巨大金魚が爆走。柳井市「金魚ちょうちん祭り」を楽しむ旅へ

広島県呉市の倉橋島へ地域おこし協力隊として移住した前中詩織さん。2023年3月に3年間の任期を終え、そのまま定住することに。今回は山口県と島根県でのプチ旅行をレポート。

「金魚ちょうちん祭り」を見に柳井市へ

金魚ちょうちん
白壁の街並みにそよぐ金魚ちょうちん

 お盆休み、本当は実家に帰省する予定でしたが、台風7号がちょうど実家のある関西直撃、ということで呉市に残って過ごすことになりました。しかしせっかく休みもとっていたので、中国地方で一泊二日の旅行を急遽計画。メインの行き先は、ずっと気になっていた山口県の「柳井金魚ちょうちん祭り」です。

 何年も前、呉に旅行に来たときにフェリーの中に吊るしてあった「金魚ちょうちん」が、その存在を知るきっかけでした。今ではガチャポンの景品にもなっていて有名ですね。

 そのときも山口県の民芸品だということはうっすら知ってはいたのですが、「かわいいなぁ」と思っていただけであまり詳しく知ることはないまま数年。呉市に移住してから、その金魚ちょうちんは夏になれば柳井の街にたくさん装飾され、金魚ちょうちん祭りなるものが開催されるということを知りました。

 そして今年はコロナ前と同じ規模で祭りが行われると聞き、ぜひ行ってみたい!と山口を目指したわけです。

白壁の街並みに並ぶ金魚ちょうちんとねぶた

金魚ねぶたの行列
爆走が始まる前の金魚ねぶたの行列

 呉市を早めに出発して、柳井市には12時ごろ到着。山口県は広島県の隣、呉も柳井も瀬戸内なので、意外と近いのです。駐車場を心配していましたが、この時間ならまだまだ余裕がありました。

 お祭りが本格的に始まるのは夕方からなので、それまでは白壁の街並みを散策です。最初に入った「柳井市街並み資料館」では、パンフレットをもらったり、まだお客さんも少なかったので、スタッフの方が町のことを親切に教えてくれました。

 資料館の中にも金魚ちょうちんがたくさん泳いでいたので、普段も飾っているのですか?と聞くと、「こんなにたくさん飾っているのはお祭りのときだけで、いつもはもう少し数が少ないんですよ~」とのこと。ちなみに、ハロウィンのときには金魚さんたちがオレンジ色になるそうです。

 その後も金魚ちょうちんグッズがたくさん売られている文房具屋さんや、甘露じょうゆの資料館、金魚ちょうちんの制作体験など行ってみました。どれも楽しくてお土産もしっかりでき気分はハッピー♪ 途中お茶買ったら風車あげるよ~と風車もGETしました。

 そして待ちに待った夕方。奥の方から「ドンドコドンドコ」と太鼓の音を響かせながら、歩行者天国になった通りに大きな金魚ねぶたたちが運ばれてきます。赤い金魚に黄色い金魚、ピンクに青、いろんな巨大金魚がやってきます。

 しかし、私はこの後なにが起こるのか知りません。チラシには金魚ねぶた「爆走タイム」と書いてあったのですが、「爆走??」爆走ってなにするんやろ?と頭にハテナが浮かんだ状態で「金魚ちょうちん踊り」の音頭に耳を傾けていました。

金魚ねぶたがくるくるまわる「爆走タイム」

金魚ねぶた爆走総まわし
金魚ねぶた爆走総まわしの光景

 そして…始まった爆走、まさかのまさか、全力で金魚が回されています!

「ラッセーラーラッセラーラッセーラッセーラッセラー」の掛け声と共に金魚がぐるぐる、ぐるぐる。
「なんじゃこりゃー!」がいちばんの感想、そしてなんてシュールな光景なんだろうとめっちゃ見ていて楽しくなってきました。写真では表しにくいのですが、ぐるぐる回されているんのです金魚が!

