岡山県最南端の六島。咲き誇るスイセンとクラフトビールを楽しむ1時間の船旅

30歳を目前に「海沿いに住みたい!」「一軒家でのんびり暮らしたい!」と考え、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住した女性が日々の暮らしや岡山県の魅力をご紹介。今回は、スイセンが島一面に咲き乱れている離島、六島(むしま)を紹介。

岡山県最南端の六島へ。船で約1時間の小旅行

みなとこばなしのフェリー乗り場
みなとこばなしのフェリー乗り場

 岡山県最南端にある笠岡市の離島、六島。アクセスは、JR笠岡駅から徒歩約7分のところにある、笠岡港旅客船ターミナル「みなとこばなし」(住吉乗り場)から出航する旅客船を利用します。

 船便は1日4本と多くはないので、事前に時刻をチェックして、往復チケットを購入。この日は朝8時50分発に乗船しました。

「島には商店や自動販売機はないから、飲み物は買っていったほうがいいよ」と知り合いから忠告を受けたので、港で飲料水も購入。また、以前笠岡諸島に船で向かった際、想像以上に揺れが大きく船酔いになり、島を存分に楽しめなかった過去のある私は、酔い止めもしっかり服用しました。

停泊している船
「しおじ」に乗船

 スイセンのシーズン、かつ土曜日だったからか、この時間の船はほぼ満席。スイセンを見るツアーの人や、山登りをするのかトレッキングスタイルの人などが多くいました。

 船に揺られること約1時間。いよいよ今回の目的地、六島に到着。下船する港は湛江港(たたえこう)と前浦港の2か所があり、どちらを利用しても歩いて島をぐるっと見て回れます。団体の方々が湛江港で下船したので、私は前浦港で降りることにしました。

おかえりと書かれた木の板の上には猫の顔が描かれているブイがくっついている
ブイでつくった猫の看板はレトロな雰囲気

 船を降りると迎えてくれる「おかえり」の看板の文字にほっこり。看板の「ブイ猫」は海に浮かべるブイにイラストが描かれているもので、島のあちこちに置かれています。この形を猫に見立てるなんて、すてきな発想! ブイ猫もあちこちにいますが、六島では本物の猫にもたくさん出会えます。

スイセンが咲く小道を通り、瀬戸内海を望む灯台へ

島のマップが書かれた看板
現在地と六島の地理を確認

 港を降りてすぐにある地図看板を確認。スイセンスポットを通りながら、六島のシンボルである灯台を目指していきます。

灯台と書かれた木の板の上に猫の顔が描かれたブイがくっついている
いたるところにブイ猫が。現れるたびにほっこりする

 灯台までの道のり案内も、随所随所でブイ猫が登場! 看板に従いながら歩き進めると、スイセンが見えてきました!

丘の斜面が水仙で埋めつくされている
道の両脇に広がる水仙畑。絵本の世界に迷い込んだような気持ちに

 小道の両脇に凛と咲く小さな花々と、穏やかで静かな風と小鳥のさえずり。まるでノスタルジックなジブリ映画の世界に足を踏み入れたよう。

 今年は例年よりも開花が遅く、訪れた3月初旬でも満開、とまではなっていませんでしたが、それでも圧巻の美しさ! 訪れた人たちも、カメラを片手にスイセンのベストショットを収めていました。

 水仙畑を抜け、灯台への道をずんずんと進んでいきます。道中は細かったり、階段があったり、やや上り坂だったりするので、スニーカーで訪れるのがおすすめです。

水仙に囲まれた階段をのぼった先に白い灯台がある
灯台は六島のシンボル

 そして、港から歩くこと約20分、小高い丘の上にそびえ立つ真っ白な灯台に到着! 1922年に航路の安全を守るため岡山県で最初に設置されたのがこの灯台。点灯から約100年間、この辺りの海峡と六島を見守ってくれている、シンボル的存在です。

