茨城県常陸大宮市の地域おこし協力隊として東京都から移住した谷部文香さんは、2年間の任期を終え、そのまま定住することに。今回は、市内辰ノ口地区の竹林を活用した、「竹と桜」の辰ノ口アートプロジェクトの概要と「竹あかり制作ワークショップ」の様子をレポート。
江戸時代から続く、久慈川沿いの竹林
常陸大宮市の久慈川沿いの平たんな土地に広がる竹林は、全国でも有数の景観を誇ります。ところどころ途切れながらも連なる真竹の数々。初めて見る人が驚くほど圧巻な姿を見せてくれますが、じつは水害を減らす水害防備林の役割を担っているのです。
その歴史は古く、文政3(1820)年までさかのぼります。久慈川の氾濫に心を痛めた、庄屋の沼田伝蔵氏が、堤防の築造と合わせて真竹の植栽を進めたことがその始まりと伝えられています。
昭和20(1940)年代の世喜村(現在の市内、富岡・小倉・塩原・辰ノ口・照山・小貫地区)の竹林は、8.3kmもの長さを誇り、幅は120mもあったのだとか。
近年は、質もよく量も豊富な竹を活用した「久慈川たけのこメンマ」などの商品も販売されています。市では、見逃しがちだった地域資源を掘り起こし、継続的な竹林の整備と竹の利活用が進められているのです。
「『竹と桜』の辰ノ口アートプロジェクト」が始動
そんな竹の利活用のひとつが、観光庁の地域観光新発見事業に採択され、2024年9月下旬からは常陸大宮市振興財団主催で辰ノ口の竹林を整備し、ライトアップや竹あかりで彩る「『竹と桜』の辰ノ口アートプロジェクト」。
このプロジェクトでは、間伐と整備作業を実施し新たな散策コース造成に向けて動き出しています。また、久慈川の堤防沿いに並ぶ約130本の桜堤と夜間のライトアップが楽しめる「辰ノ口さくら祭り」と合わせて、竹林内でも光のアートを演出するイベントも開催されることに。
みんなでつくって彩る竹あかり
イベント開催に向けて行われたのが「竹あかり制作ワークショップ」。2024年12月から2025年1月にかけて、市内にある大宮東部コミュニティセンターで実施されました。講師にお迎えしたのは、竹あかりを専門に行うちかけんプロダクツのみなさん。
ワークショップでは、竹あかり制作に関する説明を受けた後、実際に制作に移ります。おもに行ったのは、太い竹を使用した竹あかりと竹ひごの制作です。
竹あかりは、太く立派な竹に型紙を貼ります。そして、型に沿ってインパクトドライバーで、大小さまざまな穴を開けて、模様をつくっていきます。最初は慣れない工具に少し苦労しましたが、コツをつかむとテンポよくきれいに穴を開けることができました。この穴から光がこぼれ、竹林が光のアートで演出されます。
もうひとつは、細い竹材を使用し丸型にして組み合わせ、竹ひごから制作する鞠灯篭(まりとうろう)です。鞠灯篭は、9つの竹ひごを束ねて球体になったもの。鞠灯篭がたくさん集まり光を灯すと、やさしく柔らかな雰囲気に包み込まれるのだそうです。
講師からつくり方を教わり、竹ひごを1つずつ束ねていったのですが、どこを組み合わせるのか途中で分からなくなるなどのハプニングも。何度も聞いてやっと球体になったときは、達成感を感じられました。
竹あかりと桜を楽しむイベントを開催
トータルで3時間のワークショップでしたが、あっという間に過ぎ去り、楽しい時間を過ごすことができました。また、うれしい参加特典として、イベント入場券のプレゼントも。
ワークショップで制作した竹あかりや鞠灯篭はイベント「ひたち大宮 DRAGON BAMBOO(ドラゴンバンブー)2025」で使用されます。会場となる辰ノ口地区の辰「DRAGON」と幻想的な空間を創り出す竹「BAMBOO」からこのイベント名になりました。
全長240mの竹あかりを楽しめる本イベントの開催期間は、2025年3月22日(土)~4月6日(日)。開場時間は18:00~20:00(最終退場時間は20:30)を予定しています。 入場料は、大人(高校生以上)が現地購入(現金のみ)1000円、オンラインで800円、子ども(中学生以下)は無料。
また、「第16回ひたち大宮辰ノ口さくら祭り」も同時開催! 桜づつみと竹あかりのライトアップの両方を楽しめます。
今回、市の新たな観光コース造成に、ワークショップを通して市民も気軽に参加できたのもうれしかったです。2025年のみならず、辰ノ口さくら祭りと合わせて今後も継続的なイベントになることを祈っています。私も期間中どこかのタイミングでイベントに足を運ぶ予定。とても楽しみです!
<取材・文・写真/谷部文香>
谷部文香
東京都八王子市出身。都内の大学を卒業後、介護職や学芸員を経験。ライターとしても活動をするように。大学で歴史学を専攻し、お城や地域文化を研究するなど、根っからの歴史好き。2021年に茨城県常陸大宮市へ地域おこし協力隊として移住し、地域の方々を取材・発信する。任期終了後、そのまま定住し、現在はフリーランスのライター・広報として、茨城県と東京都を中心に活動中。