やちむん大好き女子アナがレポート。沖縄では珍しい茶道具をつくる「陶眞窯」

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第42回:池田麻里子アナ]―

全国47都道府県で活躍する女子アナたちがご当地の特産品、グルメ、観光、文化など地方の魅力をお届け。今回は沖縄に移住した池田麻里子アナが、沖縄の歴史ある「やちむん(焼き物)」の一種、「壺屋焼(つぼややき)」の工房をレポートします。

沖縄では珍しい「やちむんの茶道具」の壺屋焼工房

池田アナ

 沖縄土産に「やちむん」の伝統工芸品やシーサーなどを買ったことのある方は多いのではないでしょうか。沖縄ではたくさんの陶芸家や職人が窯をもち、工房を構えていらっしゃいます。筆者は武家茶道織部流をたしなんでいることから、陶芸作品がとても好きで、沖縄のやちむんもあちこち見て回っています。

 じつは沖縄で師範としてお茶のおけいこをしたいなぁとも思っているのですが、もともと琉球王国だった影響か、いわゆる日本の茶道文化はあまり浸透していない印象で…。筆者が住む沖縄県北部にはお茶室もない(お茶室のある新築物件というのを見たところ、お茶室ではなくただの和室だったり)、練り切りが販売されている和菓子屋さんもない…ということで、移住後、茶道具は手元にそろっているものの、随分と茶道から遠ざかっておりました。

 やちむんはすてきだし、「やちむん市」があればすかさず駆けつけるのですが、茶道に使うお茶碗はほとんど見かけません。そりゃ、需要がないのですから職人さんもつくりませんよね。

壺屋焼のお茶碗

 ところが先日、読谷村(よみたんそん)にやちむんが並ぶカフェがあるということで、楽しみに訪ねた「やちむん&カフェ群青」に併設されているショップで、すてきなものたちに出合ってしまったのです。そう、お茶道具です。数々並ぶやちむんのなかに、お茶碗をはじめとした、茶道具があるではないですか!

 これはただごとではないと、お店のスタッフに、だれがつくっているのか、作者はお茶にどれほど興味がある方なのかと尋ねたところ、なんと敷地内にお茶室も建てられるほど茶道愛好家の陶芸家が制作されているとのこと。その方こそが、カフェの隣に構えられた工房、陶眞窯(とうしんがま)の親方で壺屋焼きの陶芸家、相馬正和さんでした。

県外出身者初の、壺屋焼の陶芸家

相馬正和さん

 壺屋焼とは、沖縄の陶芸のなかでもとくに素朴で力強い、沖縄の風土そのものを感じられるような技法が特徴のやちむんです。大別すると、釉薬(ゆうやく。うわぐすりともいう)をかけ、1200℃の高温で焼き上げる、日常使いのものが多い「上焼」と呼ばれるものと、釉薬をかけずに1120℃前後で焼き上げる、南蛮焼きとも呼ばれる「荒焼き」があります。おもに沖縄県内の陶土を使ってつくられます。

 相馬さんは昭和24(1949)年に横浜で生まれ、その後、日本全国、韓国にまで陶芸の修行に回り、昭和47(1972)年に壺屋焼の伝統工芸士、高江洲育男氏に師事。昭和50(1975)年に恩納村で独立を果たされ、陶芸家として数々の受賞を重ねられました。県外出身者では初の壺屋焼の陶芸家です。

 壺屋焼きにたずさわって約半世紀、現在は県外へのお茶会へ出席されたり、毎週おけいこへとお出かけになられたりと茶道もたしなまれていらっしゃるそうです。

数か月かけてつくる作品もある壺屋焼

工房の分担作業の様子

 筆者はカフェ店頭に並んでいたお茶碗に一目ぼれし、夫は店先にドーン! と構えていた巨大シーサーに一目ぼれしてそれぞれ購入することになりました。その日は工房がお休みだったので、後日、受け取りに来たときに、スタッフさんが「ぜひ工房の見学も」と提案してくださり、今回のレポートが実現しました。

 陶眞窯の工房では19名のスタッフが働いており、職人さんは3名、職人見習いさんは7名いらっしゃるそうです。陶器の形をロクロでつくる工程、絵つけをする工程、釉薬をかける工程、焼く工程や仕上げ作業の工程など分担されており、息の合った動きで数々の作品が仕上がっていきます。

 作品を焼く窯は、最高温度が1230℃にも上がるそうです。温度を調節するための小さな道具など、目に映るすべてのものが新鮮でした。

 職人さんたちの目は真剣そのもので、本当にカッコイイんです。すべての手作業が、まさに日々の鍛錬の賜物で、お皿やグラスひとつとっても、大きさや形など寸分のくるいなく次々とでき上がって並んでいく様は、目を見張るものがありました。

工房の中の様子

 陶眞窯では月曜日と木曜日の週2回、焼き上がった作品を窯から出します。窯に入れたら、1日目はひたすら焼く作業。2日目は丸1日かけて冷まし、3日目にようやく取り出すということです。なかにはさらに長時間焼く作品や、数週間から数か月かけてつくられる作品も。ケーキやパイを焼くのとは訳が違いますね。

 形成した作品を乾燥させてから一度、窯で焼く工程を素焼きといいます。その後に絵つけをしたり、釉薬をかけたりと次の工程に進み、最後の焼き上げをします。作品ができる過程で2回も焼く工程があるとは知りませんでした。
 一度焼くだけで完成するタイプの作品もあるそうですが、ほとんどが2回焼く工程を経るそうで、その手間に驚きです。数々の工程を経て、私たちの手元に届いたり、芸術作品として誕生するんですね。

陶芸や絵付け体験も受付中

ピザとショップ

 陶眞窯ではシーサーづくりや器づくり、お皿への絵つけや、ロクロ体験など、各種体験も可能。予約は電話からもwebからもに受け付けています。工房見学では、陶芸を体験された方達のかわいい作品が、焼かれるのを待つように並んでいました。

 工房正面には作品がずらりと並ぶショップもあります。個人的におすすめなのは、すぐお隣の「やちむん&カフェ群青」でおいしい窯焼きピザを陶眞窯作のやちむん皿で味わってから、カフェ内併設のやちむんショップを眺め、陶眞窯の工房&ショップに移動するコースです。

 工房の定休日(日曜日)もカフェはオープンしているので、すてきなやちむんたちに囲まれながらのんびり過ごすのもいいですね♪

<取材・文・撮影/池田麻里子>

池田麻里子さん
東京・埼玉・宮崎・沖縄を担当。テレビ宮崎の「スーパーニュース」でスポーツキャスターを務め、J:COMデイリーニュース担当、ネットニュースなどにも出演。現在はFMやんばるにてパーソナリティーを務める傍、やんばる経済新聞の記者としても東奔西走している。話し方・見せ方・聴き方などのコミュニケーション力向上の講座を開き、講師も務めている。

―[地方創生女子アナ47ご当地リポート/第42回:池田麻里子]―

地方創生女子アナ47
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