「肉ばっかり食うな!コメ食え」鬼嫁たちが愛を叫ぶコンテスト開催

[やのひろみの「四国COLOR」第1回]

 愛媛県を中心にテレビ・ラジオ番組のパーソナリティーとして活躍中のやのひろみさんが愛媛県はもちろん四国や全国各地で行われている変わったイベントに、時にはスタッフとして時にはインタビュアーとして参加しつつ、その様子をお伝えします。

鬼北町は全国で唯一、鬼の入った町名

 愛媛県北宇和郡にある鬼北町(きほくちょう)は全国1741の自治体で、唯一「鬼」の文字が町名に入っている町です。当然「鬼」に特化した町おこしがいろいろと行われています。たとえば町内にある2つの道の駅には造形作家・竹谷隆之さんと世界的フィギュアメーカー海洋堂が手かけた鬼の銅像が建っています。

道の駅・森の三角ぼうしの鬼王丸(おにおうまる)©︎竹谷隆之/鬼北町
道の駅・森の三角ぼうしの鬼王丸(おにおうまる)©︎竹谷隆之/鬼北町
道の駅・日吉夢産地の柚鬼媛(ゆきひめ)©︎海洋堂/鬼北町
道の駅・日吉夢産地の柚鬼媛(ゆきひめ)©︎海洋堂/鬼北町

 いずれも全長5メートルの巨大モニュメント。どちらの像も人気ですが特に柚鬼媛は、家内安全・縁結び・安産祈願を叶える鬼王丸の母(抱いているのは幼い鬼王丸)と某有名アニメのキャラに似ているということで、全国から見物客が絶えません。

 鬼力(?)のご利益か、道の駅森の三角ぼうしの宝くじ売り場では1億円当選が何本も出ているそうで、ご利益を求める人が全国各地からやってきます。

鬼嫁コンテストに参加した人たちの叫びとは?

 そんな鬼北町で行われているのが「愛ある鬼嫁コンテスト」です。このコンテストは「鬼嫁部門」、「鬼嫁部門の夫部門」、「鬼嫁の子供部門」と3つにわかれて大声で普段感じていることを叫び声の大きさと叫んだ内容、インタビューで語るエピソードに愛を感じたかどうかを総合して審査が行われます。昨年12月に開催されたコンテストはあいにくの空模様でしたが、その雨をもろともせず、参加者たちは思い思いに家族への不満や愛を叫んでいました。

「鬼嫁の夫部門」で登場した男性は、喧嘩したあとこちらが謝るまで絶対に口を聞いてくれず完全無視をするという嫁に対して

「俺、ここにいるよ〜〜!」

 と絶叫。

 また、別の出場者はちょうどお子さんを寝かしつけるタイミングで帰宅してしまうことが多く、帰宅するなり「シー!あっち行って!」と言ってくる嫁に対して

「おかえりって言って〜〜〜〜〜!」

 とせつなく叫び、会場中が爆笑しました。

鬼嫁に対する不満を天に向かって叫ぶ参加者
鬼嫁に対する不満を天に向かって叫ぶ参加者

「鬼嫁の子ども部門」ではお母さんへの感謝や愛情をかわいらしく叫ぶ幼児が多いなか、中学生の女子が登場し、ブチ切れたとき「あんた馬鹿じゃないの!!」というのが口癖な母親に対して

「馬鹿馬鹿ばっかり言って!アタシは馬鹿じゃない!」

 と日頃のストレスを大声でアピール。でもこの子、インタビューをしてみると学校の成績はとても優秀だそうで、会場ではお母さんがマスク姿で隠れるように座っていたのが印象的でした(笑)。

 そして、このコンテストの真打である「鬼嫁部門」に登場した鬼嫁たちは

「お前らのために、怖くなっとんじゃい!!!」
「肉ばっかり食うな!コメ食え〜〜〜〜!」

「台湾から来て結婚10年だけど、いい加減プロポーズしろ〜〜〜!!」(残念ながら夫は海外出張で会場に居らず)

かわいい子鬼2人と手を繋いで叫ぶ鬼嫁
かわいい子鬼2人と手を繋いで叫ぶ鬼嫁

などといった怒りの叫びや

「毎朝起こしてくれてありがと〜〜〜!!!」
「赤ちゃんは難しいとお医者さんに言われたけど、デキた〜〜〜〜!!」

と大きいお腹を抱えて喜びを爆発させる人なども登場し、会場全体が大きな笑いや温かい拍手に包ました。

 審査員の鬼北町長や、自身も2児の母である愛媛県出身のものまねタレント・みかんさんなどがときには爆笑しつつ真剣に審査を行い、「鬼嫁の夫部門」では鬼のパンツで登場し

「子ども3人産んでくれてありがとう!」

と感謝の気持ちを叫んだ63歳の男性が優勝し賞金5万円を手にしました。

持参した衣装姿で優勝した参加者
ドリフのコント姿のような優勝者

「鬼嫁の子ども部門」では上記で紹介した母への不満を爆発させた中学生の女子が優勝し、図書カード1万円分を獲得。

笑顔で表彰される鬼嫁の子
笑顔で表彰される鬼嫁の子

 そして「鬼嫁部門」は仕事で来られなかった旦那さんへテレビ電話をつないだまま飛び上がって

「LOVE!」

と絶叫した28歳の女性が優勝し、賞金10万円と鬼北町にある古民家を1年間利用できる権利が与えられました。

鬼嫁のなかの鬼嫁に選ばれた優勝者
鬼嫁のなかの鬼嫁に選ばれた優勝者

 一般的に「鬼嫁=怖い、厳しい」というイメージかもしれませんが、ここでいう「鬼嫁」はそうではなく、「深い愛情で家族を支える心の強い女性=鬼嫁」だなと毎回このイベントのお手伝いをして実感します。

「柚鬼媛」のように優しく美しくたくましく、清流四万十川最大級の支流「広見川」や、足摺宇和海国立公園の「成川渓谷」のように大らかに澄みきって、鬼ヶ城山の北側に位置する鬼北町ならではの取り組みは、これからも声高らかに響き続けていきます。

[やのひろみの「四国COLOR」第1回]

フリーパーソナリティ やのひろみさん
1975年、愛媛県生まれ。有限会社タグプロダクト取締役。イベント音響の裏方スタッフやディレクター、愛媛県のテレビ・ラジオ番組のパーソナリティとして活動中。10年第47回ギャラクシー賞 ラジオ部門DJパーソナリティ賞受賞。09年・12年・13年・14年民間放送連盟賞ラジオ部門全国優秀賞受賞。 NPO法人俳句甲子園実行委員会会員、NPO法人国際地雷処理・地域復興支援の会理事、キリンビールを応援する愛媛のお祭り課長 、砥部焼大使第106号、大洲味楽来しいたけ宣伝大使など多くの地域の宣伝やイベントに携わっている
http://tug-product.main.jp/yanohiromi/