東京から新幹線で1時間ほどの静岡市は、特産品や名所がぎゅっと詰まったお得な観光地。イチゴ狩り、駿河湾の新鮮魚介、富士山を眺めるクルージング、三保松原、静岡茶。美食と絶景を味わうおすすめ旅をレポート。
ここでしか味わえないイチゴが食べ放題
駿河湾に面した静岡市駿河区の国道150号沿いは別名、久能いちご海岸通りと呼ばれ、海に面して数多くのイチゴ観光農園が軒を連ねています。今回訪れたのは早川農園。
ビニールハウスに入ると、甘い香りがいっぱいに広がります。昭和60(1985)年に「久能早生」と「女峰」から誕生した静岡生まれの「章姫(あきひめ)」は、大粒で色鮮やかな赤い実と、酸味を押さえた濃厚な甘味が特徴。ハウス内に石垣を積んで栽培されることから「石垣いちご」とも呼ばれています。直売がメインのため、スーパーにはあまり出回らない、ここでしか食べられない希少なイチゴでもあります。
口に入れると果汁がジュワ〜。練乳をつけるのがもったいないくらいの上品な甘さです。大人2500円、2歳から幼児までは1200円で30分間、食べ放題。GW明けの5月7日からは大人1600円とお得になるそう。
併設した2階のカフェでは、3種のイチゴ(章姫、紅ほっぺ、白いちご)が味わえる「久能山白いちごパフェプレート・ドリンク付」(写真・税込2300円)や、「いちご畑パンケーキ・ドリンク付(税込1300円)」、「いちごジュース(税込300円)」など、目の前に広がる美しい海を眺めながらぜいたくなイチゴ三昧が楽しめます。
1159段の石段を登った先に駿河湾の絶景
徳川家康公がまつられる久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)は、久能いちご海岸通り沿いの山下(やました)から歩いて上がると、石段が1159段にも。段数は「いちいちご苦労さん」と覚えるそうです。
最後まで登らずに参道の途中から眺める駿河湾の景色も十分に絶景でした。日本平山頂からロープウェイで下る方法もおすすめです。
女性に大人気の農園直営レストラン
ランチはとれたて野菜を堪能できる農園直営のレストラン「ファーマーズ ピッツェリア DON FARM」へ。ここは「野菜がとにかく甘くておいしい」と評判で、わざわざ遠方から食べに訪れる人も多いとか。とくに女性に人気です。
前菜には、ピザ釜でじっくり焼かれた紫大根や桃太郎トマト、ケール、ピンクの渦巻き模様のゴルゴ(ビーツの仲間)、ロマネスコ、スイートキャロットが。うま味、甘味が凝縮されて「野菜がとっても"みるい"!」。「みるい」というのは、静岡弁で「やわらかい」「若い」という意味の方言です。
畑には朝霧高原にある岡村牧場の完熟堆肥のほか、微生物が住みやすいよう、切りワラやカキ殻、カニ殻などの有機肥料を使用しており、土はふっかふか。店の入り口でとれたて野菜を販売もしています。
季節野菜のスープ、朝どり野菜の前菜、パスタまたはピザ、ソフトドリンクつきのAランチ(税込2145円)も絶品でした。
天女伝説のある「三保松原」
三保松原は富士山の構成資産のひとつ。約7kmにわたり松林と白砂の海岸が広がり、天女が舞い降りたという美しい伝説でも有名です。三保の天女が羽衣をかけたとされる松や天女を祀る神社「御穂神社」、御穂神社から三保松原へ続く参道「神の道」は見どころ。
三保松原の玄関口にある静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」では、三保の松原の価値や魅力、松原保全の大切さをわかりやすくガイダンスしてくれます。訪れた日が雨天でも晴天の富士山と三保松原を背景に記念撮影できるうれしいコーナーや、松の香りの足湯もありました。
