日本三古湯も三美人の湯も。温泉の国、和歌山で湯と食に癒される

県内各地に温泉地がある和歌山県は、まさに「温泉の国」。個性も泉質も異なる名湯で太古のロマンを感じ、温泉文化に浸る「温泉の国、わかやま」の旅を紹介します。

個性豊かな15の温泉巡りができる和歌山県

白浜温泉 崎の湯
目の前に雄大な太平洋が広がる立ち寄り湯「白浜温泉 崎の湯」

 日本最大の半島である紀伊半島の西側に位置する和歌山県。県内各地で温泉が楽しめる和歌山県は、火山がないのに天然温泉があるのはなぜ?と疑問に思う人も多いはず。紀伊半島の天然温泉は、海洋プレートが地中深く沈むことにより、プレートに含まれる海水が熱せられ、地下水と混じって地表にわき出た非火山性温泉。和歌山の温泉は何万年も前の海水、と知るとロマンが感じられます。

紀州・白浜温泉むさし
「紀州・白浜温泉むさし」の展望露天風呂

「和歌山県内には、日本三古湯のひとつ『白浜温泉』をはじめ(ほかは兵庫県有馬温泉、愛媛県道後温泉)、露天風呂からの海景が美しい勝浦温泉、山や川、世界遺産の温泉が楽しめる熊野本宮温泉郷など、趣の異なる、個性豊かな15湯の温泉が点在している関西屈指の温泉の宝庫です。白浜にある当館の温泉では、2種類の源泉を楽しんでいただけ、展望露天風呂からは白良浜や円月島が一望でき、夕陽の時間帯のロケーションは格別です。ぜひ、大自然に抱かれた湯めぐりで心休まるひとときをお過ごしください」(紀州・白浜温泉むさし 女将・沼田 弘美さん)

白浜温泉の絶景ホテルで至福の時間を

インフィニート ホテル&スパ南紀白浜
「インフィニート ホテル&スパ南紀白浜」。上・露天風呂、左下・ガーデンレストラン、右下・ディナーの一例

 始まりは約1350年前の飛鳥・奈良時代といわれ、万葉集や日本書紀にも紹介されるなど歴史ある白浜温泉。小高い丘に位置するラグジュアリーリゾートホテル「インフィニート ホテル&スパ南紀白浜」も人気です。

 由緒ある源泉からのかけ流しの湯を使った温泉と、地元の海の幸をふんだんに使った本格イタリアン。高台の絶景ロケーションで優雅なひとときが過ごせそう。

勝浦温泉・紀の松島に浮かぶ天然温泉宿

碧き島の宿 熊野別邸 中の島
紀の松島に浮かぶ天然温泉宿「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」

 多種多様な源泉と豊富な湧出量を誇る勝浦温泉。海の絶景を眺められる洞窟の露天風呂や、静かな湾内に面した露天風呂などの名物温泉があるのも魅力です。

 ゆっくり過ごすなら、勝浦港から専用船で行く、紀の松島に浮かぶ天然温泉宿「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」へ。島内に源泉6本を保有し、1日700t、毎分486ℓと豊富な湯量を誇る絶景露天風呂が自慢。名湯「紀州潮聞之湯」で、雄大な黒潮の流れと心地よい潮騒に癒されて。

那智の滝
那智山青岸渡寺三重塔と那智の滝

 勝浦温泉に来たらぜひ訪れたいスポットが、世界遺産に登録されている「熊野那智大社」や「那智山青岸渡寺(なちさんせいがんとじ)」と日本一の落差を誇る「那智の滝」。500年前に制作された「那智参詣曼荼羅」にも描かれている「那智山青岸渡寺三重塔」は、塔の上から那智の滝や太平洋を望むことができます。また、那智山青岸渡寺の本堂後方から望む、那智の滝と朱塗りの塔との美しい調和にはうっとりします。

まぐろ丼
勝浦温泉街で味わえるまぐろ丼

 はえ縄漁法による生マグロ水揚げ日本一の勝浦漁港。常設の「勝浦漁港にぎわい市場」では、天然生マグロの解体ショーや販売をはじめ、マグロ丼や握りずしが味わえます。マグロのなかでも、もっちり粘りのある食感が特徴の「もちマグロ」は必食。また、勝浦温泉街でもこだわりのマグロ料理を提供する飲食店が立ち並び、新鮮で多彩なメニューが楽しめます。

聖地・熊野で心も体もリセット

熊野温泉郷
左・「旅館あづまや」の薬効豊かな温泉、右上・世界遺産の「つぼ湯」、右下・冬だけのお楽しみ「川湯温泉 仙人風呂」

 世界遺産「熊野本宮大社」のお膝元にある温泉郷・熊野本宮温泉郷では、湯治場として1800年以上親しまれてきた「湯の峰温泉」のほか、「川湯温泉」「渡瀬温泉」が堪能できます。

 湯の峰温泉の中心部にある世界遺産「つぼ湯」は、熊野詣の参詣前に旅人たちを癒してきた由緒ある湯ごり場。日により7度色が変化するのも特徴で、立ち寄り湯として利用可能。

 冬のみ利用できる立ち寄り湯が、大塔川をせき止めてつくる大露天風呂「川湯温泉 仙人風呂」。川底からわき出る73℃の源泉に、冷たい清流を引き入れて40℃前後に調整しているそう。野趣あふれる風景や満点の星空を眺めながらの湯浴みは格別。

 宿泊は、湯の峰温泉で江戸時代から続く「旅館あづまや」がおすすめ。3つの自家源泉をもつ効能豊かな温泉を、総マキづくりの浴槽でゆっくりと。高温度の湧出をそのまま利用したむしぶろ体験も貴重です。

まだある、和歌山の魅惑の温泉スポット

そのほかの温泉スポット
左上・「龍神温泉 季楽里龍神」、右上・「弘法湯」、左下・「花山温泉 薬の湯」、右下・「加太淡嶋温泉 ひいなの湯」

 県内にはほかにも、魅力的な温泉が多数点在。日高川の渓流沿いに位置し、日本三美人の湯としても知られるのが龍神温泉(ほかは群馬県川中温泉、島根県湯の川温泉)。日帰り入浴もできる温泉宿「季楽里龍神」では、龍神産のヒノキをふんだんに使った内湯と露天風呂が楽しめます。

 奈良時代が起源と伝わる、炭酸泉が特徴の花山温泉。炭酸ガスの圧力で自噴する源泉100%の天然温泉&日帰り温泉「花山温泉 薬師の湯」には、アスリートなども疲労回復に訪れるそう。

 紀淡海峡・加太湾に面した温泉地にある温泉宿「加太淡嶋温泉 ひいなの湯」。穏やかな紀淡海峡と沖の友ヶ島が織り成す海景色を眺めながらの湯浴みは極上の癒し。炭酸水素塩泉のとろみある湯は、美肌効果が期待できます。

 本州最南端にある串本町は、弘法大師ゆかりの温泉地。長年親しまれてきた共同浴場が2023年リニューアルし、一棟貸切の宿&日帰り温泉「弘法湯」に。太平洋を臨む絶好のロケーションをひとり占めできます。

取材協力/紀州・白浜温泉むさし、公益社団法人 和歌山県観光連盟
<取材・文>寺川尚美