広島県の渓谷「帝釈峡」石灰岩の造形美と温泉、グルメが自慢

広島県東部の庄原市東城町と神石高原町の境にある峡谷「帝釈峡(たいしゃくきょう)」は、鉄道や高速バスなど公共交通がなく、手つかずの自然が広がるパワースポット。今回は、大自然に包まれおすすめスポットをご案内します。

自然を満喫できる帝釈峡

柏岩橋とカヤック
柏岩橋や岩壁を眺めながらカヤックも楽しめる

 全長約18㎞の帝釈峡は、中国山地に位置する庄原市東城町と神石高原町にまたがる峡谷で、国の名勝に指定された広島県を代表する景勝地です。アクセスは、中国自動車道東城ICより中心部までは車で10分(約8km)ほど。北側は「上帝釈」、南側は「下帝釈」と呼ばれています。上帝釈エリアまでは、芸備線の東城駅から備北バスと徒歩(約25分)で行くことができますが、移動の公共交通手段がないため、ぐるりと巡るなら車がマスト。

「神石高原町は標高500m~700mの高原に位置し、街と比べると約5℃の気温差があり、冷涼で過ごしやすい気候。大自然を満喫していただける数多くのアクティビティがあります。食についても、世界に誇るブランド牛・神石牛(じんせきぎゅう)をはじめ、昼夜の寒暖の差により甘味の強い各種野菜など、素朴ながら上質な食材が多数そろっています。高速道路も鉄道もありませんが、喧騒から離れのんびりした時間をお過ごしいただけます」(一般社団法人 神石高原町観光協会 事務局・惣道久敬さん)

石灰岩の橋や鍾乳洞など自然の造形美が豊富

雄橋
帝釈峡に架かる石灰岩のアーチ橋・雄橋

 帝釈峡の見どころのひとつが、自然の造形美。石灰岩が深く浸食されて形成されたカルスト台地で、ドリーネ、ウパーレといわれる穴や凹地が至るところに見られます。帝釈川により浸食された谷の名残が、雄橋や断魚渓、鬼の唐門。

 なかでも絶対訪れたいスポットが、雄橋。全長約90m、幅約18m、厚さ約24m、川底からの高さ約40mで、世界的にも珍しい石灰岩の天然橋だそう。この橋を架けたのは「神様」または「鬼」ともいわれ、神秘的な雰囲気を醸し出しています。

鍾乳洞
鍾乳洞が多数ある。左・白雲洞、右・幻の鍾乳洞

 帝釈峡一帯の地底には広大な鍾乳洞が無数にあるといわれ、白雲洞(庄原市)は帝釈峡を代表する鍾乳洞。奥行きが200mほどあり、鍾乳石や石筍、石柱などが自然のまま保全されてるのが魅力です。洞内は常に11℃前後で、夏は涼しく冬は温か。個人旅でも気軽に行くことができます。

 また県内でいちばん長い、総長約780mある鍾乳洞が、幻の鍾乳洞(神石高原町)。こちらは要予約のガイドつきツアーが必須となります。

神龍湖でアクティビティを満喫する

神龍湖
様々なアクティビティが楽しめる神龍湖。左上・オープンボート、右上・カヤック、左下・遊覧船、右下・神龍湖桜橋から絶景を

 紺碧の湖面上にかかる真紅の橋が印象的な神龍湖。3つの橋(紅葉橋・神龍橋・桜橋)を渡って湖を1周する散策コースがあるほか、アクティビティも充実しています。

 両岸にそびえる断崖や奇岩、新緑を船上から眺めながら約40分間湖を巡る「帝釈峡遊覧船」。湖にある名所を案内する音声を聞きながら、遊覧船内部の畳の上で約40分の水上散歩を楽めます。

 スリルを味わうなら、ハイパワーエンジン搭載のプレジャーボートで走行する「オープンボート」がおすすめ。時速60kmで湖上を約30分駆け抜ける爽快感は格別です。5歳から乗車が可能。

 神龍湖上流への往復をゆっくり約90分かけて楽しむカヤックも人気。流れはほとんどない穏やかな湖面なので、大自然をゆっくり堪能できます。

自然に触れ合いながら遊べるスポットも

帝釈峡山荘
上・帝釈峡山荘でマス釣り&マスの塩焼き、左下・帝釈峡山荘でエアガン体験。右下・帝釈水辺公園で水遊び

 また、「帝釈峡山荘」は、釣堀りとエアガンシューティング体験ができるスポット。釣堀りは貸し竿もあり、釣りたてのニジマスを炭火で塩焼きにしてくれます。エアガンシューティング体験には、多種類のエアガンがあり初心者でもOK。敷地内には簡易的な宿泊施設もあります。

 岩山に囲まれた川辺で水遊びを楽しむなら、帝釈峡水辺公園へ。石灰岩から染み出る天然水はおいしく、夏はひんやりとした清流で涼めます。

神石高原の名物・神石牛ステーキは必食

神石牛ステーキ
「レストラン帝釈の里」で神石牛ステーキを味わう

 ご当地グルメといえば、ひろしま牛の元となったブランド牛の「神石牛」と「比婆牛」。帝釈峡の中腹のある総合レジャー施設「帝釈スコラ高原」内の「レストラン帝釈の里」で、神石牛ステーキを満喫できます。出荷率が少なく幻の牛とも呼ばれる黒毛和牛で、肉質が柔らかく、舌の上でとろけるまろやかな味わい。予約必須です。
 比婆牛ステーキは、「帝釈峡休暇村」、「帝釈峡観光ホテル 綿彩館」でいただくことができます。

9種類の湯が堪能できる入浴&宿泊施設

「光信の湯 ゆっくら」
「光信の湯 ゆっくら」の開放感抜群の露天風呂

 たくさん探検し、遊んだあとは、9種類の湯巡りができる入浴施設「光信の湯 ゆっくら」へ足を延ばしては。
 露天風呂は山裾にあるので、岩肌が心地よく、噴き出す湯は豊富。鳥のさえずりや風に揺れる木の葉の音をBGMにリラックスできます。藁湯(わらゆ)やジェットバス、打たせ湯、サウナなどバラエティ豊か。
 施設内には、食事処や宿泊施設も完備されているので便利です。

神石高原町の食に出会える道の駅

「道の駅 さんわ 182ステーション」
地産の特産品が並ぶ「道の駅 さんわ 182ステーション」

「光信の湯 ゆっくら」から10Kmほど、国道182号線沿いの「道の駅 さんわ 182ステーション」でお土産を。

 神石高原町の採れたてトマトなど、旬の野菜や自慢の加工品がそろう「直売所」。完熟イチゴのスムージーや神石高原ピザなどが味わえる「182CAFE」。ビュッフェスタイルの自然食レストラン「高原の風」など、神石高原町の魅力が集結したスポット。ぜひ、チェックしてみて。町の情報は神石高原町観光ナビで確認を。

取材協力/一般社団法人 神石高原町観光協会

<取材・文>寺川尚美