絶品卵かけご飯から宇宙探査まで。盛りだくさんな相模原市を満喫するツアーへ

神奈川県北部に位置する相模原市。リニア新幹線の駅ができることで話題になりましたが、まちづくりや文化、食などの取り組みや魅力も。卵かけご飯がおいしいたまご街道から探査衛星「はやぶさ」を生んだJAXAまで、相模原市の魅力を巡るツアーを体験しました。

リニア新幹線で様変わりする橋本駅南口エリア

リニア
地下10mまで掘削が進んだリニア駅工事現場。完成後はホームの位置にあたるそう

 相模原市は人口約72万6000人の政令指定都市。小田急電鉄の小田原線と江ノ島線が分岐するターミナル駅の相模大野エリアがよく知られていますが、近年発展しているのが京王相模原線の始発駅でJR横浜線と相模線が乗り入れる橋本駅エリア。その南口に建設中なのが、リニア中央新幹線駅です。

 2027年以降に東京―名古屋の開業を目指すリニア中央新幹線は、大阪まで延伸すると3大都市が1時間で結ばれることに。橋本駅南口にできる神奈川県駅(仮称)と品川間はわずか10分! 駅周辺の環境が一変するリニア開業に向け、相模原市では駅と一体化した大規模なまちづくり計画を進行中です。

リニア地層
SDGsツアーの子どもたちの姿も。掘削でむき出しになった地層に興味津々

 今回、市が主催した「相模原市のオンリーワンを巡るツアー」では、特別に建設中のリニア駅を見学。資材運搬用の橋が立ち、約1/3の地下10mまで掘り進んだ工事の規模に圧倒されます。完成すると地下に隠れてしまうので、周囲の景色と比較しながらリニア施設のスケールを体感できるのは今だけという貴重な体験で、この日はSDGsを学ぶ子どもたちも訪れていました。

 相模原市では小中学生を対象に先端技術や再生可能エネルギーなどを通してSDGsを学ぶツアーを定期的に開催しており、今後も親子でリニア見学ができる機会がありそうです。

相模原スポーツレクリエーションパークが大人気

パーク
点字を表記した遊具や車椅子の子どもも遊べる砂場もある

 橋本駅の隣駅、JR横浜線相模原駅北口にある相模原スポーツ・レクリエーションパーク。東京ドーム2個分という約10haの広大な敷地に遊具広場、芝生広場、人工芝グラウンド、ボール遊び広場が整備されており、2020年から順次使用を開始。2023年には人工芝野球場がオープン予定です。

 こちらの特徴は、駅から徒歩約8分という便利な場所に充実した施設が集まっていること。小さな子どもから遊べる遊具広場の地面は足元を保護する舗装を採用し、障がいのある子どもも一緒に遊べるインクルーシブ遊具を設置。チョークで地面に落書きできるあおぞらキャンパスも大人気です。ボール遊び広場にはバスケットボールゴールのほか、テニスやサッカー、野球の壁当てができるスポーツウォールがあり、常ににぎわっています。

壁当て
手前がテニス、奥が野球・サッカー用の壁当てで、ストラックアウトなどができる

 これだけ広いパークが可能になったのは、相模原駅北口に広がる在日米軍基地(相模総合補給廠)の一部返還や共同使用が2000年代以降に実現したためで、パークはその共同使用区域にあります。かつて市内にあった米軍基地の跡地は公園や博物館などに活用されており、相模原市に公共施設が豊富にある背景となっていますが、パークと道をはさんだ返還地では大規模なまちづくり計画が進行中です。

絶品卵かけご飯が楽しめる「たまご街道」

たまごかけごはん
たまごかけごはん517円は卵2個つきで追加も可。具沢山の味噌汁とセットで836円。鶏メンチカツは2個389円

 郊外の直売所で特産品を探すのは楽しいものですが、養鶏場から直送の卵を購入できるのが相模原市の「たまご街道」。古くから養鶏が盛んな麻溝台地域では市道付近に鶏舎や直売所が点在しており、養鶏と住宅地が共存するための取り組みの中から生まれた食のスポットです。

