全国各地で広がりを見せる仕事と休暇を兼ね備えた「ワーケーション」。今回は、岐阜県郡上(ぐじょう)市のワーケーションをクローズアップ。源流域の川・水と触れ合い、心身を整える効果が期待できる「源流ワーケーション」の魅力をご案内します。
いのちのゆらぎを取り戻す!源流ワーケーション
「豊かな自然に囲まれた郡上市は、清流長良川をはじめとする多くの河川の源流域に位置していて、日々、身近なところで水の流れを感じることができます。また、郡上は面積が広く多様な自然環境や生活文化に触れられることから、『いのちのゆらぎを取り戻す』を郡上のワーケーション滞在のコンセプトにしました。専用のウェブサイト『源流ワーケーション 岐阜郡上』を公開し、個人向けの滞在プランや施設情報を掲載しています」(郡上市役所政策推進課・岩井彩乃さん)
城下町の郡上八幡、古今伝授の里である大和(やまと)、白山信仰の文化が息づく白鳥(しろとり)、高原が広がる高鷲(たかす)、長良川の恵みあふれる美並(みなみ)、せせらぎ街道が続く明宝(めいほう)、日本有数のアユの産地、和良(わら)の7つのエリアからなる郡上市。個性の異なるエリアの中から、八幡、大和、明宝で過ごすワーケーションの一部をご紹介します。
城下町・郡上八幡で伝統的な水辺の暮らしを体験
郡上市の中心市街地で、奥美濃の山々に囲まれた郡上八幡は見どころも多数。郡上八幡駅の駅舎カフェで、コッペパンなどでおなかを満たしてから散策へ。
江戸時代の風情が残る城下町のシンボルといえば「郡上八幡城」。江戸時代は郡上藩の歴代藩主の城であり、現在の天守は昭和8(1933)年に建てられた日本最古の木造再建天守。近年は、朝霧に浮かぶ姿から「天空の城」としても人気を集めていて、「続日本100名城」に選定されています。
メインの新町通から1本入った「やなか水のこみち」もおすすめ。長良川と吉田川から集めた8万個の玉石を敷き詰めた道と、その脇を流れる水路、柳の木立により、風情あるひとときを過ごせます。
日本一長い盆踊りとして有名なのが、毎年7月から9月にかけて計31夜にわたって行われる「郡上おどり」。観光客も参加できる伝統的な盆踊りです。とくに、お盆の8月13日から16日は、徹夜で踊り明かす「徹夜おどり」は圧巻。
眼下に吉田川を眺めながら仕事ができるのが「HUB GUJO」。元紡績工場をリノベした船着き場が残るデッキつきの清流コワーキングスペースです。徒歩3分内に、プールやスーパーなどもあるので便利です。
まちの中心部に位置する「タテマチノイエ」は、郡上八幡の伝統的な町家をリノベーションしたゲストハウス。トライアルキッチンや食堂などを併設しているので便利です。そのほか、ライトアップされた郡上八幡城の天守閣が望める「やなかの大助」や、吉田川沿いに建つ「蘘荷渓房(じょうがけいぼう)」など、一棟貸しの町家もいくつかあります。
和歌文化が満喫できる大和町で感性を研ぎ澄ます
「古今伝授の里」または「和歌の里」と呼ばれる大和エリア。鎌倉時代から室町時代にかけて郡上を治めた東氏が、藤原定家の流れをくむ和歌の名家だったことが由来しています。
「古今伝授の里フィールドミュージアム」は、歴史的な遺産が集まる東西2kmに及ぶ一帯で、光と空間をぜいたくに使ってデザインされた建物を配した和歌をテーマとした野外博物館。和歌や短歌にちなんだ展示やイベントが行われるほか、フレンチレストランやカフェも併設されています。領主・東氏の居館に作庭された「東氏館跡庭園」も施設の一部として公開されていて、国指定名勝のひとつです。
ミュージアム内のカフェ「よぶこどり」は、ワーキングが可能。1万4000冊の歌本に囲まれながら、地元のお母さんが手づくりするランチを味わっても。
宿泊は、道の駅「古今伝授の里やまと」に隣接したホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜郡上」へ。客室やロビーでテレワークできる環境が整備されています。
和歌と歴史の世界に思いを馳せながらゆったり過ごせるまちです。
季節の移ろいを体感できる里山・明宝で古民家ステイ
総面積の約95%が山林という自然に包まれた明宝エリア。里山でゆっくりワーケーションをと考えている人にぴったりな場所です。
4月下旬から5月の連休にかけて見頃を迎える「國田家の芝桜」。里山の斜面一面に広がるピンクや白、薄紫色の花畑は、過去に「農林水産大臣賞」や「内閣総理大臣賞」を受賞した名所。昭和36(1961)年頃から「花咲ばあちゃん」こと故・國田かなゑさんが家の土地にコツコツと植えて育てた花畑で、今は地域で守り伝える人気の観光スポットになっています。
郡上八幡と飛騨高山を結ぶ「飛騨美濃せせらぎ街道」の中ほどにあるのが「道の駅明宝」。山里の四季折々の景色と、清流・吉田川を望む「磨墨の里公園」が隣接したせらぎ街道随一のビュースポットです。物産館では名物「明宝ハム」をはじめ、地場産品を販売。「休憩処 磨墨庵(するすみあん)」では、800年間燃え続ける「千葉家」の囲炉裏から分火した囲炉裏で焼いたアマゴやイワナを、公園を眺めながら楽しむことができます。
明宝の地域密着型中間支援組織が運営する施設「コミュニティカフェななしんぼ」のカフェスペースではテレワークが可能です。併設された工房では、地域の資源を使ったモノづくり体験も。
明宝では古民家でゆっくりと。1軒目が、築150年とも伝わる「民宿しもだ」は、3年前に改装した快適な宿。飛騨牛の陶板焼やシシ鍋など季節の料理も評判です。農作業や川遊びなどの体験もできるそう。
2022年11月に古民家を改修してオープンした「ななつやステイ」は、長期滞在やワーケーション利用をする人も対応できるよう設計されています。小川の自然豊かな風景を眺めながら作業ができるワーキングスペース、地元住民との交流の場でもある土間スペースや大広間、キッチンも完備しています。
郡上でしか味わえない大人の川遊び
郡上は昨今、川遊びやキャンプ、ウィンタースポーツなど年間を通して多様なアクティビティが楽しめアウトドアの聖地としても注目を集めています。
春夏の川遊びのおすすめは、ラフティング、シャワークライミング(沢登り)、SUPなど。18歳以上限定の大人のための外遊びで、初心者でも安心・快適に参加できると好評だそう。
「『外遊びが未来を変える』をコンセプトにした、郡上のアウトドア専門のサイト『GUJO Outdoor Experiences』を公開しています。また、『今だけ』、『郡上だけ』のオリジナルの野外体験が予約できる専用サイト『郡上ノアソブ』もオープンしましたので、ぜひチェックしてみてください」(岩井さん)
取材協力/岐阜県郡上市役所 政策推進課
<取材・文>寺川尚美