ぷりぷりの若狭フグを堪能。冬の福井県小浜市で歴史とグルメの旅へ

福井県小浜市は、平城京・平安京の時代から朝廷に特別な海産物を献上する「御食国(みけつくに)」としても知られ、奈良時代に創建された寺社仏閣が多く点在しています。とくに冬は福井を代表するごちそう、若狭フグがおいしいシーズン。趣ある宿を拠点に、のんびり、ゆったり、歴史とグルメを満喫する冬の旅をご案内します。

自然に包まれた癒しの街、小浜

小浜市
国定公園の若狭湾に面した小浜市

 福井県の南西部、若狭地方のほぼ中央に位置する小浜市。小浜駅までは、京都駅から約2時間、名古屋駅・金沢駅からは約2時間30分。2024年春の北陸新幹線が開通により、ぐっと近くなります。

 小浜から京都へと繋がる道・鯖街道のトレッキングコースが人気。季節によって、おにゅう峠から幻想的な雲海を楽しめます。また、日本海の荒波がつくりあげた「蘇洞門(そとも)大門・小門」の景観は圧巻で、遊覧船で巡ることが可能。ほかにも、矢代の美しい海や、田烏の棚田など自然を満喫できる港町です。

小浜観光スポット
上、右下・人気の絶景スポット「おにゅう峠」。頂上には石碑が。左下・「蘇洞門 大門・小門」へは遊覧船で

「昔から奈良や京都と繋がり『御食国』としての歴史をもつ小浜市は、今も『食』に関してトップクラスの港町です。冬の小浜のおすすめは、なんといっても『若狭フグ』です。若狭フグは、もっともおいしく、高級と言われているフグの王様『トラフグ』で、おいしさの秘密は恵まれた環境で育つこと。リアス式海岸の穏やかな波の下でうま味を蓄え、冬の寒さが身を引き締めます。ほかと比べてひと味もふた味も違う若狭フグを、ぜひお召しあがりください」(若狭おばま観光協会・池田 歩さん)

国宝 明通寺の薬師如来

明通寺
鎌倉時代に再建された明通寺の三重塔と本堂

 現在も、国宝や重要文化財を中心とした古刹や仏像が数多く現存している小浜の街。なかでもぜひ訪れたいのは、平安時代初期の806年に創建された「明通寺(みょうつうじ)」。県内唯一の国宝の木造建造物である本堂と三重塔のほか、国の重要文化財でもある木造薬師如来坐像を含め3体の仏像など見どころ満載です。

 薬師如来さまが多い小浜。明通寺をはじめ、国分寺、羽賀寺、神宮寺、萬徳寺、多田寺、妙楽寺、圓照寺の「小浜八ヶ寺巡り」をするのもおすすめ。病気の治癒だけでなく、健康長寿や安産祈願などのご利益があるそう。

冬が旬の若狭フグはうま味たっぷり

若狭ふぐ
若狭ふぐの料理例。左上・てっさ、左下・から揚げ、右・しらこ

 冬の味覚、若狭フグは、よく身が締まってプリプリとした食感と歯ごたえ楽しめます。小浜市内の宿や飲食店では、さまざまな料理で提供。芸術品のような薄造りの「てっさ(ふぐ刺し)」をはじめ、アラもおいしくいただける「てっちり(ふぐ鍋)」、濃厚でクリーミーな「白子(精巣)」、ジューシーさがたまらない「から揚げ」など。冬の若狭フグ料理を目当てに毎年訪れる観光客も多いそう。

一棟貸しの古民家宿で小浜の暮らしを体感

小浜町家ステイ
左上・「西津湊かさまつ」、左下・「三丁町さのや」、右「丹後街道つだ蔵」の外観と内観

 国の重要伝統的建造物群保存地区を中心に、古民家をリノベーションした分散型ホテル「小浜町家ステイ」。小浜の暮らしや文化を体感できる一棟貸しの宿です。

 大正3年(1914年)建築の和菓子屋だった町家の蔵を改装した「丹後街道つだ蔵」や、伝統とモダンが融合した空間が広がる「三丁目さのや」、築100年以上の元酒屋をアイランド型の広いキッチンつきの空間へと再生した「西津湊かさまつ」など、7つの棟から選べます。

瞑想や農業で「五感の先をひらく」体験を

松永六感 藤屋
左・野菜を中心とした夜の精進料理の一例。右上・明通寺の麓に佇む。右下・薪ストーブを備えたラウンジ

 明通寺がある由緒ある地に2022年リニューアルオープンした「松永六感 藤屋」。「五感の先をひらく」プログラムが体験できる精進料理が自慢の宿です。美しい自然の中で土を踏み、野菜やハーブを収穫し、華やかな精進料理を食べ、静かに本を読み、早朝の明通寺の本堂で瞑想する。そんな非日常の時間を過ごせる空間です。

瞑想
静寂の中で瞑想し、五感を研ぎ澄ます

 国宝・明通寺で、早朝の瞑想「阿字観」を。明通寺の客殿でいただく白粥と白みその汁は、身体にやさしくしみ渡ります。ほかにも、全国でも珍しい壺仕込みを行う「とば屋酢店」での醸造所見学や、落差30mの三番の滝トレッキングなどオプショナルツアーも用意されているので、HP等でチェックしてみてください。

取材協力/若狭おばま観光協会

<取材・文>寺川尚美