 たまご街道にある7件の養鶏農家のひとつ、小川フェニックスの直売所「Sweet Eggs」に併設されたカフェで卵かけご飯をいただきました。しっかりと重量感のある卵を割ると色の濃い黄身が。白身の量もたっぷりで、まさに生きのいい卵。オリジナルの卵かけご飯専用しょうゆをひと垂らし。ものも言わずに食べ切ってしまうおいしさでした。

「卵かけご飯のおすすめは全卵をのせ、その上にもうひとつの黄身だけをのせる食べ方」「ゆで卵に向くのは採卵から数日たったもの」などおいしい食べ方のレクチャーも。こちらでは卵を産み終えた親鶏の身を生かしたメンチカツや、鶏糞肥料を農家の野菜栽培に活用するなどSDGsへの取り組みも行っています。

たまご
(左上)「Sweet Eggs」は土日祝は朝7時から営業(右上)独自配合の飼料で育てるブランド卵「鳳凰卵」と「鳳凰卵山吹」を販売(左上)プリンやシュークリームなどスイーツも人気(右下)相模大野駅すぐのボーノ相模原2階にある「sagamix」

 たまご街道の卵は、相模原産の特産品が集まる「さがみはらアンテナショップ sagamix」でも購入できます。こちらには生産者の顔が見える生鮮食品や、手土産にもおすすめの和洋のスイーツや地酒などが勢揃い。相模原の食の豊かさを実感できます。

小惑星探査機「はやぶさ」の故郷へ

宇宙探査フィールド
臨場感たっぷりの宇宙探査フィールド。一般見学は二階廊下からガラス越しに見下ろせる

 ツアーの最後に訪れたのは、JR淵野辺駅エリアにある宇宙航空研究開発機構 JAXA(ジャクサ)相模原キャンパス。宇宙探査や先端宇宙科学の研究・開発の拠点で、世界で初めて小惑星からサンプルを持ち帰ることに成功した「はやぶさ」、「はやぶさ2」もここで生まれました。

 まずは、宇宙科学探査交流棟へ。ここでは実物のロケットや探査機の模型などでロケット開発の歴史から宇宙開発の最先端までを学ぶことができます。次に、宇宙探査実験棟の宇宙探査フィールドを見学。425tもの硅砂を敷きつめて月や惑星の環境を模擬した実験場で、探査ロボットなどを走らせて研究開発を行います。壁や天井は黒く塗られ、照明も月の環境を再現されており、臨場感たっぷり。

 JAXA相模原キャンパスのもうひとつの使命が宇宙教育。学校と連携して宇宙教育の授業支援などを行ってきましたが、2022年8月からはオンライン配信教育プログラム(JAXAアカデミー)をスタート。宇宙についての知識を日本全国と、世界とも共有する取り組みが相模原市から広がっています。

展示
(左上)JAXA相模原キャンパスでは実際のロケットを間近に見ることができる(左下)宇宙科学研究の歴史が学べる宇宙科学探査交流棟(右)市立博物館の天文展示室。大型マルチモニターの迫力ある映像も見どころ

 また、JAXA相模原キャンパスと道をはさんだ所にある相模原市立博物館の天文展示室では、宇宙の映像や隕石資料などの展示で知識を深められます。直径23mの県内最大級のプラネタリウムドームでは迫力ある宇宙体験も。相模原市では、「宇宙とつながるまちさがみはら」をテーマにまちづくりを進めており、はやぶさが地球に帰還した「はやぶさの日」(6月13日)前後にはさまざまなイベントを開催しており、こちらも要チェックです。宇宙を身近に感じられるオンリーワンな体験をぜひ相模原市で!

取材・文/土倉朋子