倉敷でmtのイベント開催。赤レンガを彩るマステアートと美観地区を楽しむ

広島県呉市の倉橋島へ地域おこし協力隊として移住した前中詩織さん。3年間の任期を終え、そのまま定住することに。今回は岡山県倉敷市で出会ったアートをレポート。

毎年秋に岡山で開催されるマステmtのイベント

外観も店内も木の格子でできているお店
美観地区にあるmt専門店。素敵な建物の店内にはかわいいマスキングテープがたくさん

 岡山県倉敷市発祥のカモ井加工紙のマスキングテープ、mt。学生の頃から大ファンで、ちょこちょこ集めてはもったいなくて使えない!という感じでため込んでいました。そんなmtのイベントが開催されている岡山県へ行ってきました。

 mtのイベントは毎年秋に岡山県内で行われています。去年は蒜山(ひるぜん)、その前は牛窓(うしまど)で開催され、どちらも参加しました。2024年の開催地は津山でしたが、同時期に倉敷のアイビースクエアにある愛美赤煉瓦館でもイベントが行われていると聞き、倉敷へ行くことに。

レンガ壁にペイントしたようなマスキングテープのアート

赤レンガに貼られたマスキンテープアート
赤レンガに貼られたマスキンテープアート

 マスキングテープのイベント会場は、レンガの壁に囲まれたアイビースクエア。会場の愛美赤煉瓦館入口に向かうと、レンガの壁にはまるでペイントされたかのように見えるマスキングテープのアートが!

 赤レンガの壁に施されているアートは進行中で、外国人の女性と男性がさまざまなマスキングテープを使用して製作を行っていました。元の雰囲気とは180度変わっているのがわかっておもしろい! これならイベント後は壁をきれいに戻せることもできるし、マスキングテープの活用法にも驚かされました。

 愛美赤煉瓦館の中では、イベント限定のマスキングテープの販売アウトレット、ワークショップが行われていたので、マステの購入もできました!

くらしきアーキツーリズム2024も開催

白壁に赤い扉の建物と茶色い紙にイラストが描かれているファイル
倉敷珈琲館の外観とアーキツーリズムの思い出ファイル

 倉敷は大原美術館や倉敷民藝館がある、アートや民芸が楽しめるまちです。観光案内所に立ち寄ると、「くらしきアーキツーリズム2024」の案内がありました。

 これは、本町通りと倉敷川沿いの2つのメイン通りにある、名もなき建築家たちの建物を巡り、街歩きをしながら「たてものカード(無料)」を集める体験。「おもいでファイル」というファイルを購入すると、そのカードや思い出のチケットなども収納できるのです。
 また、たてものカードの裏には鳥瞰絵図師 岡本直樹さんの絵が描かれており、カードの裏を合わせると絵がつながるというお楽しみつき。

サイコロ型にカットされカップに入ったチーズケーキ
街巡り中には食べ歩きグルメも! 食べ歩き用バスクチーズケーキ

「語らい座 大原本邸」「大原美術館」を訪問

土間の天井からいろいろな言葉が垂れ下がっている
「語らい座 大原本邸」入り口の土間にはいろいろな言葉が“降り注いで”いる

 たてものカードは5つの施設で手に入れることができます。カードは無料ですが、施設の中に入るのは入館料が必要。今回は「語らい座 大原本邸」に入館しました。

 まずは「語らい座 大原本邸」。入口から「なんてアーティスティックなんだろう!」と思う展示。土間の空中にはこの家の家主たちが語った言葉が浮かんでいます。

「十人のうち七人も八人も賛成するようなら、もうやらない方がいい。」という言葉がいちばん先に目に入りました。意味は、「賛成者が多いものなら、もう新しいものではないということ」だそう。自分には考えもつかないような言葉だったので、世の中に影響を与える人の言葉はすごい。

緑の木とコケが美しい庭
離れ座敷から見える日本庭園。キジバトも遊びに来ていた

 大原本邸の中はとても広く、大原家の歴史についての展示や、8代目大原總一郎さんの書斎をイメージしたというとても雰囲気のあるブックカフェもあります。その奥の離れ座敷から見ることができる日本庭園もとても美しく、別世界のような落ち着いた空間が広がっていました。

睡蓮の花
大原美術館の庭園にはきれいな睡蓮の咲いていた

 その後、せっかく倉敷に来たので大原家7代目 孫三郎が設立した大原美術館にも立ち寄ちました。この美術館にはクロード・モネ作の『睡蓮』やエル・グレコ作『受胎告知』など有名な西洋絵画が展示されていて感動!! 

