芭蕉が愛したお風呂も。温泉郷「加賀の國」で湯巡りを楽しむ旅

石川県の南エリアに位置する「加賀の國」。山中温泉・山代温泉・片山津温泉・あわづ温泉・辰口温泉・白山温泉と6地域に温泉郷があり、古くから湯治場としても知られてきました。それぞれ異なる歴史、泉質、風情をもつ温泉地を紹介します。

1泊2日で湯巡りが楽しめる加賀の國

加賀片山津温泉 総湯
「加賀片山津温泉 総湯」の森の湯

 山中温泉・山代温泉・片山津温泉・あわづ温泉・辰口温泉・白山温泉6つの地域からなる温泉郷「加賀の國」。四季折々の里山や海の幸に恵まれたこのエリアは、リピータ―が多いことでも知られています。

「加賀の國の魅力は、なんといっても多彩な温泉地があるところです。距離が近いため、車を利用すれば1泊2日ですべての温泉地を巡ることもできます。泉質もそれぞれ異なるので、お湯比べをしてお気に入りを見つけたり、地域のコミュニティに触れたり、日常では味わえない体験ができますよ」(加賀地域連携推進会議・越川達也さん)

 片山津温泉、あわづ温泉、山代温泉、山中温泉への拠点となるJR加賀温泉駅までは、金沢駅から特急で約25分と好アクセス。今回は、初心者にもおすすめの5つの温泉スポットをご案内します。

霊峰白山を望む湖畔にある片山津温泉

「加賀片山津温泉 総湯」の外観
「加賀片山津温泉 総湯」の外観

 日本三大霊峰のひとつ、白山が望める柴山潟湖畔にあるのが片山津温泉。1653(承応2)年、大聖寺藩主・前田利明が、水面に群れるカモを見て湖底の温泉を発見したとの言い伝えが。泉質は、ナトリウム・カルシウム塩化物泉で、保温効果があり湯冷めしにくく、女性に多い冷え性にも効能があると言われています。

 こちらでぜひ訪れたいのが、温泉文化を継承しつつ、地元客との交流も楽しめる温泉観光施設「加賀片山津温泉 総湯」。周辺の自然に溶け込むような、全面ガラス張りの建物が特徴的。柴山湖畔沿いの遊歩道を散策したり、併設のカフェでひと息ついても。

潟の湯
「加賀片山津温泉 総湯」の潟の湯

 館内には、「潟の湯」と「森の湯」2つの浴室があり、日に七度色を変えるという美しい湖面や、雄大な白山連峰を望める絶景のロケーションです。

伝統芸能も息づく、 松尾芭蕉も愛した山中温泉

山中温泉総湯 菊の湯
「山中温泉総湯 菊の湯」の左が女性浴場、右が男性浴場

 大聖寺川がつくる緑豊かな鶴仙渓(かくせんけい)沿いにあるのが、奈良時代の高僧・行基が発見したと伝えられている山中温泉。奥の細道の旅の道中、松尾芭蕉が「山中の温泉は体の芯までしみわたり身も心も潤す」と称賛した名湯としても有名です。

 芭蕉の句「山中や 菊は手折らじ 湯の匂ひ」から命名された「山中温泉総湯 菊の湯」は、開湯以来約1300年変わらぬ場所で親しまれています。男女別の建物は、天平風の優美なつくり。男性浴場の前では源泉でつくる温泉卵が、女性浴場に併設する「山中座」では毎週末に伝統芸能「山中節」が楽しめます。

北陸最古の温泉地・温泉宿に出会えるあわづ温泉

法師
左/温泉宿「法師」の外観と男性大浴場、右/女性大浴場と露天風呂

 小松市に位置するあわづ(粟津)温泉は、加賀の國でももっとも古い、718(養老2)年開湯の北陸最古の歴史を誇る温泉地。白山開山の祖・泰澄大師が、霊峰白山での修行の際、夢のお告げどおりに掘ったところ温泉が湧出したという伝説が。その弟子である雅亮法師が建てた湯治宿が、北陸最古の宿「法師」です。

 自慢の風呂は、芍谷石(しゃくだにいし)とインド砂岩をふんだんに使用し、一層柔らかい泉質が体感できる天然温泉。移ろいゆく景色を愛でながらゆったりとした時間を。

「法師」の庭園
老舗旅館「法師」の庭園

 また、江戸時代に基本作庭されたといわれる庭園も見逃せません。約2650㎡の庭園は、令和4(2022)年に国の登録記念物(景勝地関係)に登録され、大正時代から昭和初期に流行した造園手法など時代変遷が見て取れる、風数の池泉や築山、灯籠の石造物が配置され、回遊を楽しむことができます。

1400年の歴史を誇る辰口温泉

たがわ龍泉閣
「田んぼの湯」で知られる老舗旅館「たがわ龍泉閣」

 日本海にも白山麓にも近い里山にあり、金沢の奥座敷として人気なのが能美市の辰口(たつのくち)温泉。1400年近い歴史を持つ古い温泉で、度重なる洪水によりいったんは没してしまいましたが、1836(天保7)年に、近隣の農民が薬師如来のお告げで温泉を掘り当てたのが始まりとされています。泉質はナトリウム泉で、身体の疲れや冷え性の改善、さらに美人の湯としても評判です。
 なかでも、里山の風景が堪能できる露天風呂を備えるのが老舗旅館「たがわ龍泉閣」です。

「田んぼの湯」
昔懐かしいを田んぼの風景をイメージした「田んぼの湯」

 最大の魅力は、6つの湯巡りが楽しめる混浴露天風呂「田んぼの湯」。春にはそよ風になびく早苗、夏は新緑、秋は刈田の赤とんぼなど、季節折々ののどかな里山の風景を満喫できます。

多種多様な15の温泉が点在する白山温泉郷

白峰温泉総湯
霊峰白山のお膝元にある日帰り温泉施設「白峰温泉総湯」©白山市観光連盟

 山、川、海と表情豊かな自然に抱かれた白山温泉郷。白山の麓から日本海に面した手取川まで広大な白山市全域には15もの温泉地が点在。泉質が異なる多種多様な温泉が市内のあちこちにわき出ているため、白山温泉内だけでも湯巡りが楽しめます。

 ぜひ訪れたいのが、重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている白峰地区の中心部にある温泉施設「白峰温泉総湯」です。

桧の露天風呂
大自然の息吹が感じられる桧の露天風呂©白山市観光連盟
岩風呂
男女週替わりで岩風呂にも浸かれる©白山市観光連盟

 泉質は、全国でも希少な「純重曹泉」。絹肌の湯といわれるほどなめらかで、湯上りの肌がつるつるになると評判です。大浴場、露天風呂ともに男湯と女湯が週替わりで交代し、趣きの異なる湯船や眺望が楽しめるのも魅力です。

取材協力/加賀地域連携推進会議