瀬戸内海を一望できるベンチに人が座っている
あいにくの曇り空だったが目の前には瀬戸内海が広がる

 灯台の立つ場所からは穏やかな瀬戸内海が一望できます。ベンチに座って持参したお弁当を食べている人がいました。絶景にいやされながら時間が経つのを忘れてしまう、そんなひとときです。

湛江展望台で海を眺めてゆっくり過ごす

細い道の先に2匹の猫が離れてこちらをみている
島内ではいたる所に猫が

 六島は面積約1㎢の小さな島。歩いてぐるりと回れそうなので、あてもなくひたすらダラダラと海沿いの道を進んでみます。

 島の人が「こんにちは」とあいさつをしてくれたり、海を眺めながら食べているおにぎりを猫に取られているカップルに遭遇したり。「なんて平和な時間なんだろう」と自然と温かな気持ちになります。

海に面した展望台に白い椅子2脚とテーブルが1つ置かれている
湛江展望台

 歩いていると「湛江展望台」という場所を発見。開けた場所にテーブルとイスが置いてある、ただそれだけですが、高台になっていてここからも瀬戸内海が見渡せました。

 灯台とは反対方向だからか、観光客もほとんどいない穴場スポット。いすに腰かけて1時間ほど読書をして過ごしました。日常では感じられない静寂がとても新鮮でぜいたくな空間です。

六島浜醸造所でクラフトビールとランチを堪能

商店のような外観の醸造所。たくさんの猫のブイが並んでいる
六島浜醸造所
 
 旅の最後は、前浦港から徒歩約4分にある「六島浜醸造所」さんへ。笠岡諸島の食材を生かしたクラフトビールのブルワリーで、醸造所の隣に店内で飲食ができるスペースが併設されています。事前予約でランチが食べられる、ということで前々日に予約をしていました。
 
白い皿に盛られたバターチキンカレーと黄色いサフランライス。その横にはビールが入ったグラスが置かれている
バターチキンカレーと麦のはじまり

 ランチはバターチキンカレー。あわせてクラフトビールも注文することができます。初めにいただいたビールは「麦のはじまり」。六島浜醸造所オリジナルグラスについでもらいました。フルーティーで飲みやすい、セゾンビールです。すっきりとした味わいが、やさしいコクのあるカレーに絶妙にマッチ。
 

カウンター席に置かれたグラスビール
期間限定のファントムジャルダン
 
 その後、六島のひじきを使用した燻製の香漂うビール「ドラム缶会議」。期間限定、笠岡市干拓地のイチジクを使った「ファントムジャルダン」をいただきました。

 この3ラインナップは「ジャパングレートビアアワーズ2025」でメダルも受賞しているのだそう! そんな話を店主さんから聞けるのも、ビール好きにはたまらなくおいしく楽しい! 乾杯の時間はどんどん進みます。

海を背景に、プラスチックカップに入った黒いビールを手に持っている
ドラム缶会議をテイクアウト

 今回は気温が寒かったので店内でビールを飲みましたが、温かい日には店前のスペースで海を眺めながらゆったり楽しむ人も多いよう。プラスチックカップでも提供されていたので、帰りの船で飲むようにテイクアウトしました。

 騒がしく過ごすことの多い日常ですが、船に乗って1時間行った先に、非日常のような世界があることに驚かされます。水仙の時期は3月初旬で終わる気配ですが、4月には灯台と桜の美しい景色が見られるそう。

「今日はどこに飲みに行こうか? 倉敷? 福山?」「笠岡の六島に船で飲みいく?」なんて選択肢も大いにありだなあ。そんなことを考えながら、港に着く頃には空になったプラスチックカップを片手に、帰路についた幸せな休日でした。

<取材・文> mamiko

mamiko
栃木県茂木町出身。大学時代は京都で暮らした後、大阪の老舗ヴィンテージショップにて販売員に。30歳を目前に、岡山県笠岡市へ地域おこし協力隊として移住。ブログやSNS等で笠岡市の情報発信をしたり、笠岡駅前商店街でシェアキッチンを運営したりなど、さまざまな活動を行っている。