2024年に北陸新幹線が延線する福井県。日々全国を飛び回っている薬膳アテンダントの池田陽子さんが、そんな福井のおすすや、注目スポットを紹介します。
三方五湖を望む絶景の宿で美食を楽しむ
福井県南部、若狭湾沿岸の嶺南地域にも注目スポットがたくさんあります。まず紹介するのは、嶺南中心部に位置する若狭町の宿「岡三屋 彩かさね」。わずか6室限定という宿は、風光明媚な三方五湖のたもとに位置するという絶好のロケーション。客室はすべてレイクビュー。天然温泉もあり、湯船から湖を眺めてくつろげるのも魅力です。
料亭で修業を重ねた板長による、地元の旬の食材を使った目にも美しい創作割烹料理も自慢。若狭の海の幸もズラリと揃います。この日は、ウスバハギ、イシダイ、うなぎ、のどぐろ、ブリ、そしてじつはいま福井が漁獲量日本一を誇る「サワラ」などが姿造り、焼き物、揚げ物などで登場。
銘酒とともに味わう至福のひとときが過ごせます。
三方五湖・日本海の絶景を楽しめる「天空のテラス」
宿で英気を養って、ここからが嶺南旅のスタート。嶺南のビュースポットとして高い人気を誇るのが、三方五湖・日本海の絶景を眺めながらドライブできる「三方五湖レインボーライン」。その第一駐車場からリフト・ケーブルカーで上った先にある「三方五湖レインボーライン公園」が2022年4月にリニューアル。
「天空のテラス」として、敷地内におしゃれな5つのテラスを新設。ソファ、カウンターデッキ、足湯などさまざまなスタイルで、そして360度さまざまな角度からバツグンの眺望を楽しめるので、何時間いても飽きることがない! ワーケーションにもよさそうです。
白木のテーブル席があるテラス。カフェでコーヒーと人気の「サバサンド」を購入してこちらで食べるのもおすすめです。
こちらはウッドデッキになったテラス。おうちを飛び出して、ワーケーションするのもよさそう! ほかにもカフェや甘味処も備えているので、青空のもと、1日ゆっくり楽しめます。
陰陽師・安倍晴明ゆかりのスポットを訪ねる
嶺南地区でおすすめしたいのが知る人ぞ知る、歴史スポット探訪。嶺南地区西部に位置する自然豊かなおおい町は、じつはかの陰陽師・安倍晴明ゆかりの町でもあります。名田庄地区は、平安時代に「泰山府君」の神領として安部氏が管領。晴明の子孫にあたる土御門家が移り住み、陰陽道の研究を行い3代にわたり天文暦学の道場を開きました。
おおい町には、日本でも珍しい暦と天文学に関する資料館「暦会館」があります、土御門家が暦、祈祷、易に使った資料や天文学、暦、易学などに関する貴重な資料が展示されています。
サイホンの原理で導管より定量の水を落として時刻を読みとる「漏刻計」は見るだけもでおもしろい! さらに土御門家が作成した暦や、朝廷や幕府へ天体の異変を分析し、吉凶を占った報告書など、当時を伺い知る貴重な資料を見ることができます。
土御門家入門免許状など貴重な資料を展示。学芸員さんの丁寧かつ楽しい説明で、これまであまりなじみがなかった陰陽道や暦が、興味深く、身近に感じられるのも魅力です。
陰陽道の儀式を感じられるスポット
暦会館の近くには、土御門家の子孫や系譜の方々が陰陽道の儀式を受け継いできた「天社土御門神本庁」があります。天社土御門神本庁。国道162号線から山間に入った場所にあり、静寂な空間。
社のそばには四色の鳥居に守られた「天壇」が設けられています。朱神聖な空間には、厳かな空気が流れ、陰陽道のパワーが感じられるようです。
町内には「土御門家御廟」や、陰陽道と深い関りをもつ「加茂神社」などのスポットもあるので、おおい町の里山風景を楽しみながら散策してみるのもおすすめです。
「西の鯖街道」で味わう絶品サバずし
おおい町は「西の鯖街道」ルート上にあります。一般的に鯖街道として知られているのは「小浜~京都」ルート。それ以外にも高浜市から入り、おおい町を通って京都に入る西の鯖街道とよばれるルートも。西の鯖街道は、丹波高地を挟み、福井県高浜町、おおい町名田庄、南丹市美山町、京都市右京区京北、京都市北区、そして京都御所を結ぶ街道です。じつはここが、福井県若狭地方と京都を結ぶ 最短ルート。そんな西の鯖街道で、知る人ぞ知る、こだわりのサバずしに出合いました。それは、おおい町名田庄「南川荘」。昭和20年創業で鮮魚などの行商からスタートした料理旅館です。京都や大阪で修業をされた島田恭宏さんによる鮎や、松茸、ぼたん鍋が名物ですが「サバの棒ずし」と「バッテラ」も大好評。
サバは若狭のものを使用。塩をして2、3日おいてから酢水で塩味をぬくなど脂とうま味を引き立てる工夫をこらしたサバを、龍皮昆布で巻いた棒ずし、バッテラに。写真はサバの棒ずし。龍川昆布のうま味がサバの味わいを引き立てます。お米は福井県産コシヒカリを使用。テイクアウトも。
やわらかな白板昆布とサバのとろける味わいが楽しめるバッテラは、味わいは淡く、優しい。ピシッとした矜持は感じつつも、上品な優しさ。そこに昆布がグイッと力強いうま味で寄り添います。やわらかな風味のサバとホコッとした甘味のあるシャリ。のどかで緑豊かなおおい町名田庄の風景に似合う味わいです。
冬場は山椒の効いた自家製の味噌を使った、地元の野菜たっぷりの「ぼたん鍋」が人気。
いかがでしたでしょうか。美しい風景、豊かな文化、食、歴史、美しい風景……。福井の魅力を存分に満喫するならぜひ、北から南まで縦断をおすすめします!
池田陽子さん
薬膳アテンダント、食文化ジャーナリスト、全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。宮崎県生まれ、大阪府育ち。立教大学社会学部を卒業後、広告代理店を経て出版社にて女性誌、ムック、また航空会社にて機内誌などの編集を手がける。カラダとココロの不調は食事で改善できるのでは? という関心から国立北京中医薬大学日本校に入学し、国際中医薬膳師資格取得。食材を薬膳の観点から紹介する活動にも取り組み、食文化ジャーナリストとしての執筆活動も行っている。趣味は大衆酒場巡りと鉄道旅(乗り鉄)。さばをこよなく愛し、全日本さば連合会にて外交担当「サバジェンヌ」としても活動中。近著に『中年女子のゆる薬膳。』(文化出版局刊)『1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日』(JTBパブリッシング)ほか、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)