特等席から富士山を眺める清水港クルージング
浮世絵の世界観そのままに船上から富士山と三保松原の絶景を楽しむことができる「富士山清水みなとクルーズ」。三保半島から「エスパルスドリームプラザ」へ向かう「三保羽衣ライン」の航路では、富士山と三保松原に加え、国際貿易港ならではのタンカー船や大型クレーン、対岸に立ち並ぶ缶詰工場なども見応えがありました。
秋冬には船上のカモメとのふれあいや、運がよければクルーズ船と並走して乗船者を歓迎する野生のイルカに出合えるチャンスも。
クルージングの終着点「エスパルスドリームプラザ」は静岡・清水ならではの商品とグルメが勢ぞろい。駿河湾越しの富士山やちびまる子ちゃんランド、清水すし横丁、清水かんづめ市場など、週末は子ども連れの家族がたくさん遊びに訪れる場所です。
清水港は日本三大美港とも言われ、冷凍マグロの水揚げ量は日本一。かつては廃棄されていたマグロを備蓄食として利活用したのが清水のツナ缶です。現在はアメリカを中心に輸出され、静岡県は全国のマグロ類缶詰の生産量が第1位。缶詰工場は10社以上あり、全国シェア98%を誇ります。静岡名物のおでんの缶詰も。
缶詰の「完熟トマトカレー」は温めなくてもおいしく、お弁当がわりに持参する人も多いとか。
静岡駅から徒歩10分で天然温泉つきのホテルが
JR静岡駅北口から歩いて10分の「ホテルオーレイン(静岡)」は静岡市街で唯一、天然温泉の大浴場が。部屋から富士山が見え、チェックアウトが11時というのもうれしいポイント。
部屋代にはご当地メニューも楽しめる朝食ビュッフェが含まれ、ラウンジは15時から21時半までソフトドリンク、コーヒーが飲み放題。夕食にはオリジナルカレーライスも(セルフ形式・数量限定)。
歩いてすぐの場所にはレトロな「青葉おでん街」「青葉横丁」があり、静岡浅間神社や徳川家康公が築いた駿府城跡地へのアクセスも便利です。
地元に愛される「お抹茶こんどうの食堂」
静岡を味わいつくすならお茶がコンセプトの「お抹茶こんどうの食堂」もおすすめ。店主の近藤さんはフレンチ料理店で修行し、日本茶インストラクターの資格をもちます。店名は「食堂」でも、料理は「割烹」といっておかしくないレベル。開店と同時に満席になることも多く予約は必須です。仕入れと大将の気分で変わる「大将おまかせ6品コース」(3650円税別・要予約)が人気。
緑茶のおいしさはもちろん、デザートに絶対注文したいのが、静岡ほんやま産の抹茶と福岡八女産の抹茶をふんだんに使用したお抹茶ソフト。ソフトクリームの上に店内の石臼でひきたてのフレッシュ抹茶がたっぷりかかっています。苦味と甘さの絶妙なバランスに静岡のお茶 の底力を感じました。
1日数組限定の「アフタヌーンティー」(2700円・税別)も気になります。日本茶インストラクターが供す浅蒸し茶や深蒸し茶、和紅茶、ほうじ茶、玄米茶、烏龍茶から2種類を選び、目の前で仕上げる「わらび餅」ほか全7種のスイーツが味わえるお得なコース。
1泊2日の気軽さで富士山や三保の松原など有名どころ以外にも、現地でしか食べられないイチゴや世界に誇る清水のツナ缶など、静岡市のユニークさを味わえる欲張り旅。これからあたたかくなる時期に試してみてはいかがでしょうか。
<取材・文/脇谷美佳子>
脇谷 美佳子(わきや・みかこ)さん
東京都狛江市在住。秋田県湯沢市出身のフリーの「おばこ」ライター(おばこ=娘っこ)。2児の母。15年ほど前から、みそづくりと梅干しづくりを毎年行っている。好物は、秋田名物のハタハタのぶりっこ(たまご)、稲庭うどん、いぶりがっこ、きりたんぽ鍋、石孫のみそ。