観光ホスピタリティコンサルタントとして、国内外のあらゆる地に足を運んできた石田宜久さん。そんな観光のプロがつづる「ふるさと旅を10倍楽しくする」方法とは? 新型コロナウイルスの流行で、旅はおろか外出さえままならない毎日。そんななかでも「自宅で旅行を追体験できる方法」を教えてくれました!
自粛中に自宅で旅気分を味わう方法
都内では引き続き外出自粛が続く昨今。すでに多くの方が旅に思いを馳せているのではないでしょうか? 世界中で拡大する新型コロナウイルスの脅威を受け、もっとも影響を受けているといっても過言ではないのが「観光業」と「旅行・サービス業」です。海外への渡航だけでなく、国内での移動も自粛が要請されるなか、これらの業界はますます状況が悪化しています。
そんななか、自宅でテレビを観る時間が増えている人も多いかと思います。ところが、テレビをつければ「傑作選」として、旅番組で美しい光景を見せられ、映画を見れば心ひかれるシーンのロケ地に行ってみたいと心奪われ、むしろストレスを感じてしまうこともしばしば。普段はさまざまな地域を訪れる観光コンサルタントの私も、もう2か月ほどよその地域を訪れていません。こんなに長い時間どこにも出かけていないのは、本当に久しぶりです。
そこで、「ずっと旅できないなんて、そろそろ限界!」という方のために、「次の旅への楽しみやワクワクを蓄える方法」をいくつかご紹介したいと思います。
自宅で各地のグルメレシピに挑戦!
旅行の魅力のひとつ、それは新しいグルメとの出会いですね。私も旅先ではなるべく、観光客向けの店舗ではなく、地元の人々から愛されるお店に入って地元の味をいただくようにしています。しかしそれができない今、「現地で食べる前に、まずは自分でつくってみよう!」というわけです。
北海道に行きたいのならジンギスカンを、福岡を目指すなら豚骨ラーメン、マレーシアを目指すならラクサ、などなど……。最近はすごいもので、ネットで探せばすぐにレシピが見つけられます。自作したものと本場の味の違い、つくるのがどのくらい難しいのか? など、実際に行く前にこうした経験値を得るというのも、旅をもっと楽しみにする方法のひとつですよ。
旅行を題材にした本の世界に浸る
本は知らない土地を訪れる方法のひとつだと思っています。旅を題材にした本、写真集でも構いません。また、普段自分がしないような旅をテーマにしている本や、旅に関わる職業を題材にしている本などを読めば、必ず新しい発見ができます。
たとえば山本幸久さんの『ある日、アヒルバス』(実業之日本社)。観光バスガイドの主人公が、ツアー客に振り回されたり、悩みのタネが絶えない職場での毎日をつづった、お仕事&青春小説です。バス会社内の様子や、バスガイド目線でのお客様や車窓風景などが細かく描かれているので、オススメです。
また湊かなえさんの『山女日記』(幻冬舎)は、さまざまな背景をもった女性たちが登山をきっかけに、前向きになっていく心情が描かれた8篇の連作長編です。私も山登りをするのですが、共感できる部分が多く、実際に私自身が山に登る気持ちが代弁されているかのような部分もありました。そのなかにも、ちょっとした毒があるのはさすが湊さんの作品。山を登らない人も、少しは山に興味をもってもらえるような内容です。
家の中で飛行機に乗って、旅行気分を味わう
少々マニア向けがありますが、旅行好きなら少しは分かってもらえるはず……。旅行とはきってもきれない関係にある飛行機は、地方空港の発展やLCCの登場によってより身近なものになっています。しかし、新型コロナによって減便に続く減便。そもそも飛行機に乗ることもかなわない時節になってしまいました。
そこで、飛行機気分を味わう方法としてネットで「空港 音」や「飛行機 環境音」と検索してみてください。すると、空港や飛行機の音を録音しただけの動画が次々に出てきます。こういった音を聞いているだけでも、旅情を感じワクワクと胸が高まってきませんか?
加えて、ANAのアプリでは、機内誌「翼の王国」をダウンロードして読むことができます。バックナンバーもダウンロード可能ですので、何冊か遡って読むこともできます。機内誌ですので旅行に特化した内容になっており、興味深い旅行ネタを得ることもできますよ。またANAのホームページでは空港ラウンジや機内で使われているアロマを購入することも可能です。自宅のお気に入りのソファに座って、アロマの香りを楽しみながら、空港の環境音を聞いて「翼の王国」を読む。もうそこは飛行機です!!
番外編としてさらに突き詰めるならば、機内で必ず観ることになる「機内安全ビデオ」もぜひ自宅で視聴したいところ。ニュージーランド航空のビデオは大変個性的でおもしろいと評判です。同社のYouTubeでだれでも視聴することができるので、これもあわせて再生すると、「空港、ラウンジ、機内安全ビデオ、機内」と、空港から機内での体験のほとんどを自宅で再現することもできるのです!
冒頭にも書いたとおり、いささかマニアっぽい話になってしまいましたが、こうして旅に想いを馳せながら自宅で過ごしてみるのも悪くないと思います。新型コロナウイルスによる影響がどこまで続くか、未知数な生活を余儀なくされていますが、必ず終わりはあります。いつかまた、思う存分旅行できる日を待ちわびつつ、「今だからこそできる旅」を楽しみましょう。
観光ホスピタリティコンサルタント 石田宜久さん
DiTHi(ディシィ)代表。世界最大規模の専門家ネットワーク・外資系リサーチ会社「ガーソン・レーマン・グループ」のカウンシル・メンバーを務める。これまでにセミナーや講演会、観光系専門学校の講師、島根県経営力強化アドバイザーなども経験。趣味は登山、ラグビー、スポーツ玉入れ