八重瀬町に琉球菓子専門カフェがオープン。「チールンコウ」「ウミンス」など提供

本格的な琉球菓子を提供する古民家カフェが八重瀬町にオープン。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級など食に関する資格を持つ津波真澄さんが、沖縄初の琉球菓子専門カフェを訪ねました。

琉球菓子に特化したカフェ「koti」

おそろいのエプロン姿でならぶ4人の女性

 琉球家屋の古民家を改装し、琉球菓子専門カフェ「koti」が2024年8月に沖縄の八重瀬町東風平(こちんだ)で誕生しました。このカフェは南風原町にある「ゆいまーる沖縄」の古民家プロジェクトとしてオープンし、琉球の歴史と文化が息づく空間です。

お店にした琉球古民家の外観

「koti」という店名は、カフェが位置する地名「東風平(こちんだ)」から取られたもの。「東風(こち)」は春の訪れを告げる風ともされ、ここから沖縄文化を発信し、地域に根ざした場を提供したいという思いが込められています。

 この場所をただのカフェではなく、沖縄の暮らしの文化を感じる拠点とするため、どのような内容で営業するかを古民家の改装中にじっくり検討。その結果、沖縄にありそうでなかった「琉球菓子に特化したカフェ」の構想が生まれ、琉球料理伝承人の指導を仰ぎ、2か月間の特訓を経て、開業にこぎ着けました。

王朝菓子と庶民のお菓子を提供

梅干し、ピーナッツバター、白ゴマなどを和えた保存食
手前がウミンス

 琉球菓子とは、王府で食べられていた王朝菓子と庶民が楽しんだ郷土菓子の総称。「koti」では、王朝菓子だった焼き菓子のちんすこうや花ぼうる、蒸し菓子のチールンコウ、郷土菓子で蒸し菓子のアガラサーなどを提供。

 とくに「ウミンス」というお菓子は希少で、その昔、那覇の料亭ではお茶請けとしても出されていましたが、今ではほとんど見かけることがないものです。梅干し、ピーナッツバター、白ゴマ、そしてかんきつの砂糖漬けの桔餅(キッパン)を使用した手の込んだ保存食でもあるウミンスは、口の中に広がる独特の甘さとうま味、見え隠れするさわやかな酸味が一度に楽しめる、芳醇でぜいたくなひと品です。

琉球菓子のつくり方を学ぶワークショップも

女性が木目のカウンターでお茶を入れている様子

「koti」を訪れるお客さんの8割が地元の方々とのこと。親子三世代で訪れた家族は、店内に展示されている沖縄の民具や古民家にまつわる話をしていました。その様子を見て、店舗責任者の新垣春香さんは「文化の継承が実現されていると感じられてうれしい」と語ります。お店の雰囲気と琉球菓子が、沖縄の豊かな歴史を次世代に伝える一助となっているよう。

沖縄の月見団子「フチャギ」をつくっている様子
沖縄の月見団子「フチャギ」のワークショップ

 こちらでは、沖縄の行事に合わせて、琉球料理伝承人が琉球菓子のつくり方を教えるワークショップも行われています。このイベントは毎回好評で、すぐに予約が埋まってしまうほど。伝統を学び、体験できる機会があることは、参加する人々にとって琉球文化に思いをはせる特別な時間になります。

庭園を眺めながら沖縄文化に触れるひとときを

沖縄らしい植物が植えられている

 店内だけでなく庭にも注目すると、自然崇拝が深く根づく沖縄文化を象徴するかのように、「神が降り立つ場所」をイメージした植栽が施されています。今はまだ木々が若いものの、数年後には豊かな緑が広がり、訪れる人々を迎えるような庭園が完成する予定。想像するだけでもワクワクします。
 
購入できるお菓子やお茶、陶器などが陳列されている

 古民家の中で、琉球菓子とともに沖縄文化を味わえるこのお店では、提供される琉球菓子やお茶類のほか、使用している陶器なども店内で購入ができます。古きよき沖縄の伝統とともに、琉球菓子を楽しみながら、特別なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

<取材・文>津波真澄

津波真澄さん
広島県出身、那覇市在住。外資系企業などに勤務し、海外でも生活。15年ほど前に沖縄に移住。野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター1級、インナービューティープランナーほか、食に関する資格を持ち、「沖縄」「環境」「食」の知識や経験をもとに、料理教室を主催。企業やメディアからの依頼でレシピ開発やメニュー監修をするほか、通訳や講演・執筆活動も行っている。美と健康の知識を要するミセスジャパン2019世界大会で第3位(2nd Runner-up)を受賞