グリーンラーメンから土蔵造りの町並みまで。冬の高岡市を歩く旅

加賀前田家2代目当主・前田利長が1609年に高岡城の城下町として開町し、400年余りの歴史をもつ富山県高岡市。銅器や漆器、菅笠など「ものづくりの技と心」が受け継がれ、「日本遺産のまち」としても知られています。今回は、歴史と伝統が息づく高岡のまちを巡る冬の旅ならではの魅力をご紹介します。

悠久の歴史と壮大な冬景色を巡る旅へ

高岡古城公園
高岡古城公園の雪景色

 富山県の北西部に位置し、市内の西側は山間地域、北東側は富山湾が広がるなど、自然が豊かな街、高岡。市内には、国指定史跡・高岡城跡で、桜の名所としても知られる高岡古城公園など、見どころがたくさんあります。

「冬の高岡といえば、冠雪した立山連峰を富山湾越しに望める雨晴海岸(あまはらしかいがん)。大気が冷え込み、海水との温度差により発生する気嵐(けあらし)は、より幻想的な絶景を演出します。その富山湾の幸は、やはり寒ブリと紅ズワイガニですが、それだけでなく旬のすしや地酒など、とにかくおいしい絶品ぞろいです。雪が舞い降る冬ならではの風情ある町並みも見どころのひとつ。歴史、景観、そして食。冬にこそ来てほしい高岡があります」(公社 高岡市観光協会・担当者)

 伝統工芸や祭礼・歴史的建造物が数多く受け継がれ、国の「日本遺産」にも認定された高岡。400余年の歴史が息づく町並みを、早速散策してみましょう。

商人の町で歴史的建造物を楽しむ

山町筋
土蔵造りの家が軒を連ねる「山町筋」

 高岡駅から10分ほど歩くと、「山町筋(やまちょうすじ)」があります。1609(慶長14)年の高岡開町以来、商都高岡を栄えてきた商人の町で、高岡御車山を所有することから「山町」と呼ばるように。1900(明治33)年の大火後、防火建築である土蔵造りの家が軒を連ね、現在は、重要伝統的建造物群保存地区として観光スポットになっています。

「𠮷久」の町並み
繊細な千本格子が目を引く「𠮷久」の町並み

 高岡駅から車で15分ほどにある吉久(よしひさ)の町並みも重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。藩政時代には収納米を納める越中で最大の加賀藩の「御蔵」があり、明治期まで米を扱う商人(米商)が多く住み、米の交易で栄えた町。旧道沿いの町並みは、幕末から昭和初期に建てられたもの。「さまのこ」と呼ばれる格子は桟が細かく間隔が細かいため、繊細な印象を与えています。

 また、高岡鋳物発祥の地でもある「金屋町」の千本格子と石畳が美しいたたずまいも必見です。

400年歴史を継承する伝統工芸品に注目

伝統的工芸品
左・高岡銅器、右上・越中福岡の菅笠、右下・高岡漆器

 開町より約400年続く高岡の伝統的工芸も見逃せません。農作業用の日よけや雨具として全国で古くから使われれていた「越中福岡の菅笠」は、「カサスゲ」を使って縫ったもの。

 力強さと繊細さしなやかさをあわせもつ鋳物「高岡銅器」は、大型仏像から花器、小物まで多種多彩。彫刻・錆絵(さびえ)・螺鈿(らでん)の技法を用いた「高岡漆器」は、凛とした品格を感じさせます。近年は、食器やインテリア製品など、デザイン性の高い新しいクラフト商品として注目が集まっています。

「高岡地域地場産業センター(愛称・ZIBA)」では、資料館や展示場があるほか、鋳物・漆器の体験教室も開催してるので興味のある人はチェックしてみて。

国宝指定された2つの名刹と大仏を参拝

高岡大仏
祭壇背後の円光背が特徴的な「高岡大仏」

 高岡駅から徒歩10ほどの場所に鎮座しているのが、奈良・鎌倉と並ぶ「日本三大仏」のひとつ「高岡大仏」です。約30年の歳月をかけ、市民の浄財と高岡鋳物職人の手によって建立。高さ約16mある巨大な青銅製の阿弥陀如来坐像で、地元民からは「だいぶっつぁん」と呼ばれ親しまれています。

