がる新スイーツ「発酵ジェラート」
福井市内の街歩きを楽しんでほしいという思いから、約10店舗の地元発酵食品系メーカーとのコラボレーションで誕生したのが「発酵ジェラート」。監修は、県内に3店舗を展開する人気の「ジェラートトリノ」。米五のみそを使った「味噌×クリームチーズ」や、國嶋清平商店の甘酒を使用した「甘酒×リンゴ」、ヤマギクしょうゆの醤油を採用した「醤油おもち」など、バラエティ豊か。新感覚のジェラートは各店舗、またはオンラインショップで購入可能です。
魚料理が人気の「年間民宿 佐助」で新名物に舌鼓
おすすめの宿は、若狭湾のほど近く、サバのフルコースが味わえる「年間民宿 佐助」。福井伝統の発酵料理で、宿自慢の「サバのへしこなれずし」は、二段階の発酵を経て生まれた味わい。これを目当てにリピートするお客さんも多いそう。また、新名物「小浜よっぱらいサバ」のお刺身も堪能できます。田烏の清澄な海水に育まれ、酒粕を食べて大きくなった「小浜よっぱらいサバ」は、深いうま味と甘味、さわやかな酸味が特徴的。
料理は、プリプリとした食感で歯ごたえがある若狭フグのてっさなど時季により登場。近隣には、サバや梅の加工品、伝統工芸品など、若狭おみやげが豊富に揃う「若狭フィッシャーマンズ・ワーフ」があるのでのんびりと過ごせます。
今回紹介したスポットなど「発酵ツーリズム」の情報は、「北陸福井 発酵ツーリズムガイドブック」で見ることができます。ぜひチェックしてみてください。
■福井県公式観光サイト「ふくいドットコム」、福井市観光公式サイト「福いろ」
取材協力/公益財団法人 福井市観光協会
<取材・文>寺川尚美