能登の風景にアートが融合。珠洲市「奥能登国際芸術祭2023」が開幕

3回目となる「奥能登国際芸術祭2023」が、2023年9月23日から11月12日まで石川県珠洲市全域で開催中です。14の国と地域から集結した59組のアーティストが珠洲(すず)という場所に向き合い、土地に根差した作品を展示。市内10のエリアの特徴を楽しみながら、芸術祭を満喫しよう。

「さいはて」の地から発信される芸術祭

珠洲の風景
能登半島の先端に位置する珠洲の風景(Photo/ Naoki Ishikawa)

 芸術祭が開催される石川県珠洲市は、能登半島の先端に位置し、三方を海に囲まれた「さいはて」の地。かつて日本海に開かれた「先端」としての歴史があり、祭りや食をはじめとする豊かな文化が残されています。現在は不便な「さいはて」でも、視点を変えれば未来を切り開く「先端」になる。この発想が芸術祭の出発点です。

 今秋の『奥能登国際芸術祭2023』は、9月23日から11月12まで開催。アーティスト、市民、サポーターが協働してつくられる現代アートと奥能登の風土が響きあい、五感を揺さぶる時間と空間の体験が生まれます。

潮騒レストラン
《潮騒レストラン》坂茂/スズ・シアター・ミュージアム

「国内外のアーティストが珠洲という場所に向き合い、土地に根差した作品表現をすることで支持を集めてきた『奥能登国際芸術祭』は、今回で3回目となります。珠洲市全域に点在するアートや珠洲の特色である里山里海の豊かさをいかした岬めぐりを楽しむと同時に、『スズ・シアター・ミュージアム』(大谷エリア)に新たに建設された『潮騒レストラン』で、珠洲の魅力がつまった「食」も楽しんでいただきたいと思っています」(珠洲市芸術文化創造室・前田能利さん)

 14の国と地域から、59組のアーティストが参加し、大谷、日置、三崎、蛸島、正院、直、飯田、上戸、宝立、若山の10のエリアで作品を展示しています。そのなかから4エリアの特徴と一部作品をご紹介しましょう。

「大谷」エリアには17の作品が展示

自身への扉
《自身への扉》ファイグ・アフメッド

「大谷」は、耕作面積が少なく、日本海の荒波に侵食された岩礁が多く存在するエリア。日本で唯一の「揚げ浜式製塩」が500年以上続く角花家をはじめとして、いくつかの製塩業者が点在しています。

「揚げ浜式製塩の塩づくり」で知られる「寄揚の浜」に展示されているのは、アゼルバイジャンの現代視覚芸術家、ファイグ・アフメッドの作品『自身への扉』。人生における2つの側面を表現。門をくぐると風が聞こえ、波が打ち寄せます。

 建築家・坂茂が建築・設計した、「スズ・シアター・ミュージアム」のレストラン・ショップ『潮騒レストラン』にもぜひ立ち寄ってみましょう。

遊び心ある作品に出会える「三崎」エリア

Autonomo
《Autonomo》カールステン・ニコライ Photo:Kichiro Okamura

 日本海の守護神とされる「須須神社」が鎮座し、漁師や船乗りの信仰を集める「三崎」エリア。貴重な舟小屋郡も現存しています。

 旧粟津保育園に展示されているのは、ドイツのアーティスト、カールステン・ニコライの作品『Autonomo』。プレイルームに、大きな金属製の円盤を数枚つるし、テニスボールマシンを設置。閉園した保育園へのオマージュとして、「遊び心」「オモチャ」「子どもっぽさ」をキーワードにインスタレーションを展開しています。

漁師町で知られる「蛸島」エリアへ

家のささやき
《家のささやき》ラグジュアリー・ロジコ

 石川県屈指の漁港を持つ漁師町で、風情ある白壁と下見張りのまち並みが魅力の「蛸島(たこじま)」エリア。高倉彦神社の祭礼で、豪華絢爛な総漆塗りのキリコが巡行される秋祭も有名です。

 台湾のアーティスト、ラグジュアリー・ロジコの『家のささやき』は、「力になる」をコンセプトに、昔の記憶を掘り起こしていく作品。この地を離れた人々が、再び戻ってくるようにという願いが込められています。

「正院」エリアには、町民にも親しまれる作品が

珠洲海道五十三次
《珠洲海道五十三次》 レクサンドル・コンスタンチーノフ Photo:Kichiro Okamura

 冬になると白鳥が飛来し、「平床貝層」や「正院川尻城」が名所の「正院」エリア。秋祭では、化粧前掛けをした若者たちが、威勢のよいかけ声で「シャンガ」と呼ばれる毛槍を振り渡しながら町中を練り歩く「奴振り」が行われます。

 珠洲市民の生活に欠かせない路線バス。ロシアのアーティスト、アレクサンドル・コンスタンチーノフは、正院をはじめ、市内のバス停4か所に作品を制作。作家の遺作となった本作は、「珠洲」の地名から真珠を連想し、貝殻が真珠を包むように格子状の構造物でバス停を包み込んでいます。

5作品が展開中の「宝立」エリア

流転
《流転》シリン・アベディニラッド

 弘法大師(空海)が布教のために、佐渡から能登へ渡る際に発見したと伝わる「見附島」がある「宝立(ほうりゅう)」エリア。最大級の高さ14mのキリコが海中で乱舞し、後ろに花火が上がる、8月の七夕キリコ祭りは迫力満点です。

 かつて漁具倉庫だった「春日野の蔵」に展示しているのは、イラン・アメリカのアーティスト、シリン・アベディニラッドの作品『流転』。海岸に落ちているシーグラスに着目し、酒瓶がガラスの石に変わる様子から着想を得た作品に魅了されます。

肉体で表現する、パフォーミングアーツも必見

「うつつ・ふる・すず」
さいはての朗読劇「うつつ・ふる・すず」 Phohto:sakika matsuda
「海のまぼろし」
劇団三毛猫座+熊田悠夢「海のまぼろし」 ※写真は、「くじらの昇る海底」2022 THEATRE E9 KYOTO
Photo:komayurika

 展示以外にも、日本を代表するダンサー、田中泯らによるパフォーミングアーツ分野も見逃せません。

 詩人の大崎清夏が珠洲の暮らしを採話し書下ろした、さいはての朗読劇『うつつ・ふる・すず』。構成・演出は、長塚圭史、朗読は常盤貴子が担当し、「スズ・シアター・ミュージアム」にて。ほかにも、鉢ヶ崎海岸では、劇団三毛猫座+熊田悠夢『海のまぼろし』などが予定されています。日程などの詳細はHPで確認を。

取材協力/珠洲市芸術文化創造室

<取材・文>寺川尚美