ふらっと入ったお店でつまみとお酒を楽しんだら、また次のお店へ…。そんな楽しい食べ歩きイベントが北海道函館市で年に2回、春と秋に行われています。多くの市民や観光客に親しまれているこのイベント、「函館西部地区バル街」が今年のサントリー地域文化賞を受賞。今回はその人気の理由を探りました。
バスクの食べ歩き文化を函館で楽しみたい!
函館のバル街が開催されているのは、歴史的建造物が残る函館の西側地域。昼間は観光客でにぎわいますが、夜は閑散としてしまうことも。
かつて繁栄した旧市街で「楽しいことをしたい!」と有志が集まり、2004年このイベントはスタートしました。
発起人のひとりであり、このイベントの実行委員のスペイン料理店のオーナーシェフ、深谷宏冶さんが参考にしたのは、自身が料理修業で滞在したバスク地方のバル(立ち飲み居酒屋)巡りの文化。1軒のお店にずっと居続けるのではなく、さっと飲んで軽いつまみを楽しんだら次のお店へ、というスタイルを取り入れることで、地域の人々に楽しみながら街への愛着を感じてほしい、と考えたそうです。
当初は1回限りのイベントでしたが、参加者から「またやってほしい」という声が多く届き、翌年以降も実施。はじめは25店だった参加店も76店にまで増え、参加者も400人から4700人と10倍以上に増えています。
イベント時には食べ歩きだけではなく、ジャズライブやフラメンコダンス、生ハムやワインのふるまい、着物の着つけなども行われます。こうした活動で地域の人たちを巻き込み、盛りあげてきたバル街は、大企業や行政の金銭的支援を受けずに、自分たちの手でつくりあげてきました。
回数を重ねるうちに全国的にも注目を集め、視察やアドバイスの申し込みが絶えないそうですが、これらにも丁寧に対応した結果、同様のイベントは各地に広がり、今では数百か所で開催されています。
第41回サントリー地域文化賞を受賞
こうした活動が評価され、2019年に第41回サントリー地域文化賞を受賞したこのイベント。授賞式では「ノーベル賞と同じような(価値ある)賞をいただけてうれしい。第1回の受賞者、カール・ワイデル・レイモンさん(戦前から函館でハム・ソーセージの製造を行った)の自宅兼加工場の隣が、われわれの集いの場所で、これもなにかのご縁ではないか」と深谷さんが喜びのコメントを述べました。
次回は2020年4月中旬に開催予定の函館西部地区バル街。この時期に北海道を訪ねるなら、ぜひ、参加してみて!
<取材・文/カラふる編集部 写真/函館西部地区バル街実行委員会>