瑞龍寺
一直線に並ぶ伽藍配置が壮大な「瑞龍寺」

 富山県内で国宝指定された寺院があるのは、ここ高岡だけ。1つ目が、高岡駅から徒歩10分、新高岡駅からも徒歩15分と好アクセスな立地にある「国宝 高岡山 瑞龍寺(ずいりゅうじ)」で、高岡の開祖・前田利長公の菩薩寺として建立された禅宗寺です。総けやきの重層入母屋造り杮葺きの「山門」のほか、「仏殿」「法殿」が、近世寺院建築の傑作と称され国宝に指定されています。

勝興寺
「勝興寺」は、12棟すべてが国の重要文化財

 2つ目が、新高岡駅からは車で20分ほどにある「国宝 雲龍山 勝興寺」で、真宗王国越中における代表的寺院。本堂をはじめ、大広間や書院など、12棟すべてが国の重要文化財に指定され、20年余りに渡る「平成の大修理」によって江戸後期の壮麗な姿に蘇りました。そして、2022年12月、「本堂」と「大広間及び式台」が国宝に指定されました。「実ならずの銀杏」や「屋根を支える猿」、「魔除の柱」など古来から伝わる七不思議も有名。

銘酒とともに、富山湾の冬の味覚を堪能

冬の味覚
左・地酒・勝駒、右上・シロエビ、右下・紅ズワイガニ

 日本有数の深い湾のひとつである富山湾は、「巨大な天然のいけす」と呼ばれ、白エビや甘エビ、バイガイなど1年中おいしい海の幸が味わえます。なかでも冬の味覚と言えば、ブリや紅ズワイガニ。脂がのった鮮度抜群のブリは、刺身はもちろん、ブリしゃぶ、焼き物、ブリ大根など多彩な料理で楽しめます。

 県産の紅ズワイガニのなかでも、一定の規格を満たした「高志の紅ガニ」は必食。富山湾は漁港から漁場が近いために鮮度がよく、肉厚な身の甘さとミソの濃厚さがたまりません。

 水晶のように透きとおった姿から「富山湾の宝石」と称される白エビの漁を行っているのは富山湾のみ。独特のとろりとした食感で上品で濃厚な甘味がやみつきに。地元の飲食店では、刺身やすし、昆布〆、すまし汁、唐揚げなどで提供されています。

 富山の地酒のなかでもカリスマ的人気を誇る、高岡市「清都酒造場」の銘酒「勝駒」と味わえば、富山の味覚をより堪能できます。

地元食材をいかしたB級グルメも味わおう

高岡グリーンラーメン
あっさり味の「高岡グリーンラーメン」

 旅先でぜひチェックしたいのがご当地B級グルメ。コロッケ消費量が全国有数であることから、町おこしとして誕生したのが「高岡コロッケ」。白エビを使ったぜいたくな1品など、市内の精肉店や飲食店で提供されているので、小腹が空いたときにぴったり。

 全国的に知名度が高い「富山ブラック」に対抗すべく考案され、今では学校給食にも普及されている「高岡グリーンラーメン」。豚骨ベースのスープに、地元産ホウレンソウをすりつぶし、ユズゴショウであえたチャーシューの細切りを入れたもの。特製の辛みそを溶かして味変を楽しむのもおすすめとのこと。

ととまる
高岡流お好み焼き「ととまる」

 最後に紹介するのが、高岡流お好み焼き「ととまる」。「とと」とは「魚」の意味で、その「とと」を丸い形にして焼くことから「ととまる」と名付けられたそう。ニギスやトビウオなど、地元では馴染みのある魚のすり身と、全国消費量1位(富山県)の昆布を使用するのが高岡流。ひと口食べれば、魚のうま味が口の中に広がってやみつきになります。

■高岡市観光ポータルサイト「たかおか道しるべ

取材協力/公益社団法人高岡市観光協会

<取材・文>寺川尚美