石川県能登地方の中心として栄えてきた七尾市。豊富な海の幸や山の幸や、国登録有形文化財の建物が点在する商店街、開湯1200年の歴史をもつ和倉温泉など、さまざまな魅力が詰まった町です。今回は、伝統文化・海鮮グルメ・名湯を満喫する七尾の旅をご案内します。
七尾を巡り、海・山・歴史文化を体感する
市の中心部に七尾湾が、北は能登島、東には富山湾が広がる海に面した七尾。東西は山地に挟まれ、南には平野が広がるなど自然豊かな地で、2011年には、世界農業遺産「能登の里山里海」として登録されたエリアの一部でもあります。
旅の拠点となる七尾駅までは、金沢駅から特急かがり火またはサンダーバードに乗車し、約1時間で到着します。まずは、「加賀百万石」の初代の大名として北陸を治めた前田利家が、城下の守りとして寺院を配置した、山の寺寺院群を散策。約2kmの瞑想の道に、常通寺や西念寺など16の趣ある寺院が点在しています。
そこからは徒歩で15分ほど、七尾駅からは徒歩5分ほどのところに、600年以上の歴史をもつ一本杉通り商店街があります。
「真っすぐ延びる約450mの通りに、50ほどの店舗が軒を連ねています。建物は主に寄棟づくりの町家で、「鳥居醤油店」などいくつかの建物は、国登録有形文化財に指定されています。当時の面影を残している街並みを楽しみながら、歴史・商品・町について、「語り部処」によるお話に耳を傾けたり、お店に人との触れ合いを楽しんでください」(ななお・なかのとDMO /スミ・デウィ・デッサリさん)
国登録有形文化財が点在する一本杉通り商店街
明治から昭和初期に建てられた国登録有形文化財が並ぶ商店街、一本杉通り。能登の食文化や伝統工芸を受け継ぐお店もあり、見て、歩いて、買って、体験できる観光スポットです。
1892(明治25)年から和ろうそくをつくり続けているのが「高澤ろうそく」。植物ロウを主原料に、芯は和紙と灯芯草など自然素材を使用し、1本1本丁寧に仕上げています。創業90余年の「昆布・海鮮物處しら井」では、昔ながらの手削り昆布にこだわった炊き立ての昆布巻やニシンのあめだきなど、奥深い味わいの逸品がずらり。
1908(明治41年)に建てられた土蔵づくりの建物が国登録有形文化財にも指定されている「鳥居醤油店」。土間ひと続きの空間には、手づくりのしょうゆ、だしつゆ、みそなどが並んでいます。こちらでは見学のほか、「しょうゆ絞り体験」(要予約)も可能です。
七尾の名物、能登前ずしと能登カキは必食
「天然のいけす」と呼ばれる七尾湾、富山湾に面した七尾市では、古くから定置網漁が盛ん。多種多様な魚介類が水揚げされ、季節毎に新鮮な海の幸が味わえます。
その日に水揚げされた鮮魚と西尾産のお米にこだわった能登前ずしが味わえるのが、地元客にも人気の「寿し一(すしかず)」。握りのほか、ナマコ酢や生クチコ、焼き魚などの1品料理も絶品です。
栄養豊富な能登湾で養殖されている能登カキは、うま味が詰まった大ぶりの身が特徴。冬から春にかけて真カキ、夏から秋は天然の岩ガキが楽しめる。「木村功商店」では、目の前の七尾湾を眺めながら、炭火で焼いた獲れたてのカキが満喫できます。
海の名湯・和倉温泉でリフレッシュ
七尾駅からひと駅、約5分で到着するのが、湯宿が立ち並ぶ人気の温泉地・和倉温泉。その昔、シラサギが傷を癒したことから、源泉が発見されたという逸話がある開湯1200年の歴史を持つ名湯です。湯脈が海中にあり、北陸随一の「海の温泉」として知られ、豊富な塩分が殺菌・保温・美肌効果をもたらすそう。
町の温泉として地元民にも親しまれているのが「和倉温泉総湯」。大浴場、小浴場、立湯、露天風呂、サウナなどのほか、屋外には無料で利用できる足湯も完備しています。源泉100%の名湯を堪能した後は、広々とした畳敷きのお座敷でひと休みを。
湯上りは、ご当地スイーツに癒されて
湯上りのおすすめは冷たいスイーツ。ゴマをたっぷり練り込んだ「能登海鮮丼 みとね」の「黒ごまソフト」は濃厚なコクがたまらない。また、能登産の地乳を使ったミルク感たっぷりのジェラートが人気の「能登ミルク」もおすすめ。常時10~15種類のフレーバーが揃っています。この機会にご当地スイーツをご堪能ください。
取材協力/一般社団法人ななお・なかのとDMO
<取材・文>寺川尚美