 よいものを見させてもらいました。今年の夏のいちばんの思い出はぐるぐる回る爆走金魚で決まりです(笑)

風鈴の音で災いを払う、琴崎八幡宮「風鈴まつり」

参道
参道がカラフルな風鈴で彩られている

 楽しい1日目が終わった次の日、向かうは山口県宇部市の琴崎八幡宮の風鈴まつり。

 風がふくとカランカランと涼しげな音がします。今年はとても暑い日が続いていますが、少し涼やかな気分になれるそんな場所でした。この風鈴は参拝者がお願いごとを書いて飾っておられるようで、風鈴にはいろいろなお願いが書かれています。

 せっかくなので、私も1つ風鈴を飾らせていただきました。色は私の好きな黄色。風鈴を手にしている方がたくさんいたので、今後もたくさんの風鈴が境内を飾るでしょう。

 9月3日まで風鈴まつりは行われるので、しばらくこの涼やかな音色を私の風鈴も奏でてくれたらいいなと思います。

風鈴
黄色の風鈴を飾らせてもらった

 そこからまた下道をゆっくり運転しながら、最後の目的地「島根県立しまね海洋館アクアス」へ。中国地方でいちばん大きな水族館と聞いていたので、ここも水族館好きとしてはずっと行ってみたい場所でした。

 アクアスに着いてすぐ、車を降りるとなんだか祭囃子のような音が聞こえてきます。なんだろう?と近寄ってみると、なんと「石見神楽」の公演が!

水族館で島根の伝統文化「石見神楽」に触れる

神楽
須佐之男命が大蛇と闘っている場面

 まわりの友達たちから「神楽はすごい」「一度観たほうがいい」と聞いたので、気にはなっていたのですが、なかなか観られる機会がなく、じつは今回が初めて。

 演目は「大蛇(オロチ)」、もうすでにお話は終盤、須佐之男命が大蛇を退治していくところからでしたが、大蛇が本当に生きているかのような動きで、緊迫感もあり、迫力がすごくて見惚れてしまいました。

 この公演は、11月初旬まで日曜日や祝日を中心にアクアスに隣接のはっしー広場で行われているそう。水族館に来て、こういう伝統芸能にも触れられるのは楽しいですね。

 お昼ご飯を食べたり神楽に見ほれている間にショーなどは満席になってしまい、シロイルカのショーが見れなかったのは少し残念でしたが、遅めの入場だったので、館内は人がそこまで多くなくゆっくり楽しむことができたのはよかったのかもしれません。

 メイン水槽となっている「神話の海」はいろんな魚が泳いでいるなかにたくさんのサメが放たれているダイナミックな水槽で、海底トンネルもあり大満足! 海の中にいるような気分でした(本当に海の中だったらサメのエサですが…)。

シロイルカ
ボールで遊ぶシロイルカさんたち

 アクアスのアイドルシロイルカにも会えました。あの有名なバブルリングはショーでしか見れないのかな?と思っていましたが、こちらの水槽でもときどきポコッと出してくれて感動! シロイルカはスナメリみたいな感じかな?と勝手に思っていましたが…、違う、この子めちゃでかい。しかも体がこんにゃくのようにブルンブルンしていました! ぶつかられたらちょっと痛そうです(笑)

 今回の中国地方のプチ旅行は、広島→山口→島根→広島の経路を高速を使わず下道で行く気ままな旅行で、なかなか発見が多くて楽しかったです。

 たとえば、山口と島根でレトロ自販機のある場所をたくさん見つけたり、田園風景の続く中にポツンとおしゃれなお店が一軒あるのを発見したり、ナビのせいで山の中のちょっと怖いトンネル通らされたり…プチ冒険旅行をしてきた気分です。

 関西に住んでいた時は訪れる機会がなく知らないことも多かった中国地方。広島県の立地をいかし今後もいろいろな場所を探索していこうと思います。

<取材・文・写真/前中詩織>

前中詩織さん
兵庫県出身。広島県最南端の島、呉市倉橋町の元地域おこし協力隊。大阪でグラフィックデザイナー、兵庫ではガラス工場で商品を製造。地域おこし協力隊を退任した後も島に住み、イラストやモノづくりといった得意分野を生かし、倉橋町の魅力を楽しく発信している。