輝くウニ丼や宿坊で癒される。夏の下北半島を巡る旅

本州最北端の下北半島は、自然を楽しみながらドライブができる絶好のスポット。自然、温泉、食が満喫できる夏旅にぴったりの場所を、現地スタッフがおすすめします。

3つの海に囲まれた下北半島の魅力を体感

仏ヶ浦
巨大な白い奇岩と透明度の高い海のコントラストが美しい仏ヶ浦

 青森県北東部、本州の最北端に位置する「まさかり」の形をした下北半島。日本列島を形成する4つの地層が集結する特別な半島です。太平洋、陸奥湾、津軽海峡の豊かな海に囲まれているため、四季折々の自然の恵みを堪能できるのも魅力。そんな下北ジオパークは、2016年に日本ジオパークに認定されました。

「下北半島の神秘的で豊かな自然、そして半島を囲む3つの海がもたらす豪快な食を楽しみたい人には、ぴったりのグリーンシーズン。いつもなら少し遠く感じる道のりも、心地よい潮風や森の香りに誘われて、あっという間に時間が過ぎます。心も体も満たされる、本州最北半島の旅をお楽しみください。かさまい(来てね)下北へ!!」(一般社団法人 しもきたTABIあしすと・本山貴子さん)

巨大な奇岩群が立ち並ぶ仏ヶ浦へ

如来の首など
左上・複雑な形をした「五百羅漢」、左下・2羽の鶏が向き合ったような「双鶏門」、右・ 角度によって仏様の横顔に見える「如来の首」

 まず訪れたいのは、下北半島佐井村の西海岸沿いにある、国の名勝及び天然記念物・仏ヶ浦。巨岩・奇岩が並ぶ、極楽浄土を思わせる神秘的な景色です。高さ100m近い白緑色の凝灰角礫岩が約2kmにわたって連なり、それぞれに仏にちなんだ名がついています。

 仏ヶ浦の地形は、近年の研究で約400万年前の海底火山噴火によって形成されたカルデラに由来するという説が有力となっているそう。五百羅漢や如来の首をはじめ、岩龍岩、蓬莱山、一ツ仏、双鶏門など、12の摩訶不思議な形の巨岩を間近で見ることができます。

 仏ヶ浦へは車でも行けるけど、駐車場から険しい遊歩道を往復で40分ほど歩くため、足に自信のない人は船がおすすめ。4月~10月には佐井港からいくつかの観光船・遊覧船が就航しているのでチェックしてみてください。

夏季しか出会えない光り輝くウニ丼

ウニ丼
「仏ヶ浦ドライブイン」の夏の名物「ウニ丼」

 三方を海に囲まれた青森県のごちそうといえば、マグロやホタテなどの海鮮。なかでも夏に旬を迎えるのが光輝くウニです。佐井村福浦地区にある「仏ヶ浦ドライブイン」では、6月~8月くらいまで朝どれのウニがぜいたくにのった「ウニ丼」を提供。淡い色のウニはフワフワとした食感で上品な甘味がやみつきに。ウニ丼のほか、刺身、煮物、炒めものがセットになった「ウニ丼定食」が人気です。

 また、佐井村の「アルサス」では、ウニが盛りだくさんの「ウニ丼」のほか、塩ウニがこれでもかと詰まったおにぎり「うにぎり」が人気。うにぎりは岩ノリで巻いてあるので磯の香りを感じられます。同じく佐井村の「ぬいどう食堂」では、瓶ウニ3つ分の大量のウニ丼が食べられるので、こちらもぜひチェックを。

文豪が愛した湯に浸かり地魚を堪能

下風呂温泉郷
「海峡の湯」の名物「平目漬け丼」と青森ヒバをふんだんに使用したヒバ造りの浴場、左下・下風呂温泉郷とメモリアルロード

 旅の疲れを癒やしてくれるのが、風間浦村の下風呂温泉郷にある温泉施設「海峡の湯」。目の前には津軽海峡が広がり、天気がよいと北海道も望むことも。美しい夕日や、夜には漁船の漁火を眺めながら湯にゆったり浸かることができます。

 文豪・井上靖が小説『海峡』のなかで、「ああ、湯が滲みて来る。」と表したほど、効き目を体感できる温泉としても有名です。

 1階の「下風呂おんせん食堂」で味わえるのが、津軽海峡で水揚げされた新鮮な海の幸。「平目漬け丼」や「あんこう定食」、「サーモン丼」など、地魚をふんだんに使った丼や定食メニューがそろっています。

「あたたまり湯」といわれる「むつ矢立温泉」

むつ矢立温泉
体の芯まで温まる「むつ矢立温泉」

 湯温が高いことで知られているのが、むつ市街から恐山に向かう途中にある、自然に囲まれた温泉宿&日帰り温泉施設「むつ矢立温泉」。
 塩分が皮膚に付着するので汗の蒸発を防ぎやすくて保湿効果が高く、湯冷めしないことから「あたたまり湯」とも呼ばれています。施設内には、ロッジ村や無料足湯も備えているのでゆっくり過ごせます。

1日1組限定の宿坊で心地よい時間を

普賢院
2018年に宿坊が誕生した「普賢院」

 本州最北、北限の地・大間町。マグロで有名な町の山奥にたたずむ、1日1組限定の禅宿坊「おおま宿坊 普賢院」。「3000坪を超える境内、歴史ある本堂、そして僧侶を貸しきれる日本で唯一の禅宿坊でございます。どうぞ、心を穏やかにする禅体験、最高級大間マグロ、天然温泉にて心と身体に活力を補給してください」(普賢院・菊池雄大さん)

 院代である菊池雄大さんが笑顔で迎えてくれる、福蔵寺別院「普賢院」では、1日2泊の宿坊体験ができます。菊池さんが好きなアウトドアテイストを取り入れた室内は、リゾート施設のような居心地のよさ。坐禅や写経、滝流、ヨガなど、さまざまな修行体験ができるのも魅力です。

 夕食は、大間マグロの刺盛りなど、菊池さんも一緒に食卓を囲み、そして盃も傾けます。翌朝は、引き締まった空気のなかで「朝のお勤め」から清々しい1日をスタートしましょう。

イカ珍味やソフトクリームも見逃せない

海鮮倶楽部いさびりハウス
左・「海鮮倶楽部いさびりハウス」、右・「斗南丘牧場 ミルク工房ボン・サーブ」

 最後に、下北半島ならではのお土産がそろう2店舗をご紹介。1軒目、むつ市大畑にある巨大スルメイカのオブジェが目印の珍味販売店「海鮮倶楽部いさびりハウス」。全国屈指のイカの漁獲量を誇る青森県ならではのイカ珍味が約100種類! ホタテやタコ、鮭などの珍味も含めて300種類以上と、まさに珍味の百貨店。隣接する食事処では、ゲソ天が人気。

 2軒目は、新鮮な生乳をつかったソフトクリームが名物の「斗南丘牧場 ミルク工房ボン・サーブ」。牛にストレスを感じさせない「フリーストール牛舎(放し飼い牛舎)」で飼育された牛から取れた新鮮な生乳をおいしいヨーグルト、カップアイスにして販売。生乳をたっぷり使ったソフトクリームは必食です。

取材協力/一般社団法人 しもきたTABIあしすと、おおま宿坊 普賢院

<取材・文>寺川尚美