ノスタルジックな雰囲気の倉敷美観地区

川沿いに並ぶきれいな白い建物
時代が違うような雰囲気

 倉敷は観光地として人気ですが、その中心は「倉敷美観地区」です。街並みがノスタルジックで、観光用の人力車があったり、白壁の建物が並んでいたり。表通りの店にはデニムやジーンズの商品が多く並んでいて、さすがデニム・ジーンズの産地! 朝早い時間で、開店前のお店が多かったのですが、歩いているだけでも楽しい風景と雰囲気。

 川のある通りに出ると、川にかかる橋のうえで多くの人が写真撮影。橋の下には「くらしき川船流し」を楽しむ人、川の対岸には女流棋士の方が指導対局を行う「青空将棋道場」なども催され、朝からにぎわっていました。

川沿いに白い彼岸花が咲いている
川沿いに咲く白い彼岸花

倉敷珈琲館で「琥珀の女王」を味わう

ミルクの入ったコーヒーカップの中心に氷が浮かんでいる
倉敷珈琲館のかわいいカップ

 街を散策しながら「倉敷珈琲館」へ。倉敷珈琲館は1971年創業、江戸時代の建物を改築してつくられ、白壁に洋風の赤い門が一際目立つお店です。店内は木とレンガの落ち着いた雰囲気。ここでは「琥珀の女王」という冷たいコーヒーを注文しました。水出しコーヒーにリキュールとハチミツ、ミルクを加えたもので、エスプレッソサイズのカップにコーヒーとクリームが2層になって、真ん中に氷が浮かんでいます。

「混ぜずにそのまま味の変化をお楽しみください」とのこと。見た目がとても上品で、ちょっとドキドキしました。ゆっくり少しづついただくと、最初は甘くコーヒーゼリーのような感じで、ときどき苦味もあったり、口に入るクリームやコーヒーの割合でもまた味が変わったり。飲むのが楽しいコーヒーでした。

屋根に犬の置物が並ぶ「倉敷山陽堂アンティークモール」

右側に赤レンガの壁が続く
アイビースクエアの赤レンガの壁が続く道

 見どころの多い倉敷で、気になる建物を発見しました。アイビースクエアに近い場所に独特な建物が…。

屋根に犬の置物がたくさん並んでいる
屋根にワンちゃんがいっぱい!

 屋根の上に大量の犬の置きものが! インスタで目にしたことがありましたが、倉敷の風景だとは知りませんでした。あとで調べたのですが、その建物は「倉敷山陽堂アンティークモール」というお店兼博物館で、あのワンちゃんは音響・映像機器メーカー「日本ビクター」のマスコットキャラクター『ニッパー』です。今回は気になりながら入れなかったので、次回訪れた際はぜひ入ってみたいお店です。

古い街並みの道を観光客が歩いている
散策が楽しい美観地区の通り

 今回はマスキングテープのイベント目的で訪れましたが、倉敷は歩いて回れる場所がたくさんあり、mtも街並みもたくさん堪能できました。毎年mt関連で岡山県への旅行ができているので、来年もどこかな~と楽しみにしています。

<取材・文・写真/前中詩織>

前中詩織さん
兵庫県出身。広島県最南端の島、呉市倉橋町の元地域おこし協力隊。大阪でグラフィックデザイナー、兵庫ではガラス工場で商品を製造。地域おこし協力隊を退任した後も島に住み、イラストやモノづくりといった得意分野を生かし、倉橋町の魅力を楽しく発信している。