福井県「ローヤルさわやか」「コンニャクのから揚げ」ご当地グルメを堪能する旅

福井県は、700年前から食材を朝廷に納める「御食国(みけつくに)」でした。その豊かな食は現代にも引き継がれています。現地でしか食べられないものばかりを、ご当地グルメ研究家の大村椿さんがリポート。

「お麩のからしあえ」「おは漬け」郷土料理のバイキング

恐竜の焼き印卵焼きと足跡クッキー

 JR東京駅から北陸新幹線「かがやき」に乗車すると、最短2時間51分、乗り換えなしで福井駅に到着。玄関口である福井駅周辺では恐竜のオブジェやトリックアートが迎えてくれます。福井県といえば恐竜王国で、勝山市は国内随一の恐竜化石の産出地。フクイサウルス、フクイラプトルなど、福井の名を冠した恐竜もいます。旅館の食事の卵焼きに恐竜の焼き印があったり、恐竜の足型がついたクッキーが売られていたり、福井県内のいたるところで恐竜を感じるものが見つけられます。

バイキングの様子

 西口を出てすぐ隣りの商業ビル「ハピリン」1階にはウェルカムセンター(福井市観光案内所)があり、旅の情報集めに最適です。2階の福福館(福井市観光物産館)には、郷土料理が食べられる食事処が併設。こちらで「お幸ざいバイキング」のランチをいただくことに。

郷土料理バイキング

 越前おろしそば、ソースカツ、焼サバなど福井名物が並ぶなか、地味ながらおいしい郷土料理も見つけました。秋から冬にかけて行われる、浄土真宗の年中最大行事「報恩講(ほうおんこう)」でもおなじみの精進料理のひとつ「お麩のからしあえ」、「おは漬け」は白菜や大根の葉など葉物野菜の浅漬けのこと、「たくわん煮」は、「たくわん」が古漬けになるころ塩気を抜いてつくられる料理で、関西エリアから北陸あたりまでのエリアでよく食べられています。

熊川宿のこんにゃくのから揚げと若狭名物の浜焼きサバ

こんにゃく揚げ

 福井県はかつて越前と若狭というふたつの国で構成されていて、若狭地方は、飛鳥・奈良時代から食材を朝廷に納める「御食国(みけつくに)」としての役割を担っていました。若狭湾で水揚げされた新鮮な魚介類、塩や昆布などは人の手により京の都へと運ばれていたのです。

 とくにサバは代表的な物資で、運ばれたルートは近年「サバ街道」ともよばれています。なかでも代表的なルートのひとつが、三方上中郡(みかたかみなかぐん)若狭町にある宿場町「熊川宿」を通る若狭街道。重要伝統的建造物群保存地区に指定され、奉行所跡や神社のほか、伊藤忠商事の2代目社長であった伊藤竹之助(旧姓:逸見)の生家、道の駅や古民家を利用した宿や飲食店などが観光客を迎えてくれますが、現在も普通に人々が暮らす静寂なまち並みでもあります。

浜焼鯖御膳

 熊川宿にある岩本商店(勘治郎)ではこんにゃくのから揚げが売られていました。ここは地元で有名な手づくりこんにゃくの店。名水百選にもなっている「瓜割(うりわり)の滝」がある若狭地方では、平安時代からこんにゃくがつくられていました。種イモから3年かけて育てるこんにゃくイモを使っていて、こんにゃく玉を収穫する9月末から5月頃までの期間限定。

 店頭で注文するとその場で揚げてくれるからアツアツ。「二度揚げするとおいしいの」とお母さんが教えてくれました。元はこんにゃくの試食用としてつくっていたところ、その味が評判となり、販売するようになったそう。鶏のからあげのようにしょうゆなどで下味をつけてあり、プリッと弾力があっておいしい。紙コップ&爪楊枝スタイルだと食べ歩きもしやすいですね。

 JR敦賀駅前のまるさん屋は、鮮魚問屋直営店。通し営業なのでランチタイムに縛られず食事ができます。今回は若狭地方の名物「浜焼きサバ御膳」をいただきました。身がみっちり詰まった肉厚のサバは脂がのっていてパリッと焼き上げられています。旬のお刺身もついていて大満足。

著者と浜焼き鯖

 浜焼きサバは、大きなサバを丸ごと1尾串に刺して豪快に焼いたもので、傷みやすいサバを保存する方法として生まれた料理。ショウガじょうゆでいただくことが多く、包丁でカットせずそのまま食べます。家庭ではご飯に混ぜ込んだり、豆腐と煮たりすることも。

 大野市では、江戸時代の藩主が農民の重労働をいたわり、暑い夏を乗りきるため脂ののったサバをスタミナ料理とすることを奨励したことから、半夏生(はんげしょう)とよばれる夏至から数えて11日目にあたる7月2日前後に食べる習慣があります。

あわら温泉で女将さんたちの日本酒に舌鼓

グランディア芳泉

 県屈指の温泉街である、あわら市芦原温泉にある旅館には、計74本の源泉があるため、好みの泉質の温泉を選ぶのも楽しみ。60年以上の歴史がある「グランディア芳泉」は3本の源泉をもち、大風呂、ひのき風呂、寝湯、解放感のある露天風呂があり、足湯や無料の温泉卵づくり体験も。

 旅館内の「レストラン季の蔵」は総料理長がJALファーストクラスの機内食も監修しており、ブッフェは若狭牛、ふくい名水サーモン、甘エビなど海の幸、新鮮な野菜やフルーツなど福井県食材をふんだんに使った見目麗しい料理が並びます。和洋中、エスニックまで種類豊富で、うれしい悲鳴。お米は、コシヒカリを生んだ福井県の新銘柄「いちほまれ」。

日本酒 女将

 2024年、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されることになりました。福井県は、黒龍、梵、常山、花垣など銘酒揃いですが、芦原温泉にしか置いていないお酒がありました。あわら温泉女将の会の女将さんや若女将たちが、田植えや稲刈り、仕込みなどに携わっている日本酒「女将」です。山田錦を使った純米吟醸生貯蔵酒で、かんきつのような香りがしてとても飲みやすく、北陸の海の幸にぴったりの味わい。ちなみに女将さんたちは全員きき酒師の資格をもっています。

「ローヤルさわやか」「かたパン」ご当地グルメを食べ歩き

ローヤルさわやかドリンク

 地元の人たちの愛するご当地ドリンク「ローヤルさわやか」も忘れてはいけません。昭和レトロなラベルがたまりませんね。1978年発売の地サイダーというか、昔ながらのメロンソーダです。白山山系の九頭竜川の伏流水を使用していて、かなりの微炭酸なので優しくて甘く和む味。地元では知らない人はいないくらいメジャーですが、県外に出るとほぼ見かけません。

敦賀のかたパン

 お土産には敦賀のかたパンを購入。小麦粉と砂糖、塩で焼かれた素朴なお菓子で、もともと非常食だったので日もちがします。日本全国にこのような固い焼き菓子は点在していますが、福井ではめがねの町鯖江にあやかった眼鏡型のかたパンなども売られています。
「幸福度日本一」と言われている福井県を訪ねたら、幸せを分けてもらえそうな気がしませんか?

<取材・文/大村 椿>

大村椿さん/テレビ番組リサーチャー
香川県生まれ、徳島県育ち。2007年よりフリーランスになり、2008年から地方の食や習慣などを紹介する番組に携わる。その後、グルメ、地域ネタを得意とするようになり、「ご当地グルメ研究家」として食に関する活動も行っている。