30万人が参加、徹夜で踊る「郡上おどり」が4年ぶりに開催

岐阜県郡上(ぐじょう)市で、江戸時代から約420年間、歌い、踊り継がれてきた「郡上おどり」が、4年ぶりに通常開催されます。夏の約30日もの間、毎晩繰り広げられる日本一長い盆踊りは、観光客が気軽に参加ができるのが魅力。浴衣や下駄をレンタルして、地元民とともに踊り明かすことも可能です。

30万人以上が参加する壮大な盆踊り「郡上おどり」

郡上おどり
“日本三大民謡踊り”のひとつと言われる「郡上おどり」

 毎年7月から9月に約30夜行われる、岐阜県郡上市の夏の風物詩「郡上おどり」。30万人以上を動員する壮大な盆踊りで、2022年には、「郡上おどり」と明宝地区の「寒水の掛踊(かのみずのかけおどり)」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。

「見て楽しむよりも、ぜひ参加して楽しんでいただきたい『郡上おどり』。だれでも、どんな服装でも、気軽に輪の中に入って手や足を動かしているうちに、自然と踊れるようになるのがおもしろさであり魅力です。小さな子どもから年配者まで、地元の人も観光客もみんな一緒に輪に入って、三味線・太鼓・笛・唄囃子に返し言葉やかけ声、下駄の声で応えながら踊ります」(郡上おどり運営委員会 事務局・蒲 明徳さん)

徹夜おどり
20時~翌朝5時までの最長9時間踊り明かす「徹夜おどり」

 今夏は、7月15日のおどり発祥祭に始まり、9月9日のおどり納めに至る31夜。お盆の徹夜おどりは、8月13、14、15、16日の4日間。4年ぶりの通常開催は、盛り上がること間違いなしです。

「郡上の夏はおどりに始まり、おどりに終わる」と言われるように、30夜以上のロングラン! 踊る場所は一夜一会場で、あちこちの縁日・祭りにちなんで行われ、この町の歴史や伝統を感じながらひと夏で市街を一巡します。時には数千人が一団となり、音頭や囃子に合わせて手拍子を整え、下駄を鳴らしながら踊る姿は壮観! とくにお盆4日間の『徹夜おどり(徹夜踊り)』では、七重八重の輪が広がり、郡上おどりならではの一大絵巻が繰り広げられます」(蒲 さん)

軽快なテンポで踊る「白鳥おどり」も人気

白鳥おどり
白鳥町内の市街地で軽快に踊る「白鳥おどり」

「郡上おどり」と並んで奥美濃を代表する「白鳥おどり」は、切子灯籠を吊るし、その下で軽快なテンポで踊ることが特徴です。痛快なテンポの踊りは「白鳥マンボ」とも呼ばれ、とくに若い世代に人気があるそう。

白鳥拝殿おどり
神社で開催される「白鳥拝殿おどり」

 お盆につるし、仏教に深いつながりがあるキリコ灯籠は、神仏習合の時代に長滝白山神社の拝殿につるされたことから各地の神社でも用いられるようになったと言い伝えられていて、白山信仰の深さがうかがえます。

 今夏は、7月9日から9月24日まで。とくに8月の13、14、15日のお盆には、キリコ灯籠で照らされた屋台を囲み、全国から集まった踊り好きと地元の人たちが、東の空がうっすらと明けるまで踊り明かします。

浴衣も下駄も現地で揃えられる

浴衣レンタル
浴衣をレンタルできる、左・「紙岩呉服店」、右・「石山呉服店」

「郡上おどり」は服装も自由だけど、地元民と同じく浴衣で楽しむのもおすすめ。浴衣で踊ってこそ、所作の美しさや意味が分かるものがあるはずです。現地には、浴衣レンタル&着付をしてくれる呉服屋さんもあるので早速利用してみよう。

 創業約70年の老舗「石山呉服店」では、郡上おどり保存会の会員でもある女将デザインのオリジナル浴衣も用意。郡上八幡の街中に店を構える「紙岩呉服店」では、男女ともに様々な浴衣を揃え、着付けも行ってくれるので安心です。

下駄の老舗
オリジナルの下駄が購入できる、左・「岸山履物店」、右「郡上木履」

 下駄は、カーンカーンと鳴らす音で悪霊を追い払うという意味合いのほかに、リズムを合わせるのに欠かせないアイテム。「郡上おどり」の曲目のひとつ「春駒」は、下駄を打ち鳴らす動作が多く、下駄を鳴らして踊るのがだいご味です。町内には、「おどり下駄」が購入できる店舗も。世界にひとつの下駄をオーダーメイドしてみては?

 明治4(1871)年創業の「岸山履物店」ではオリジナルの下駄を販売。郡上おどり会場から近いので便利です。郡上の山で育ったヒノキを活用したメイドイン郡上の下駄を企画・製造・販売する「郡上木履」。ヒノキ踊り下駄が3150円から購入できます。

 また、「郡上おどり」には手ぬぐいも必須。男性は首から、女性は浴衣の襟元や帯に手ぬぐいをかければ、もう立派な踊り子に。町のおみやげ屋さんや郡上八幡博覧館、「郡上木履」などでもオリジナルの手ぬぐいを入手できるので、お気に入りの1枚を見つけて。

■郡上市公式HP「郡上おどり」、一般社団法人 郡上市観光連盟「TABITABI郡上」

取材・写真協力/郡上おどり運営委員会事務局

<取材・文>寺川尚美